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「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」理想を実用的なソリューションに適用するために

気候変動の影響を緩和するためのESG(環境・社会・ガバナンス)コンセプトの導入について、企業は長年にわたって表層的なリップサービスを行ってきた。(AFP)
気候変動の影響を緩和するためのESG(環境・社会・ガバナンス)コンセプトの導入について、企業は長年にわたって表層的なリップサービスを行ってきた。(AFP)
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30 Oct 2021 01:10:20 GMT9
30 Oct 2021 01:10:20 GMT9

サウジで開催された国際投資会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」では今年もまた、世界的な課題に対する複数の実践的な解決策のアイデアが、政策立案者、理想家、そして希望に満ちたステークホルダーから披露された。

会議では、デジタルファイナンス、雇用創出、サスティナブルな食料共有とその安全保障、データ、AI、サプライチェーン、物流インフラ開発、デジタル経済の構築、グリーンイニシアティブへの投資、環境・社会・ガバナンスのコンセプトなど、幅広いテーマが議論された。

これらの議論や提案はすべて、効果的な意思決定を可能にするため、包括的で検証可能、かつ正確なデータに基づいて行われる必要がある。今までは、気候変動の影響を緩和するためのESG(環境・社会・ガバナンス)コンセプトの導入について、企業は長年にわたって表層的なリップサービスを行ってきた。

しかし、規制当局の圧力やステークホルダーの動向、さらには集団訴訟にさらされたことで、状況は劇的に変化している。

資産運用会社は正しい意思決定を行うために、比較可能な優れたデータを緊急に必要としているが、後述するようにまだ多くのデータギャップが存在する。

財務報告以外のデータの提供は主に任意で行われてきたが、この「ESGコンプライアンス」を義務化することで、企業は投資家、消費者、規制当局、活動家に対し、発展計画をさらに進めるために必要なデータと見解を提供する必要がある。

しかし、実際の温室効果ガス排出量などの基本的な指標がまだ標準化されていないことや、類似企業間の比較ができないことなど、課題は細部に点在している状況だ。

どの産業部門を代表しているか、あるいは分析しているかにかかわらず、マネージャー、特にアセットマネージャーは、正しい投資判断を下すために、比較可能な優れたデータを必要としている。

過去2年間で、多くの気候関連問題に関するデータの入手の確実性は改善されている。しかし社会・環境問題、特に社会問題については、何が社会的マトリクスを構成するのか、広い意味での人権を構成するのか、その定義について幅広い解釈がなされており、同様の改善は見られていない。しかし例えば、民族間の賃金格差に関する問題などのさまざまなデータについて、企業は公開を進めるべきではないだろうか。

より透明性が高く、そして理解しやすいESG関連データの必要性は、ポートフォリオの投資判断に関してだけではない。それらのデータにより、スチュワードシップ(預かり資産の責任を持った運用)やステークホルダー・エンゲージメントの観点からも、多様で知識豊富なステークホルダーが特定の問題について企業とより良い関係を築くことができ、FIIフォーラムで議論されたようなメガプロジェクトにも参加できるようになるからだ。

投資マネージャーは、現在の投資環境の現実と、長期的な持続可能な目標とのバランスを取る必要があり、幅広い経済的なアプローチが必要となる。

モハメド・ラマディ博士

企業は、すべてのデータを経営判断に役立て、最大限に活用するために、一般的なESGコンプライアンス業界、政策立案者およびそのアドバイザーたちに、関連する分析スキルが存在することを確認する必要があるだろう。

投資運用業界の大部分が、自社での持続可能なデータ収集や社内における専門知識の開発の比率を減らし、外部の第三者に委ねていることを踏まえると、一般企業や政府がそのような、組織内部でのスキルベースを構築することはコストも時間もかかり現実的ではないといえる。

組織内でゼロからこれらのスキルを構築するには、多くの資産運用マネージャーがデータの詳細解明と格闘し、独自にインサイトを導き出す必要がある。また、官僚的な運営システムを持つ政府も同様の課題を抱えている。

このような重圧に直面すると、企業や政府は、非持続可能な資産の売却に乗り出したくなる可能性がある。しかも、炭素集約型産業やセクター、すなわち石油・ガスに関する産業を除外することが社会的目標を達成するための効果的な方法であると主張する声が高まっている状況である。

しかし一方、それでは企業がより持続可能な目標に向けて舵を取るまでの存続の可能性まで失うことになり、総合的にはリターンの低下につながるという意見もある。化石燃料や石炭などのセクター全体をボイコットすることで、進歩やイノベーションを阻害し、社会の長期的なニーズを無視することになりかねないということだ。

最近では、中国や英国で発電用石炭の供給や石油不足のために企業や消費者が直面しているパニックがある。国際的な石油会社に、化石燃料や石炭からの撤退を求める圧力が続けば、同様の事例はさらに深刻になるだろう。

中国は現在、国際的な排出権協定に基づいて石炭生産戦略を再検討しているため、ロシア、インドネシア、ベトナムに緊急の石炭供給を求めている。投資マネージャーは、現在の投資環境の現実と、長期的な持続可能な目標とのバランスを取る必要があり、幅広い経済的なアプローチが必要となる。OPEC事務局長の最新の発言は、国際的な石油会社に対するこのメッセージを強調している。

最終的には、企業がESG目標を達成しているかどうかを評価するための信頼できるデータが市場に公開されない以上、投資の一部は必然的にグリーン、サステイナブル、社会的責任のない資産になるだろう。ダイベストメント(投資撤退)は、極端な場合を除き、ほとんど意味をなさないことが多い。

このような苦境を避けるためには、FIIの高い目標を現実的な解決策に結びつけるために、より比較可能で、タイムリーで、検証可能なデータが必要となるのだ。

・モハメド・ラマディ博士は、元幹部銀行員で、ファハド国王石油鉱物大学(King Fahd University of Petroleum and Minerals, Dhahran)の金融・経済学の教授である。

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