
サウジアラビアで育った多くの若者と同様、私は映画を愛している。SF、アドベンチャー、コメディなど、好きな俳優を何時間も見続けた。映画のスリルと興奮と冒険が衛星放送を通じて家庭に届けられてからも、私は映画の魔法に恋焦がれていた。
海外に行った時、映画界のスーパースターが5メートルもあるスクリーンの上に立ち、最新のスクリーンと音響システムによって迫力が増幅されるのを見る機会があった。すぐに私はハリウッドの魅力に取りつかれた。
4年前、35年ぶりにサウジアラビアで映画館が再開したとき、私は大喜びした。「映画のために旅行」する時代が終わったからだ。映画館は復活し、これまで以上に大きく、素晴らしいものになるだろうと思った。
大ヒット作の成長
サウジアラビア人は映画館が大好きだ。昨年の興行収入は2億3800万ドルで、2020年の1億2200万ドルからほぼ倍増し、西アジアでトップの映画市場を持つ国としての地位を確立した。映画はサウジの発展の脇役ではない。娯楽を提供し、雇用を創出し、強力な経済の未来に貢献する活力ある社会を作るという「ビジョン2030」の中核をなしているのだ。
「ビジョン2030」の目標の中には、地元投資家、国際的なパートナーシップ、エンターテインメント企業を誘致し、10年後までに家庭の平均娯楽支出を2.9%から6%に引き上げることが掲げられている。この計画の核は映画であり、2030年には10億ドル以上の産業になると予測されている。
この数字は驚異的であり、経済の多様化を成功させる上で大きな影響を与えるだろう。
国産映画を支援する
アラビア映画は、サウジアラビアで最も成功している映画ジャンルの一つだ。コメディ映画「Waafet Reggaala」は昨年1500万ドル以上、「Mesh Ana」は820万ドル、「Mama Hamel」は590万ドルを稼ぎ出した。これらの長編映画はエジプトの有名映画産業の作品であり、アラブの観客が、親しみやすいストーリーや登場人物のいる映画を、母国語で見たいという願望を持ち合わせていることを示している。
サウジアラビアの映画産業の基盤は、チケットの売り上げだけでは築けないのは明らかだ。しかし、サウジアラビアの映画ファンのためにサウジで作られた映画が、地元産業に持続可能な未来を提供するのだ。サウジでは俳優やクルーといった人材が不足している訳ではない。2020年に初めて開催された紅海国際映画祭のような世界的イベントは、サウジ映画の盛り上がりにスポットライトを当てている。
紅海国際映画祭はサウジアラビアの才能ある人材を全面的に支援し、サウジアラビア発の26の映画プロジェクトの制作を支援するファンドを立ち上げ、28人の才能あるサウジアラビアの映画監督(その半数以上が女性)を支援している。
また、NEOMギガプロジェクトは、最先端の制作施設、素晴らしい自然環境、世界レベルの才能を持つ、サウジアラビアの新世代の映画制作者のキャリアを後押しし、収益と雇用の確立に貢献している。
政府機関の継続的な支援とインフラ投資の増加により、今後数年間、国産映画産業の成長の兆しが見えている。国産映画産業の発展は、今後もサウジアラビアの興行収入の伸びを支え、牽引していくことだろう。
活況を呈する映画館
サウジの映画産業はまだまだ遅れをとっているが、ここ数年、映画に対する深い愛情、映画がもたらす体験や感動、影響力を感じるようになった。世界中の映画館が新型コロナウイルス感染症の大流行への対応を依然として行う一方で、サウジアラビアの映画館は活況を呈している。
我々は、指導者の野心と映画ファンの熱意のおかげで、サウジアラビア映画の新たな黄金時代を目の当たりにしている。サウジアラビアは、映画製作の中心地としての地位を確立しつつあり、目の肥えたサウジアラビアの映画ファンは、映画館により頻繁に通うことで、地元や海外のコンテンツへの支持を表明しているのだ。
サウジアラビアの映画界では、わくわくするような素晴らしいことが起きている。映画のストーリーとしても素晴らしいものになるだろう。