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レバノンの革命を打ちのめすことができないものは、革命をより強くするだけである

2019年12月17日にベイルート中心部で治安部隊に花火を投げつけるデモ隊。 (AFP)
2019年12月17日にベイルート中心部で治安部隊に花火を投げつけるデモ隊。 (AFP)
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24 Dec 2019 02:12:44 GMT9
バリア・アラマディン
24 Dec 2019 02:12:44 GMT9

レバノンの指導者たちは、長年苦しんできた国民の神経をさらに逆なでしようとしているのだろうか?

抗議者たちはイランの干渉を激しく非難し、外国のドナーは過激派が支配する政権への資金調達を拒否する。— それで、当局はヒズボラが推す候補者を首相に指名する。

レバノンの国民は、自国が暴力的でわけのわからない準軍事組織の人質にされていると警告する。—それで、この同じ準軍事組織は、平和的な集会への攻撃をエスカレートすることによってこれらの主張が正しいことを証明する。

国民は腐敗した宗派制度の廃止を要求する。— それで、大統領は頑固に内閣を押し通そうとし、その組閣の顔ぶれは、これまでの内閣よりもさらにレバノンの一般国民を疎外するように選ばれたのではないかと思われるような面々である。

これを抗議運動に対する「反革命」と呼ぶ評論家もいるが、ゲブラン・バシル氏主催による大統領宮殿での豪勢な酒宴のあと、スンニ派の政治家ハッサン・ディアブ氏が首相に指名された。主流スンニ派、ドゥルーズ派、キリスト教派によるボイコットが予想されることから、最終的な内閣は取るに足らない人物とヒズボラ信奉者の奇妙な混合物となる可能性が高い。2か月も抗議デモを行ってきた国民がそうした苦しまぎれで私利的な作戦によって怒りを鎮められることはないだろうし、それに騙されることもないだろう。

ヒズボラから父親を殺害されたにもかかわらず、サード・ハリリ氏は、ヒズボラの後押しによる政府への参加を国民平和の代償として正当化した。だがその平和とは政府のための平和であり、イランに同盟した宗派は国家を(財政的、政治的、道徳的に)破産させ、最終的にはこの政府が役に立たない政府であることが明らかになった。

ヒズボラから父親を殺害されたにもかかわらず、サード・ハリリ氏は、ヒズボラの後押しによる政府への参加を国民平和の代償として正当化した。

バリア・アラムディン

レバノンの経済は急降下するばかりだ。2019年にはレバノン企業の10%以上が廃業に追い込まれ、さらに22%が従業員を60%以上削減し、大企業の数社が崩壊寸前状態に陥っている。幸運にもまだ職を追われていない人たちも、給与が大幅に削られている。

まさにこうした理由により、抗議者たちはすぐには引き下がってはならない。抗議者がここでみな素直に自宅に戻ってしまったら、このつらいプロセスが将来また何度も何度も再燃することになるだけだ。抗議とは、国家に緊急手術を迫り、何十年も蓄積した癌性組織を切除し、患者の命を救わせるためにある。レバノンが単にアスピリンと温かい飲み物を与えられ眠りについてしまっては、予想されるその唯一の予後は、ジワジワと苦痛を伴う死しかない。

レバノンを強固に支配する政治階級全体(抗議者たちが唱える“kilon yanni kilon”、訳して「全員とは彼ら全員を意味する」)が、レバノンを骨までしゃぶり尽くしてきた。世界の腐敗認識指数ランキングでレバノンは10年間に63位から143位へと滑り落ち、地球上で最も腐敗したクレプトクラシー(泥棒政治)の1つとなった。人口の1%が推定で国富の25%を密かに蓄え込んでおり、無一文の国民が債務残高対GDP比150%を背負わねばならず、債務返済が国民にとって耐え難い負担になっている。

バジル氏とヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師は、経済にダメージを与えたのは抗議者たちだと非難しているが、抗議は犯罪企業が国庫を空にしたあとで国民の堪忍袋の緒が切れたからこそ起こったのだ。抗議デモの前でもGDPの成長は平均0〜0.3パーセントであり、ここ数週間で通貨は価値の30パーセントを失った。

経済は、レバノンの生存には適さない政権によって共食いされてきた。17億ドルを超えるハード・カレンシーがシリアへ密輸され、イラン政府の資金を洗浄するためにレバノン金融ネットワークが搾取されてきたために、銀行システムが麻痺してしまった。こうした悪用によりレバノンは国際的な経済制裁を受け、こうした犯罪の泥沼のなかで富を危険にさらしたくない湾岸諸国の投資家たちも投資を渋っていることから、この地域でかつては銀行ハブとして栄えたレバノンの窮状はさらに悪化した。

観光シーズンのピーク時期におけるレバノンの人口はもともと小さいものだったが、何百万というハリージー(Khaleeji)、西洋人、そして膨大な数のレバノン人ディアスポラの流入により観光客の数が影を潜めてしまうことが習慣のようになってしまった。だがイスラエルとの戦争を騒々しく画策する神権的な過激派で溢れかえったベイルートの街に、どうやったら観光客が増えるというのだ?

パニック状態のホテル所有者たちの報告では、客室稼働率は100%近くから10%未満に低下したという。レバノン固有の宝物はすべて悪党やテロリストに踏みにじられてきた。これらの悪党たちにより、レバノンは国際社会ののけ者国家と変わり果ててしまった。

あるベテラン西側外交官が私に語ってくれたところでは、レバノンが現在の行き詰まりからレバノンが脱する手段として最も期待できる解決策の1つが、フランスとその同盟国による積極的な介入だという。だがその外交官も、EUと国連を介したこうした多国間外交行動が望めるのもヒズボラがキリスト教や少数民族コミュニティに対して広く殺戮行為を行った場合に限られるのではないかと考える。

終盤はまだ少し先のことかもしれないが、イラクであれシリアであれレバノンであれ、イランの覇権主義的プロジェクトは失敗に終わるだけだ。最近の一連の出来事により、イラン政府の代理組織に対する支持の最後の痕跡が焼き払われた。イラクでは大アヤトラ・アリー・シスタニ師が新たな総選挙を呼びかけたが、これにより(選挙が自由で公正であるならば)、過去2か月間シーア派の草の根有権者を虐殺してきた準軍事組織に対する支持が崩壊することになると考えられる。レバノンのヒズボラ支持者は、士気をそがれ現実から目をそらそうとしているか、すでに自らの忠誠心を見直し始めている。

偽造のソーシャルメディア投稿に対するヒズボラのねつ造の怒りについてはどうなのか?ヒズボラ はトリポリで大暴れし、スンニ派の聖職者の家を攻撃し、クリスマスツリーをしょうい弾攻撃した。ヒズボラはそうした漫画のようなやくざ行為によって国民に好かれることができると本気で信じているのか? もちろんそうではない。これは、断末魔の苦しみにあるイラン政府による「抵抗の枢軸」なのであり、レバノンを宗派間の争いに再び引きずり込むことを許容してでも権力にしがみつくための、捨てばちでの最後のサイコロのひと振りなのだ。

レバノン国民は、内戦に戻ることにも、ヒズボラが政治的暗殺という好みの戦略に再び戻ることにも心から恐れている。特に、イラクの聖職者であるムクタダー・アッ=サドル氏が抗議者たちを支持し続けるのであれば氏を殺害するとゴドス部隊のガーセム・ソレイマーニー司令官が示唆したと報告されてからは、その恐怖が再浮上した。

しかし、国民がしっかりと団結し、決然とした態度を崩さず目標に集中し続ければ、国民を恐怖に陥れ、残忍に扱い、屈辱するようなこうした悪意のある試みを最終的には打ち負かすことができる。 脅迫であれ暴力であれ政治的策略であれ、革命を打ちのめそうとする新たな試みが起こるたびに、抗議者たちは一段と決意を新たにしてきた。

あまりにも長い間、悲惨さや貧困、国の孤立しか生み出してこなかった宗派制度、国民から嫌われてきた、略奪を常習とする宗派制度の最後の痕跡を国民が取り払えることに成功すれば、そう、国民がこの最後の賭けに成功すれば、今は夜明け前の暗闇にすぎないのだ。

バリア・アラムディンは受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

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