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レバノンが最悪の事態に。救出の時間切れ迫る

ベイルート中心部で続く反政府デモに参加し国旗を掲げるレバノン首都の人々 (2019年11月30日)。かつてない規模の反政府デモが1か月以上続くレバノンは政治経済両面の危機に瀕している。(AFP)
ベイルート中心部で続く反政府デモに参加し国旗を掲げるレバノン首都の人々 (2019年11月30日)。かつてない規模の反政府デモが1か月以上続くレバノンは政治経済両面の危機に瀕している。(AFP)

群衆は不満でいっぱいになっている。一触即発の状態だ。抗議デモ参加者が路上に集まり今のところは平和的にデモを行っている。ほぼすべての大陸でこういうことが起こっている。実際、今年は何で記憶される年になるだろうかと問われれば、答えは前例のない数のデモだろう。これはますます二極化が進む今日の世界にぽっかりと口を開ける分断を象徴している。気候変動、戦争、人権、移民、政治、経済、社会全体、これら全てについて、イデオロギー、収入、人種、宗教の分断がかつてない規模で拡がり、そのことが主流から取り残された人々の怒りを煽っている。

レバノンのベイルートとその他の地域にはこれらの問題が山積している。政権は脆弱だが非妥協的で、民衆の忍耐は限界に達しようとしている。このような状況により、変化に抵抗してきた政治階層はその真のつけを支払わされようとしており国家は崩壊の瀬戸際にある。

ドル不足によってレバノンリラの暴落には歯止めが利かなくなっている。やみ市場でのレバノンリラの価値は約20%下落し、ほぼすべてを輸入に頼っている食料、生活必需品は決済通貨不足によるインフレ圧力に晒されている。

人々は様々な不満を抱え変化を求めて路上に出てきているがこの状況は彼らの不満の種をさらに増やしている。給料は半分になり、失業が増え、店は空っぽで、小規模事業主は廃業を考えている。これに加え電力不足、貧弱なインフラ、水が飲用に適さないことに対する不満も大きい。約3000人の国民所得の取り分が人口の半数の取り分に等しいという甚だしい貧富の格差が存在し、これにより汚職が蔓延している。

かつては経済の柱だったレバノンの各銀行は、今や預金減少により預金引き出しを厳しく制限している。10月のデモ開始以来すでに何十億という資金がレバノンから流出した。シリアとの穴だらけの国境から150万人の難民が流入してきた2011年にレバノンの銀行の危機はすでに始まっていたがこの状況がさらに悪化している。難民流入は観光業の低迷、水や電気などの公共サービスへの需要増大につながった。

民間部門の債務不履行も急増し、2008年金融危機の際の米国の水準を超えている。世界3位の債務国にとって不吉な予感をもたらす状況である。国庫収入の大きな部分が労働力の13%を占める約30万人の公務員への巨額の給与に充てられる上に、国庫収入の半分が利息の支払いに消えている。

人々は様々な不満を抱え変化を求めて路上に出てきているが、経済的苦境は彼らの不満の種をさらに増やしている。

ハフェッド・アル=グーウェル

これはまあまんざら悪いニュースでもない。レバノンは今週15億ドルのユーロ債を償還したのだ。これにより国家正常化という壮大な課題に取り組む時間が稼げた。しかし、首相が不在で、政治家らがサアド・ハリリ氏の後継者について合意できない状態では、2020年3月に迫る次の償還期日までに十分な時間があるとはとても言えない。さらに現在抗議の声を上げている人々は、技術官僚的リーダーシップ実現に道を開くよう従来の政治家らが退陣することを望んでおり、現政権による改革の公約で彼らの不満が収まることはないだろう。

債権の利回りは上昇しており、マーケットの流動性はますます低くなり、銀行は機能不全に陥っている。借り入れは過剰に増え、公務員給与をこのまま支払い続けるのは不可能である。汚職がはびこり、貧富の差は大きく、政治は麻痺している。これらが全て重なってレバノンは最後の審判の日を迎えようとしている。中途半端なやり方や、浅はかで雑で拙速な修正策で危機を乗り切ろうとする統治は機能しないだろう。平均的レバノン人が再び政府を信頼できるような状況が必要である。つまり現在の指導者たちは自分たちで一致して退陣を決めなければならない。高まる抗議の声に動揺もしない政治エリートたちに成功の見込みなどないのである。さらに、改革を有効なものにするためには、銀行への課税額を引き上げ、公共部門の雇用削減を通じて債務と赤字の膨張に手を打つ必要がある。すると当然、貴重な収入を失いたくない公務員、利益を減らしたくない銀行と忍耐が限度まで来ている一般の人々は激しく対立するだろう。

レバノンの選択は困難なものである。一般大衆向けの説得力を持つ対策を重ねて大衆が切望する目標の達成を図ろうとすると必ず既得権を持つ層からの抵抗を受ける。ただ、首相の座が空席であるという状況は無益だが、良い面もある。ほとんどのレバノン人は、解決策を練り実行するために、そしてまた公職への信頼と信用を取り戻すためには有能な技術官僚による超党派的政府が必要だという点で一致している。誰になるにせよ次期首相は口先だけでなくこの理想に同意し、実際に現在の危機への対策を打てる組織を作り、それに権限を付与しなければならない。そしてこれらの組織は赤字削減のための公共部門合理化への手ごわい抵抗に敢然と立ち向かわねばならない。そのためには従来の公務員の失業を最小限に抑えることを強調しつつ、実行可能な民営部門拡大プランを立てていく必要がある。

そして最終的には、みんなが見て見ぬふりをしてきた問題、即ち急激に増え続けている公的債務に対処しなければならない。レバノンの銀行はこれを歓迎しないだろう。増税が一つの手であるが、なにより必要なのは巨額債務に対する持続可能な取り組みである。そのためには、政府が時間をかけて税収目標を達成し財政赤字のコントロールを取り戻せるよう、債務の再編を行う必要がある。債務再編ができれば各国からの110億ドルにのぼる融資や供与の内容が明らかになりそこからの利益を手にすることも可能だろう。

ただし時間はない。ハリリ氏の後任決定に時間がかかればかかるほどレバノンの通貨は価値を失い、インフレ率は急騰し、大衆の抵抗は大きくなるだろう。そうすればレバノンはギリシャの債務危機が小さく見えるような状況に追い込まれるだろう。

・ハフェッド・アル=グーウェルはジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究大学院外交政策研究所の一時滞在シニアフェローである。国際経済コンサルタンティング会社「マックスウェル・スタンプ」の上級アドバイザー、地政学的リスクコンサルティング・調査会社「オックスフォード・アナリティカ」の上級アドバイザー、ワシントンDCの「ストラテジック・アドバイザリー・ソリューションズ・インターナショナル・グループ」のメンバー、世界銀行グループ理事会の元アドバイザーでもある。ツイッター:@HafedAlGhwell

 

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