
サウジアラムコ は時価総額世界最大の企業であり、タダウル がその市場最大の株の販売窓口だ。
その二つの事実を考えてもらいたい。1.7兆ドルの企業価値をもつアラムコはこれまで最大の企業価値を見積もられていた企業 をはるかにしのぎ、に続く二大企業 を合わせた価値にほぼ相当する。
タダウルはそれまで世界の株式取引所の中では中ほどに位置していたが、2014年の250億ドルのアリババを上回る市場最大の新規株式公開(IPO )の晴れ舞台となり、今週後半アラムコ株の売買が開始されれば、間違いなくそのランクは急上昇するだろう。
6か月前でさえ、そのような出来事が起こるとは誰も思わなかった。3年前は言うまでもないが、アラムコのIPO という話が初めて持ち上がった時には、遅延や延期ことしか話題に上らなかった。
Samba Capital のCEO ラニア・ナシャー氏が先週述べたように、本気にしていなかった世界中の専門家たちや、何億ドルという手数料が入る可能性にもかかわらず乗ってこなかった一部の投資銀行アドバイザーたちを尻目に、サウジアラビアがこのような事をやってのけたことは、彼らの「プライドの源」となっている。
決定的な事実は、これが大接戦にすらなかったということだ。個人並びに機関投資家への ブックビルディングが先週の木曜日の夜に最終的にクローズした際、その提示価格は約4.65倍であった。
これは256億ドルの価値の株式に対して1,190億ドルの投資資金が動いたということになる。そのオファーには興味はない?アラムコのIPO のために1,000億ドル集めるなんて不 可能?
供給過剰の世界の原油市場による長引く影響、あるいは気候変動についての激化する議論がなかったとしたら、あるいは、去年の9月に起きたアブカイクとクライスへの攻撃が起きなかったとしたら、このIPO への関心度がどれほどのものになっていたか、想像してみてほ しい。
また、ジャマル・カショギ氏がイスタンブールの領事館で殺害されなかったとしたら、IPO の高まる人気がどうなっていたか、想像してみてほしい。この出来事は株式公開というものの国際的な見方を、他の何よりも塗り替えてしまったと認めざるをえないはずだ。
ありとあらゆる逆風にもかかわらず、そのIPO は大成功を収め、本気にしなかった人々を もっとも苛立たせたことは、世界の金融界を支配している西洋の機関投資家たちの助けを借りずにそれを成し遂げたという事だ。
アラムコと、サウジやその地域のアドバイザーたちは、ニューヨークやロンドンの助けを借りずに全て成し遂げる事ができると踏んだ。そして、ブックビルディングによってそれが証明されたのだった。このことによる影響は長く尾をひくことだろう。今後市場へ出てくる企業たちは、西洋でプライマリーリスティングを行うことを考え直すようになるだろうか?
というわけで、ちょっとした祝賀行事がリヤドとダーランで予定されてはいるが、それは大げさなものではない。IPO の成功をはかる本当の物差しは、発行企業が株を巨額で売ることができるという事ではない。その株の買い手の方も、その取引からなんらかの美味しいものを手に入れられなければならない。
そこで、来週の取引開始から数週間・数ヶ月後に起こる事が重要となる。
それはおおかたアラムコやそのアドバイザーたちがコントロールできるようなものではなく、世界の資本市場のきまぐれで変動する。古くから言われているように、「株とは上がりもすれば下りもする」ということだ。
しかしそれは、政府機関の民営化、そして価格付けされる企業への参入ということに他ならない。今やサウジ市民、駐在者、地方投資家たちは彼らの経済的健全性、そしてサウジ経済の健全性に関する日々のバロメーターを持っており、上部から恩恵を受けるようになる。彼らは株主として自分の考えを政府と企業の両方に知らしめることができる。そうした利点だけとってみても、サウジアラムコのIPOには価値があると言えよう。
この株式公開はサウジの、中東の、そして世界のエネルギー市場の歴史における一つの大きな布石である。今週以降、その本当の重要性を我々は理解する事になろう。
Frank Kaneはドバイを拠点とする、受賞歴を持つビジネスジャーナリスト。Twitter: @frankkanedubai