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レバノンを支配しようとする各派閥は、レバノンを破壊するだけだ

2021年10月14日、ベイルート・タヨーネ地区での武力衝突で、AK-47とロケット弾発射装置で武装したヒズボラとアマルの戦闘員ら。(AFP)
2021年10月14日、ベイルート・タヨーネ地区での武力衝突で、AK-47とロケット弾発射装置で武装したヒズボラとアマルの戦闘員ら。(AFP)
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17 Oct 2021 04:10:55 GMT9
バリア・アラマディン
17 Oct 2021 04:10:55 GMT9

平和的な抗議活動にAK-47やロケット弾を持ってくる人などいない。間違いなく、ヒズボラの行動がレバノンをこのような絶望的な状況に導いたのである。ヒズボラは、ベイルート港爆発事故の責任を追及する捜査を阻止するために、国家を炎上させようとしているのだ。

レバノンの市民がヒズボラにこれほどまでに激怒したことはない。重武装した黒装束姿のヒズボラの戦闘員らが、司法を狂わせる権利を主張し、彼らの「街に火をつける」能力を誇示し、閣僚会議が開かれないようにし、国民全体を脅かそうとしていることに、市民は激怒しているのだ。武装した民兵らが「シーア派だ!シーア派だ!」と叫びながら、緊迫したキリスト教地区に乱入してきた。国の存亡に関わる危機的状況の中で、この言葉に、彼らは一体何を期待していたのか。

しかし、このような状況になったのはヒズボラのみの責任ではない。だからこそ、銃を持った覆面の男らの姿には血の気が引いたのだ。一部の政党が熱心に宗派間の対立に備え、地獄の門を完全に開く準備を行う中、積極的に挑発行為を行っていることは、今や誰の目にも明らかだ。  

有力な政治家らが冷静さを求めるのは結構なことだが、当事者らが殺人的な軌道を根本的に変えない限り、対立の誘発要因は確実に動いている。秩序を回復するために軍による介入も頻繁に行われてきたが、軍が宗派ごとに分裂し始めると、事態は純粋に制御不能に陥る。

現在のレバノンの指導者の多くは、1970~80年代に活躍した軍閥と同じで、政治的な対立に対応するのと同じように、実際の戦闘にも十分慣れている。さらに、社会の多くの人々が貧困と絶望に陥っている場合、誰かの戦いの駒として買収できる多くの人材が常に用意されている。 

1975年に内戦が勃発した中心地であるベイルートのアイン・ルンマーネ地区で発生したこれらの凶悪な事件は、トラウマとなるような記憶を呼び起こす。筆者の世代は、誰も制御できないほど急速に事態が拡大していったことを鮮明に覚えている。我々の多くは、地獄のような状況が広がる中で、数ヶ月かけて一つの地区から別の地区へと移動し、シリア、そしてイスラエルによる本格的な侵攻によって亡命を余儀なくされた。

内戦の見通しを甘く見て、ベイルートは1975年と同じ場所ではないと言う人もいる。意図していないだろうが、彼らは正しい。1975年に比べて、ベイルートは現在、限りなく最悪の状態にある。当時のベイルートは、アラブ世界の文化的、経済的な中心としての輝きを放っていた。経済の崩壊、慢性的な市民の混乱、ベイルート港の爆発などにより、現在都市の多くの部分はすでに被災地のような状態となっている。

多くの識者が、市民の平和のためにベイルート港爆発事故の捜査を中止したほうがよいのではないかと、すでに疑問を抱いている。しかし、強力な利害関係者がこれほど簡単に正義を阻むことができるのであれば、レバノンの法の支配はすでに取り返しのつかないものになっている。2008年、ヒズボラは、自らの利益を守るために紛争を引き起こした。これまでにも、ラフィーク・ハリーリ氏をはじめとする国の重要人物が殺害された事件の捜査を妨害するような内紛を、繰り返し引き起こしてきた。ヒズボラは、犯人が特定されるたびに「捕まえたければ、捕まえに来い!」というメッセージで司法制度をあざ笑う。

先週、ヒズボラのリーダーであるハッサン・ナスラッラー氏は、怒りに満ちた演説の中で、遺族に対しこのように述べた。「あなたは決して正義を得られない。」 ナスラッラー氏はレバノン司法ついて、司法が政治のために行われていると非難し、驚くべきことに司法に対しベイルート港の爆発事件の責任を追及した。そして、「これらの判事の罪については議論の余地はない」と言い放った。これまで、第一容疑者が法廷に立ち、判事が殺人を犯したのだと告発するのを見たことがある人はいるだろうか。

ヒズボラは現在、以前の通常モードに戻って、すべてを 「米国の陰謀」 として糾弾している。 もしそれができれば、だが。レバノンがこれほど切実に国際社会を必要としているときに、国際社会はどこにいるのだろうか。欧米諸国やアラブの関係諸国が、積極的にレバノンに外交介入して、すべての派閥に緊張緩和を促すとともに、イランに対して、もしレバノンで紛争を引き起こせば取り返しのつかない結果になるという緊急のシグナルを送る必要がある。外交辞令は、恥ずかしいほど陳腐で定型的な言葉で、何もしないための口実に過ぎない。世界各地に分散しているレバノン人も、次の選挙で革新的で独立した候補者を支援するために活動している「Nahwal Watan」のような市民社会組織を介して、レバノンに密接に関わっていくべき時でる。

ヒズボラ書記長のナスラッラー氏は、選挙が予定通りに行われることを望んでいると主張している。しかし、ヒズボラとその自由愛国運動同盟が政治プロセスを妨害しようとしていることは、国民に発言権が与えられれば悲惨な結果になることを、彼らがよく認識していることを示している。

ナスラッラー氏はイラクでの今後の行方を注意深く観察しているに違いない。親イラン派のハシュド・アル・シャアビ氏が先週行われた選挙で予想通りの大敗を喫し、「民衆動員部隊」が議会に占める議席数は48から14に激減した。今回の選挙結果を受け、彼らは、有権者は自分たちが殺されるのを嫌がる、ということを痛感した。選挙以来、シャアビ氏の熱烈な支持者らは、選挙の「捏造された結果」を覆そうと思い上がった主張をしているものの、もし彼らがこの脅しを実行に移すほど愚かであれば、必然的に内戦を引き起こすことになる。

現在、イランのすべての権力中枢が熱狂的な強硬派に支配されている中、イランはイラクとレバノンの支配を確実にするために数十億ドルを投資しており、今もその支配力を緩めるつもりはない。イスラム教シーア派の宗教指導者らはこれらの目標を達成するために、レバノンやイラクをすぐに紛争に巻き込むだろう。

この2年間、我々の多くが警告してきたシナリオが今、現実のものとなっている。奇跡が起こらない限り、レバノンは全滅の危機に瀕している。

強大な利害関係者がこれほど簡単に正義を阻むことができるのであれば、レバノンの法の支配はすでに取り返しのつかないものになっている。

バリア・アラムディン

誰が仕掛けたかは問題ではない。重要なのは、最悪の事態を防ぐことだ。問題は、当事者の誰もがレバノンに関心を持ち、レバノンの状況を止めることを申し出ることができないことだ。これはすべて利己主義に基づいている。ナスラッラー氏はイランの政策を後押ししようと努めており、一方各派閥は大統領の座を狙ってる。

レバノンは本質的に多元的な国家である。どの政党も、権力を共有することを望まない限り、権力を得ることはできない。10年間内戦が繰り返されても、この現実は少しも変わらない。

彼らがこの方向性を維持した場合、自分達が独占しようとしている国家はタバコの灰の山のような国にしかならない、ということを理解する知恵と先見性が、残念ながらどの派閥にもない。

  • バリア・アラムディンは、バリア・アラムディンは受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。
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