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ごう慢なイスラエルのタカ派はすべてを失うリスクあり

2019年6月25日にバーレーンのマナーマで開かれた会合「繁栄に向けた平和」で演説するホワイトハウスのシニア・アドバイザーのジャレッド・クシュナー。(ロイター)
2019年6月25日にバーレーンのマナーマで開かれた会合「繁栄に向けた平和」で演説するホワイトハウスのシニア・アドバイザーのジャレッド・クシュナー。(ロイター)
バリア・アラマディン
30 Jun 2019 02:06:55 GMT9

先週「繁栄に向けた平和」と銘打った会合がバーレーンで行われました。この会合に対してのコメントで最も印象的だったものの1つが、ジャレッド・クシュナーの発言でした。彼は「2002年のアラブ和平提案は実現できるものではなかった」と語ったのです。アラブ和平提案では、エルサレムを共有の首都とすること、占領地からの撤退、主権を有するパレスチナ国家の樹立が謳われていました。これらの和平プロセスの柱は国際的に認められている基本的なものであり、これが「実現できない」理由は、トランプ政権がこれらを根絶やしにしようと多大な努力をしたから、という以外にありません。

クシュナーがパレスチナ問題を表面的にしか把握していないことに、アラブの当局者はしばしば衝撃を受けています。ドナルド・トランプは、はっきり親イスラエルだと受けとめられていますが、彼はこれを良いことだと思っているのです。トランプ政権のイデオロギー信奉者の中では、デービッド・フリードマンが示す見解が重要です。彼はトランプ政権の駐イスラエル大使を務めています。

クシュナーと同様にフリードマンは正統派ユダヤ教徒であり、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親密な関係にあります。大統領選挙戦の最中、フリードマンの導きにより、トランプは過激な親イスラエルのレトリックを用いるようになりました。フリードマンは在イスラエル米大使館のエルサレム移転を立案した人物です。イスラエルが占領するゴラン高原についてトランプの耳元でささやいたのも彼なのです。フリードマンは、ヨルダン川西岸の広大な地域を不法に併合すべきだと公然と主張しています。

なぜクシュナーは、提案された協定の公開をそんなに渋るのでしょうか?それは、アラブ人や国際法とパレスチナ人の権利を重んじるすべての人にとって、その提案がまったく受け入れられないものであることにまちがいないからです。今回の協定以前に、フリードマンとネタニヤフは共謀してパレスチナ人から土地と権利を奪っています。この状況で、パレスチナ人がこれ以上何を「痛みを伴って譲歩」するとクシュナーは考えているのでしょう。「紅海に自ら身を投げる」以外に選択肢があるのでしょうか?

アメリカの政策決定が政治の主流からどれほどかけ離れているかを具体的に示すために、1つ問題を出してみましょう。アメリカが脅迫し、言いくるめ、圧力をかけているにもかかわらず、大使館をエルサレムに移転させた国は一体いくつあるでしょうか?移転させたのはグアテマラだけです。ほとんどの人がこの国を地図上で見つけるのに苦労するでしょう。

パレスチナの経済支援に500億ドルを拠出したいというのは大変結構ですが、アメリカは自らの和平案に金を出すことを拒否しています。それどころか、アメリカは国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)からは年間約3億6000万ドル、パレスチナの治安維持に対しては6000万ドル拠出額を削減しており、他の親パレスチナの団体に対する支援も減らしています。パレスチナ自治政府(PA)は、過去1年間給与の支払いができておらず、財政破綻に近づいています。サウジアラビア(2000年以降PAに60億ドル以上を拠出している)のような湾岸諸国は、再び資金を拠出すると予想されています。しかし、パレスチナの経済は道路封鎖や軍事侵略のせいで麻痺しており、いくら投資をしたとしても、経済的繁栄を奇跡的にもたらしたり、占領下の生活を耐え得るものにしたりするのは不可能です。

ナフタリ・ベネット元教育相のようなイスラエルのタカ派は、農村部のヨルダン川西岸地区の大半を一方的にイスラエルの領地に組み込むことを想定しており、こうなるとパレスチナ人は人口が密集した都市部のカントン(区分州)に取り残されることになります。1970年以来、新しい入植地は、ヨルダン川西岸地区をズタズタに切り裂き、エルサレムが密集した建造物によってこの地区の内部から切り離されるように、細心の注意を払って配置されてきました。国家としてのパレスチナを滅ぼぞうとする従来の極右が掲げる正統性が急進化してきていますが、フリードマンとベネットは、このことを象徴しているにすぎません。

しかしながら、こういったアパルトヘイト政策はパレスチナ人を魔法のように消滅させることはできません。「権利を奪われた数百万人のパレスチナ人を取り込んだイスラエルは、真の民主主義国家にはなり得ない。さらに、そのような人種的不平等を維持するためには、より軍事的な独裁体制に移行せざるを得ないかもしれない」。これは以前から知られるお決まりの表現です。イスラエルは中東の他の国家と同様に民主主義国家ではないのです。人権に関する記録は恐ろしいものであり、非ユダヤ人は参政権を奪われ、そして占領を続けるために極右のエリートに権力が集中しています。こうしたことを考えるとそう結論付けざるを得ません。

パレスチナ国家樹立への希望がすべて断たれれば、新たな住民蜂起が起こるのは時間の問題に過ぎなくなります。パレスチナの指導者たちが自らを無意味な存在にしてしまった後はなおさらのことです。イスラエル軍の手により命を失うリスクを負うか、国家の滅亡か。このどちらかを選ぶというときに、パレスチナ人に失うものがあるでしょうか?

トランプ政権は神から授けられた贈り物であるとネタニヤフは見なしていますが、トランプが何十年にもわたる和平プロセスの正統性を覆したことに何の根拠もないという事実は衝撃的です。2020年のアメリカ大統領選挙に出馬する民主党の候補者は、ネタニヤフの政策に対して類を見ない批判を展開しています。かつてヨーロッパとアメリカはうわべでは協力関係を維持していましたが、今日では中東政策をめぐって対立していることを隠さなくなっています。

フリードマンは、イスラエルがヨルダン川西岸の全区域を明け渡すという「シナリオはあり得ない」と主張していますが、この放言は、国際法の実態を否定しているだけでなく、世界の99%の国家の公式見解にも相反するものです。奪った土地を併合し、非ユダヤ人から市民としての権利を奪い、パレスチナ人の権利を強引に否定する。イスラエルがこういった行動を続けていると、まだ残っている国際世論の同情も失ってしまう危険性があります。強大な力を持ったアメリカでさえその例外でありません。イスラエルは年間約40億ドルの軍事資金を含め、アメリカに財政的に依存しています。

アメリカにはイスラエルの人口にほぼ匹敵するほどのユダヤ人が暮らしていますが、進歩的なアメリカのユダヤ人たちが新たに合意したのは、「トランプのアプローチはイスラエルの世界での地位に対して悲惨な結果をもたらすものだ」ということです。ネタニヤフは再選挙を実施せざるを得なくなりました。ネタニヤフの法的地位や道徳的地位に信用がなく、イスラエルの政治が不安定であることを考えれば、中道連合が4月の選挙よりわずかに議席を伸ばし、ここ20年で初めて政権を樹立するチャンスを得る、ということも考えられます。

パレスチナ人は、多くのアメリカ政権が接近してきては去っていく、という状況をずっと経験してきました。パレスチナ人は正義の探求においては忍耐強いのです。たとえ正義の確立にさらに70年かかったとしてもです。自身の子どもが殺されたり、障害を負ったり、投獄されたりした人たちは、幻の経済的恩恵を求めて自らの大義をあっさり捨てることはないでしょう。

近隣諸国と平和的に共存するのではなく、一時的な軍事的優位を利用してあらゆるものを征服できると傲慢にも考えている。歴史のページには、こういう指導者たちが何人も記されています。こういった指導者が支配する帝国に共通するのは、自らの矛盾の重みであっという間に崩壊してしまったということです。

ほとんどのユダヤ人は「領土と平和の交換」が必然であることを分かっていますが、ネタニヤフとフリードマンはそういうユダヤ人とは違って、一時的なものに過ぎない大きな権力を利用して、領土を丸ごとかっさらいたいと考えているのです。彼らは、世界の地政学の風向きが変わった瞬間にすべてを失うリスクがあることに気付いていないのです。

バリア・アラムディンは数々の賞を受賞したジャーナリストであり、中東やイギリスのテレビにも出演しています。彼女は「メディア・サービス・シンジケート」の編集者であり、数々の国の首脳たちにインタビューを敢行しています。

https://www.arabnews.com/node/1518516

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