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ウクライナ — 欧米の信頼性の低さを痛感させられる

2022年2月26日、ドネツク郊外のトルドフスキエの集落で、砲撃で被害を受けた直後の民家の様子。この集落は、ウクライナ軍との接触線から700メートルほど離れた場所にある。(AFP)
2022年2月26日、ドネツク郊外のトルドフスキエの集落で、砲撃で被害を受けた直後の民家の様子。この集落は、ウクライナ軍との接触線から700メートルほど離れた場所にある。(AFP)
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27 Feb 2022 06:02:31 GMT9
27 Feb 2022 06:02:31 GMT9

2月17日、アラブニュースはコソボの独立14周年に合わせ、同国のアルビン・クルティ首相のインタビューを掲載した。

その中で私は、西側諸国、すなわち米国、NATO、EUが信頼に足ると今でも考えているのか、また、これらの諸国はいざとなったらコソボのために立ち上ってくれるのか、それとも以前のアフガニスタンや現在のウクライナのように見捨てるのか、繰り返し質問した。

クルティ首相は西側諸国を擁護し、米国とNATOはそこに留まると考えていると述べた。47歳のクルティ氏は私と同じ世代だ。1990年代、ジョージ・H・W・ブッシュ政権下の米国が、地域の同盟国の協力を得てクウェート解放に奔走したのを見た世代である。その後、米国はビル・クリントン政権の下、バルカン戦争を終結させ、コソボとボスニアにおけるセルビア人による虐殺を食い止めることに貢献した。

しかし、近年、我々の世代は、同じ超大国が自らの価値観のために立ち上がらず、自らのレッドラインに基づいて行動しないという残念な行為も目にした。それはシリアとウクライナの両国で起こった。2012年にオバマ元大統領は、化学兵器の使用という架空のレッドラインを使ってシリアの独裁者アサド氏を脅した。また、2014年には、ロシアによるクリミア占領についても同様の脅しをした。いずれの場合も、元大統領でノーベル平和賞受賞者のオバマ氏はまったく何もしなかった。

現在、バイデン大統領はこれと同じ道をたどっている。強気の発言をしているが、実際には多くを語っていない。ニヤニヤしたり、顔をしかめたりしても、本質的に言っていることが「NATOはウクライナに軍隊を送らない」である限り、結果は何もしていないのと同じである。

教科書的なことはすべて行い、いつの日かNATOに加盟することを望んでいた民主主義国家ウクライナは、隣国のロシアとは異なる道を選べば米国や西側諸国が守ってくれると信じていた。そのツケを払わされているのである。

サウジアラビアやアラブ諸国の情勢を見ている我々にとって、このような事態は何ら驚くべきことではない。幸いなことに、我が国サウジアラビアは何十年にもわたって自国の防衛に投資してきた。フーシ派による都市や民間空港へのテロ攻撃の大部分を食い止めることができている。

しかし、イランが支援するフーシ派の攻撃を受ける側の罪のない男性、女性、子供たちにとって後味が悪いのは、バイデン政権がトランプ政権時代に行われたフーシ派のテロリスト指定を覆したことだ。フーシ派がサウジアラビアや、最近ではアラブ首長国連邦(UAE)の民間人に対する犯罪を自慢し続けたとしても、米国は自国が間違っていたことを認めないだろう。さらに追い打ちをかけるように、米国はミサイル防衛システムとして知られる「パトリオット」を撤収した。サウジアラビアの軍は、こうした無差別テロ攻撃から国民を守るために厳戒態勢を維持している。

「友好国がこのようなものであるなら、敵は必要ない」と考えるウクライナを誰も責めることはできない。

ファイサル・J・アッバス編集長

米国はウクライナを守るために何もしなかったと言う人がいるかもしれない。確かに、米国は軍事援助を行い、制裁を発表した。また、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に対するフーシ派の攻撃を非難した。しかし、何かをしているようなふりをすることと、正義が勝つために必要なことをすることは違う。

現状では、制裁に踏み切るかどうかで西側諸国そのものが分裂しているくらいだ。経済的利益と相互利益が邪魔をしているのだ。

言うまでもなく、石油やガスの価格はすでに極めて高い水準にある。今後さらに上昇する可能性が高く、欧米の一般市民の家計をさらに苦しめることになる。

もちろん、バイデン政権が長年の同盟国や友好国に対して孤立した振る舞いをせず、緊密に連携していれば、現在のエネルギー市場の状況は回避できたかもしれないし、打撃を和らげることができたかもしれない。

フーシ派の例に戻れば、誤りを認めてフーシ派をテロリストとして再指定することは、米国政府にとって何の損失にもならないばかりか、誤りを認めることは米国自体のテロリストの定義と対テロ政策に沿ったものになる。(忘れた人のために念のため言うと、フーシ派の公式スローガンや政策のひとつは「アメリカに死を」である。)しかし、もちろん現政権の中には、米国の長年の政策や価値観に沿ったスタンスを取ることよりも、トランプ前大統領の決断について議論してそれを覆すことを優先する人もいよう。

一方、最近発表された懲罰的措置(ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022へのロシアからの参加禁止や、UEFAチャンピオンズリーグ決勝の開催地をサンクトペテルブルグから変更することなど)については、ロシア政府が笑っているに違いないと思わざるを得ない。

個人への制裁など、これまでに発表されたより深刻な措置も、ロシア政府が何のために戦っているかを考えれば、どれも許容範囲内の副次的被害と言えるだろう。

世界の多くの国々はウクライナが侵略されたと考え、ロシア政府の紛争に対する考え方に反対しているが、その一方で、ロシアは本質的に常にウクライナを歴史的な祖国の一部と見なしてきたという見方があることも忘れてはならない。また、ロシアが派遣した「平和維持軍」は、ルガンスク人民共和国(LPR)とドネツク人民共和国(DPR)という新たに独立宣言した二つの共和国を守っているというのが、ロシアの公式見解である。この二つの共和国はモスクワに正式に支援を要請していた。

当然ながら、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、望んでいた答えを受け取っていないと、西側の同盟国に対する不満をあらわにしている。ウクライナは取り残され、自分たちのことは自分たちでやらなければならないとゼレンスキー大統領が思うのも無理はない。「友好国がこのようなものであるなら敵は必要ない」と考えるウクライナ政府を責めることはできないのだ。

冒頭で紹介したコソボ首相とのインタビューに話を戻すと、クルティ氏の答えの中で唯一同意できるのは、もう一つの部分だろう。米国やNATOに依存する一方で、自国の軍隊の整備も進めているという部分だ。これは明らかに、近年米国や西側勢力に依存している国にとって非常に賢明な判断である。

  • ファイサル・J・アッバス氏はアラブニュースの編集長。ツイッター:@FaisalJAbbas
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