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スーダンはこれから民主主義に向かうのか、無政府状態になるのか

オムドゥルマンで反政府運動に参加し、タイヤを焼くスーダン人のデモ隊(ロイター)
オムドゥルマンで反政府運動に参加し、タイヤを焼くスーダン人のデモ隊(ロイター)
05 May 2019 02:05:37 GMT9

私はスーダンで過ごしたことがあるので、多くの人に忌み嫌われていたアル・バシールが30年間の政権掌握後に失脚した際、抗議者たちが感じた高揚感に魅了された。しかし、同時に、これから起こることに対する強い恐怖も感じていた。地域全体を見渡すと、民主主義への移行に成功するための青写真を見つけることは困難であり、無数の失敗例が存在するからだ。

これらの抗議者の多くは勇気ある若い女性たちであるが、革命が幻に終わるのではないかと恐れ、路上で声を上げ続けている。バシールとその配下の者たちは身柄を拘束されたと言われているが、投獄したのは、政権を支えてきた多くの同じ軍人たちなのだ。自由で公正な選挙が行われ、人々は新たな統治システムの性質について真に発言することができるのだろうか。政権の虐待に対して十分に厳しい捜査が行われるのだろうか。バシールは最終的にハーグの裁判所に引き渡されるのだろうか。

ムスリム同胞団は2011年にカイロで起こった反政府デモを扇動・主導したわけではないが、最も組織化された存在としてその後の議会選挙で圧勝した。スーダンのイスラム教徒も同様に、政権に近い位置を占めていた期間に組織化が進み、イスラム教徒の会合を攻撃した抗議者らに広く嫌悪されている。しかし、敬虔な社会において、政権崩壊以外に共通の目的を持たない都市中流階級による抗議運動より、イスラム教徒の活動の方がうまく行く可能性がある。

最悪のシナリオは、リビアやイエメンのように派閥間の紛争に陥ることである。スーダンの規模や内乱の継続、確立されているとは言えない市民社会を考慮すると、その危険性は非常に高い。外国の介入によって事態がさらに悪化する可能性もある。1990年代、イラン政権やウサマ・ビンラディンは、国際社会から除け者にされていたバシール政権にとって数少ない友人であった。スーダンは、アフリカの反政府勢力、テロリスト、ならず者国家、パレスチナ過激派向けにイランの武器を密輸するためのルートになっていた。スーダンのイスラム教徒は、最近スーダンに介入を試みたカタールやトルコを潜在的なパトロンと見ている。ロシアや中国も自国の利益の保護や拡大のために行動するだろう。

このように、スーダンおよび同時期に長期政権が崩壊したアルジェリアにとって、状況は極めて不利である。「アラブの春」は、イランなどの対抗勢力がバーレーンやシリアに介入したことによって不安定化が進み、地域の安定に壊滅的な影響をもたらした。チュニジアは幾度となく成功例として引用されているが、詳しく見ると、慢性的な政治的・経済的危機、改革の行き詰まり、汚職、国民の信頼の欠如など機能不全に陥っている状況が明らかになる。

ヨーロッパ南岸に隣接するリビアやチュニジアでは、全く違う展開になっていた可能性がある。カダフィ大佐の死後、西側諸国は急速にリビアへの関与を薄めたが、それは、私がこれまで目にしてきた中で最も近視眼的な国家戦術の一つであった。西側諸国は反乱軍による政府崩壊を援助したのだから、そこに留まり、民主主義への移行を手助けすべきであった。

西洋の政治科学者はしばしば、民主主義がどのように構築されるかについて信じられないほど無知である。フランスの知識人ベルナール=アンリ・レヴィなどによって、2011年の革命後の国家は人々が望む民主主義に向かうだろうという恐ろしく楽天的な見解が広められた。しかし、制度や市民社会、民主的な価値観、チェックアンドバランスを構築することは非常に複雑なプロセスである。経済的混乱および投資や観光収入の損失により、社会の不安定化がさらに進むことになった。リビア、エジプト、イエメン、チュニジアには第二次大戦後のマーシャルプランに匹敵するものが必要であったが、その代わり、彼らは混乱状態のまま放置されたのだ。

汚職にまみれた残虐なカダフィ政権やサレハ政権は強い嫌悪感を抱かせるものであったが、最悪な政府でも無政府状態よりマシだということを私たちは痛いほど学んだ。統治システムが無政府状態に陥ると、元に戻すのは非常に困難である。米国人はイラクやアフガニスタンでそれを思い知った。

バラク・オバマ前米大統領は明らかに外交政策の失敗はあったものの、少なくとも自分の行動の結果を気にかけていたようだった。彼の後継者であるドナルド・トランプ米大統領は、そのような信頼感を提供せず、私語からもアフリカや発展途上国に対する軽蔑や無理解がうかがえる。欧州の指導者らもトランプ氏に倣い、国際的な責任を回避している。しかし、リビアやシリアの政権崩壊は、難民危機に対するパニック的な反応によってポピュリズムの台頭を招き、欧州にとって非常に大きな不安定要因となってきた。欧州諸国は、スーダンやアルジェリア、チュニジアの長年の不安定化による問題をただ傍観し、それを背負うことはできない。マリ、ブルキナファソ、ニジェールなど他のサハラ以南の国々も過激思想が蔓延し、国民は非常に脆弱な状況に置かれている。 

私は2010年の選挙運動の一環としてバシールの側近らと共に旅をし、有権者に対するあからさまな軽蔑を目にしたことを忘れないだろう。本当の意味の政策などなく、繰り返されるのはお決まりの好戦的な発言と無限に続く踊りだけであった。バシールは国際刑事裁判所で戦争犯罪者として起訴されたことを名誉のバッジとして宣伝していた。南スーダンの独立が数ヶ月先に迫っていたが、バシールは現実から目をそらしているかのように、ジュバやマラカルなどの都市を巡る際、その件に一切言及しなかった。南スーダンの内戦状態は長引く可能性があるが、バシールがその地で人民を挑発し、反乱者に資金を提供することはもはやない。 

これから先の民主化への道がどれほど不安定であり、革命が道を逸れないようにするためにどれほど国際的な支援が必要であるかを認識している抗議者はほとんどいない。湾岸協力会議の諸国はスーダンの政権崩壊に対して非常に建設的なアプローチを採用し、既に30億ドルを提供している。しかし、急激なインフレ、負担しきれない補助金、銀行システムの事実上の崩壊などは新しいリーダーシップが対応すべき構造的危機のほんの一部でしかない。

スーダン人は非常に寛大な国民であるが、革命の成果を享受するためには、善意だけでなく様々なものが必要である。バシール政権の残党を排除するためにするべきことはまだ山ほど残っているが、それを解決して初めて、最も困難な決定に取りかかれるのである。国際社会は、この地域における革命失敗の記録の中でスーダンを輝かしい例外とする手助けをして、歴史に新たな1ページを加えることができる。 

バリア・アラムディンは受賞歴のあるジャーナリストであり、中東や英国で報道番組に出演している。また、メディアサービスシンジケートの編集者を務め、多数の国家元首に取材を行っている。 

https://www.arabnews.com/node/1492891

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