
グラスゴーで開催さている2021年の国連の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、環境保護主義者らが全ての化石燃料の廃止を訴えている一方で、ウィーンで開催される石油業界の主要産油国らによる本格的な協議が控えている。
11月4日には、サウジアラビアとロシアを中心とした石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」の定例月例会合が予定されている。OPECプラスの計画の大枠は明らかだが、今後、OPECプラス非加盟国の一部の国からのOPECプラス対する原油増産の要請、という議題が今回と今後の会合を支配することになりそうだ。
ジョー・バイデン米大統領は、今回のOPECプラスに対する原油増産の要請を主導した。バイデン氏は、今後1バレルあたりの原油価格が85ドル前後まで上昇すると見ており、国内、地政学的、環境的な様々な理由から、原油価格の上昇を抑えるため、より多くの原油が生産されることを望んでいる。
もしバイデン大統領が自国の産業に対する規制や投資の圧力を解除して、シェールガス生産企業が掘削を再開できるようになれば、解決策は彼自身の手の中にあるという事実は、少し忘れてほしい。
そうすれば、世界の総量を増やすのに十分な効果がある。10月の米国の原油生産量は1日1,100万バレルで、コロナ禍以前の水準から約200万バレル減少した。一方、OPECプラス加盟国は、コロナ禍発生以前の生産量をわずか50万バレル下回る2,780万バレルの生産を行っていた。
しかし、これとは別に、OPECプラスが夏に苦労して合意した、2022年末まで毎月40万バレルの増産を行うという計画から逸脱してはならない非常に大きな理由がある。
ひとつには、現在、世界のエネルギー市場は、ガスや石炭の価格が高騰するなど不安定な状態にあり、OPECプラスの計画は、安定性のベンチマークともいえるものであるからだ。米国や欧州で急に寒さが増し、事態がさらに不安定になった場合、原油の安定性や入手のしやすさは非常にありがたいものである。
しかし、それとは別に、OPECプラスが夏に苦労して合意した、2022年末まで毎月40万バレルの増産を行うという計画から逸脱してはならない非常に大きな理由がある。
フランク・ケイン
確かに、価格が上昇し原油が比較的競争力を持つようになると、ガスや石炭から石油への切り替えが見られる。しかし、それが世界の原油需要にどれ程影響するものなのかは明らかではない。専門家の間では50万バレルとも言われているものの、これは全体から見ればごくわずかである。
また、OPECプラスは今後をしっかりと見据える必要がある。石油産業への投資は、2020年の価格暴落により大きな影響を受け、いまだに回復していない。将来に向けた投資を促すためには、(COP26が開催されているグラスゴーの環境活動家がどう思おうと)持続的な高価格の期間が必要である。
それに加えて、来年のOPECプラス加盟国の原油生産量は、月ごとに段階的な増産が計画されているが、多くの専門家が需給の低下を予測している。バイデン氏がほんの数ヶ月待てば、2022年には求めるすべてを手に入れることができるだろう。それに加えて、今供給量を増やすことは、2020年以降秩序を取り戻すのに時間を要した世界市場のバランスを、さらに崩すこととなる。
実際、一部のOPECプラス加盟国では、すでに夏以降、大幅な増産が行われている。湾岸協力会議加盟国の産油国は原油を増産しており、最大の産油国であるサウジアラビアの生産量はコロナ禍以前の水準に戻っている。
他のOPECプラス加盟国は、昨年夏にOPECで合意された生産量を満たすことさえ苦慮している。アフリカの一部の国は、増加された新たな生産目標を達成するのに苦戦している。2020年の新型コロナウイルスによる打撃からの回復には、予想以上の時間がかかっている。
このように、OPECプラスが次のウィーンでの会合でこれまでの計画を維持すべき理由は、すべて論理的なものである。COP26が開催真っただ中であり地政学的な圧力が高まり、熱気を帯びた雰囲気が漂っているものの、やはり論理が決め手になるはずだ。
– フランク・ケイン氏は、ドバイ在住の受賞歴のあるビジネスジャーナリスト。
ツイッター@frankkanedubai