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北朝鮮のミサイル実験はアラブ諸国にとっても重大な影響がある

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10 Jan 2022 02:01:46 GMT9
10 Jan 2022 02:01:46 GMT9

世界が直面する地理的・政治的な問題には事欠かない。新型コロナウイルスの感染者数は記録的なレベルに達し、ウクライナ情勢は未解決の緊迫した状況のままだ。イランは中東全域にテロ活動の輸出を続け、アフガニスタンの人口の大半は飢餓に苦しんでいる。中国は台湾を脅かし続けているし、カザフスタンは不安定で混沌に満ちた新たな時代に突入した。

それだけでは足りないとでもいうように、北朝鮮は国連安全保障理事会の決議に反し、極超音速ミサイルの発射実験を行った。

極超音速ミサイルは、音速の5倍の速さで移動する。使いこなすのが難しい技術だが、うまく機能すれば高速性と機動性によってミサイル防衛システムを回避することができる。北朝鮮が、いつ極超音速兵器を量産できるようになるかは不明だが、同国の政府がその能力を欲していることは明らかだ。今回の実験に使われたミサイルは、昨年9月に実験が行われた極超音速滑空ミサイル「火星8」と類似しているか、その変異型である可能性がある。現在、ミサイルの専門家が情報レポートを精査している段階だが、今回の発射が2022年最初の新体制となるかもしれない。

北朝鮮は数十年に渡って、休みなく核兵器や高度なミサイル開発を追求し続けてきた。最近の実験も、北朝鮮の最高指導者、金正恩氏にとっては当たり前の流れだ。政権に就いて以来の10年間、金正恩氏はミサイル計画を大幅に展開してきた。特に2016~2017年頃からは、自らが主導し、ミサイル実験プログラムを飛躍的に拡大させている。

2019年、北朝鮮は26回の短・中距離ミサイル実験を行った。この年は、ミサイル実験という面では北朝鮮政府にとって記録的な年となった。2020年3月には、9回の短・中距離ミサイル実験を実施。これは、一ヶ月のテスト回数としては最多となる。当時、北朝鮮と外交的和解を望んでいたドナルド・トランプ元大統領は、これらの実験の重要性を軽視し、国連決議には違反していないと主張した。実際には、違反していたにもかかわらず。

今回の実験に対して、バイデン政権はより伝統的なアメリカ式アプローチをとっている。国務省は何らかの責任追及で北朝鮮政府を脅かすことはせず、型通りの非難文を発した。このような声明は北朝鮮を心配させるものではないが、同国政府はトランプ政権とは異なる対応に気がつくだろう。金総書記との関係を構築することに必死だったトランプ政権時代は、国務省が北朝鮮のミサイル実験を非難する声明は出すことはほとんどなかった。

北朝鮮のミサイル開発は、北東アジア諸国以外にも不安定な影響を及ぼしている。中東諸国政府は、平壌の動向を注意深く見守る必要がある。イランと北朝鮮の間には緊密な協力関係が築かれてきた実績がある。特に核兵器の研究、弾道ミサイルの開発、海洋能力において、そのような事実が見られる。

弾道ミサイル開発における両国の協力関係は1990年代にさかのぼり、現在も続いている。例えば、イランの「シャハブ3」は、北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」を元に開発された。イランが技術向上を望む分野の一つは大陸間弾道ミサイルだが、北朝鮮はこの分野において役立てる立ち位置にある。協力体制はミサイル開発にとどまらず、イランは北朝鮮のヨノ型潜水艦を元にしたガディール級小型潜水艦を多数運用している。

核兵器開発におけるイランと北朝鮮の関係は秘密裏だ。情報はほとんど公開されていない。2007年、イスラエルはシリアの原子炉を破壊した。この原子炉は北朝鮮が建設したもので、シリアの核兵器プログラムの基盤だったと疑われている。つまり、北朝鮮とイランは核兵器に関しても同様の癒着関係にあると考えるのが妥当だろう。

北朝鮮が対話を拒み続ける中、米国とその同盟国、アジアのパートナー国は、信頼できるだけの抑止力と防衛力を維持する必要がある。そこには、米国本土と海外の同盟国のためのミサイル防衛策が不可欠だ。

強力で堅牢なミサイル防衛システムは、米国の国家安全保障アーキテクチャーの重要な構成要素だ。危機的状況の中で政府に決断する時間を与え、より高い攻撃抑止力をもたらしてくれる。万が一、実際の攻撃が起こった場合、ミサイル防衛システムがあれば重要なインフラや人口密集地を保護することができる。

北東アジア諸国に加え、米国は中東のパートナー国のミサイル防衛能力の向上支援に重点を置くべきだ。 北朝鮮とイランが緊密な協力関係にあるなら、なおさらである。そうすることは、アメリカの国益にかなっている。結局のところ、中東には米軍兵士が数千人と10万人以上の米国民が滞在しており、その全員がイランからのミサイル攻撃の脅威にさらされているのである。

北朝鮮の実験のタイミングは偶然ではないと考えるのは難しくないだろう。バイデン大統領はアフガニスタンの余波で弱っているように見えるし、米国政府は国内の問題が山積みで気が散っている。 それも事実かもしれないが、政治家たちは北朝鮮の行動を、北東アジアの地域安全保障を弱体化させることを目的とした長期的な軍備増強プロセスの一環と見るべきだ。

だが、これは中東の問題でもある。朝鮮半島での北朝鮮のミサイルや兵器の実験が成功するたびに、何千キロも離れたアラビア湾の地域安全保障にも影響があるかもしれないのだ。どうやら、2022年は長い1年になりそうだ。

  • ルーク・コフィー氏はヘリテージ財団ダグラス&サラ・アリソン外交政策センターの所長。Twitter: @LukeDCoffey
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