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サウジアラビア、「ビジョン2030」の資金調達のため債券資本市場に参入

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19 Jun 2021 10:06:28 GMT9
19 Jun 2021 10:06:28 GMT9

カリッド・アルビラル

「ビジョン2030」の資金調達において、銀行が引き続き重要な役割を今後も果たすものの、サウジアラビアの債券資本市場は、この改革計画の目標を実行するにつれ成長すると予想されている。当社は、増加する「ビジョン2030」の資金は、今後中央政府から政府関連団体、さらに幅広い民間企業に移行していくと認識している。

「ビジョン2030」に向けた12兆SAR(3.2兆ドル)の資金調達のための債券発行増加が、サウジアラビアの資本市場の成長を牽引することとなる。さらに、現地資本市場の発展に伴い、サウジアラビア・リヤル建て債券の発行が徐々に増加すると、当社は予測している。現在は、このような債券の通貨としては、米ドルが選ばれている。

国内の資本市場が徐々に深化していけば、その透明性が高まり、今後数年間でサウジアラビアのコーポレート・ガバナンスが強化されよう。過去10年間、サウジアラビアの資本市場規制機関であるサウジアラビア資本市場庁(CMA)は、株式・債券資本市場を発展させ、外国人投資家を誘致するために様々な施策を実施してきた。例えば、サウジ証券取引所(Tadawul)のインフラや取引ルールを改善し、投資家の市場アクセスを向上させるための様々な取り組みが行われた。このような取り組みにより、2019年にはMSCIエマージング・マーケット・インデックス、その後のFTSEラッセルやS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスにも、サウジアラビア株が組み入れられる道が開かれ、世界の投資家に対するサウジアラビア株の認知度がさらに高まった。同様に、2020年には、CMAは非居住者の外国人が上場および非上場の債券に直接投資することを許可した。また、サウジアラビアの企業、特に政府関連事業体(GRE)による上場債券の発行が増加しており、2019年と2020年の上場社債とイスラム債権(スクーク)の発行額約260億ドルのうち、約90%を占めている。

しかし、サウジアラビアの資本市場は相対的には未発達であるため、同国の金融政策の実施には限界がある。これに対処するため、政府は2015年に現地通貨建ての債券やスクークの発行を開始した。今後数年間はこれが続くことが予想される。当社は、政府債の発行は、ベンチマークとなる利回り曲線(イールドカーブ)の不在を解消し、サウジアラビアの債券資本市場の発展に寄与するものとなると見ている。

さらに、当社は低金利時代に高利回りの投資を求める投資家にとって、サウジアラビアのソブリン債が継続的に発行されることは、より大きな注目を集める可能性があると考えている。

カリッド・アルビラル

民間企業の発行もこれに倣い、純粋なベンチマーク取引からより戦略的な債券発行へと移行する可能性がある。我々は以前、資本市場をより頻繁に活用することにより、サウジアラビアの企業は資金調達源をさらに多様化させ、国内外のより多くの投資家にアクセスし、投資家の満期構成を長期化できると書いた。当社のアナリストらは、このような動きはサウジアラビアの企業の信用力を支えるものであると見ている。

歴史的に信用格付けは、発行体の信用力を確立し、信用力の理解を深め、投資家に情報を提供し、資金調達源を多様化することに貢献してきた。例えば、当社は、サウジアラビア国内の発行体を対象に、湾岸協力理事会(GCC)規模の地域別信用格付けを提供しており、サウジアラビアおよびGCC市場(湾岸協力理事会6カ国)参加者に対して、当社のグローバル規模の格付けよりも、サウジアラビア国内の地域信用格付けにおいて、より大きな差別化を提示している。

GCC規模の信用格付けは、市場参加者が当地域内の発行体や発行債権の相対的な信用リスクを比較できるように設計されており、GCC全域の資本市場において、より良い情報提供、より高い流動性、より効率的な資本市場に貢献することが期待されている。

GCC内の信用力に重点を置いているため、これらの地域規模の格付けは、グローバル規模や他の地域または国の格付けと直接比較することはできない。

以下がその例である。当社は、サンバ・フィナンシャル・グループとの合併により、サウジ・ナショナル・バンク(SNB)となったナショナル・コマーシャル・バンクの長期発行体格付けを引き上げた。SNBのグローバル・スケールの格付けが「A-」であり、今後の展望が安定していることは、この合併企業の強さを反映しており、GCCのリージョナル・スケールの格付けも「gcAAA」となっている。 当社は、SNBの資産の質に関する指標はサウジアラビアおよびGCC地域の同業他社と比較して、引き続き良好な状態にあると考えている。サウジの債券市場の発展は、サウジの銀行や企業の信用力を長期間に渡り、広く支援するものであると見ている。

さらに、当社は、低金利時代に高利回りの投資を求める投資家にとって、サウジアラビアのソブリン債が継続的に発行されることは、より大きな注目を集める可能性があると考えている。社債市場については、最初は大規模なGREが主な発行体となり、その後、いくつかのトップ企業が徐々に続き、一般的な資本市場への移行は行われないだろうと予測している。

また、国内の債券資本市場が十分に機能していれば、サウジアラビアの銀行システムの資金調達源を拡大することができる。現在、ほとんどの資金は主要顧客の預金から調達しており、その大部分は短期または必要に応じて調達している。信用度が継続的に増加するにつれ、銀行システムは、国際的な資金調達よりも安定していると考えられる国内資本市場からの長期的な資金調達の恩恵を受けられるだろう。世界的な金融政策の軟化を背景に、対外債務が急速に増加しているにもかかわらず、サウジアラビアの銀行部門の対外資産残高は全体的に純増を示していることに同社は注目している。国内の資本市場がより深化し、より拡大することは、サウジアラビアの銀行システム全体の資金調達プロファイルに対する我々の見方にプラスに働く可能性がある。

– カリッド・アルビラル氏は、S&Pグローバル・レーティングス サウジアラビアの責任者を務める。

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