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2020年代のグローバルリーダーシップ:未来は若者と女性たちの手にかかっている

2019年12月29日、イラクのナジャフで継続中の反政府抗議行動でイラク国旗を掲げるイラク人大学生。(ロイター)
2019年12月29日、イラクのナジャフで継続中の反政府抗議行動でイラク国旗を掲げるイラク人大学生。(ロイター)
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31 Dec 2019 03:12:50 GMT9
31 Dec 2019 03:12:50 GMT9

新しい10年の始まりは、魂の探求にふさわしい瞬間だ。孫たちを見つめながら、世界はどこに向かっているのだろう、と私は考える。いたるところに混乱とリーダーシップの危機がある。これは来たるべき大惨事の兆候なのだろうか、それともまったく異なる種類の世界秩序の産みの苦しみなのだろうか?

ラテンアメリカ、香港、アルジェリア、スーダン、イラン、イラクでの抗議活動に見られる通り、既成秩序に挑む、力強く、発言することを恐れない女性たちが世界中に存在している。私が特に嬉しいのは、レバノンの女性たちがしばしば男性を凌駕していること。私は彼女たちを誇りに思う。彼女たちは要求を洗練された形で表現し、腐敗し派閥に支配された、そしてそう、家父長的でもあるシステムに対して、根本的な挑戦を仕掛けている。

内戦を生き抜いた私たちレバノン人は、宗派割り当て制度の修正版を受け入れた。殺し合いを止める解決策の中で最もマシなものに思えたからだ。この腐敗した、時代遅れで壊れたシステムが、そのあるがままの形で今の若者たちの目に入っていることは、私たちを恥ずかしい思いにさせる。若い世代は、生まれた宗派によって人を拘束したりしない、成熟した統治システムを望んでいるのだ。

サウジアラビアでは、驚くほどの速度で変化が起きている。いたるところで女性が車を運転している。私は最近、サウジアラビアの金融セクターの指導的立場にいる3人の女性と会う機会があった。その中には、SABB銀行と Awwal銀行の最近の統合で生まれた、現在サウジアラビアで3番目に大きい銀行を率いるルブナ・アル゠オラヤン(Lubna Al-Olayan)氏もいた。

科学分野の卒業生の60%以上は女性であり、女性弁護士、学者、ジャーナリスト、および医療専門家の数は急速に増加している。こうした変化は決して逆戻りできるものではなく、主要な立場を果たすことを期待しながら女性たちが自信を持って成長していく中で、むしろ定着していくものだ。

難民を嫌い、地球温暖化を否定するポピュリズム政権が至る所に現れるに伴い、若い女性たちは不可避的に最前線に立ち、醜い現実に挑戦している。最近の米国の世論調査では、女性の約60%がドナルド・トランプの弾劾と解職を支持している。男性の大多数は同意していない。若い、大学教育を受けた都市近郊の女性層においては、トランプへの支持はほぼ完全に消滅している。

権威主義的な指導者、また退行的な政策に対する不釣り合いな数の投票は、非常に高い年齢層からのものだ。2016年に英国で実施された欧州連合離脱是非を問う国民投票では、24歳未満の75%がEU残留に投票している。

ヨーロッパと米国には、超国家主義的なポピュリストの独裁者たちへの流れが見られていないが、これは若い世代にファシズムが受け入れられているものの、逆にずば抜けて進歩的なより若い世代が、反動的で不機嫌な年長層を継続して投票数で上回っているためだ。

それにもかかわらず、フランス、ドイツ、オランダなどの国では、極右(または極左)の政党が、特に労働者階級や教育水準の低いコミュニティおいて、若い層を不気味に侵食している。高失業率と反移民感情の間には密接な相関関係があることが、学術研究で示されている。

ブラジルのボルソナーロ大統領、ハンガリーのオルバーン首相、米国のトランプ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領らの指導者が気候変動について粗野で無知な発言をする時、ただ受け身でいるだけでは支配者たちに正しさを期待できない、と思い起こすことも私たちには有益だろう。グレタ・トゥーンベリは子供であって科学者ではない、と見下すように難癖をつける気候変動否定論者たちは、意図的に要点から外れてしまっている。

レバノン、イラク、香港、南米が混乱しているのは、ますます高学歴で広い視野を持つ若年層が、腐敗し信用を失った既成秩序を根本的に拒否し、もっと良いものの構築に貢献しようと決意しているためだ。

バリア・アラムディン

グレタは私たちよりも知識が豊富というわけではない。彼女は単に自分の良心に従うことで、何百万人という人々を、この惑星を窒息させ燃やしてしまうのを止めようと求めるまでに鼓舞したのだ。私たちの孫の世代が年齢に比して賢く、冷笑的で自己陶酔的な私たちの世代よりもはるかに先見の明があるのには、頭が下がると同時に、希望が与えられる思いだ。

古代ギリシャの文明的で民主的な都市国家は重要性の低い一地方となってしまったが、エネルギッシュで軍国主義的なローマ帝国は地中海世界全体に拡大した。西洋の世界的な影響力も同様に長い間退潮傾向にあり、ドナルド・トランプの台頭は単にこの流れを加速させている。欧米の指導者に、道徳的および法的関与の尊重、同盟国への支援、また真実で一貫した公式発言を期待することは、もはやできないように思われる。

中国は、そのますます権威主義的な統治モデルが崩壊しないのであれば、21世紀の支配的な勢力として西側世界の力を減ずる用意ができているように見える。中国の控えめな影響は、中央アジアとアフリカ全体にわたって見られる。中国の支援は、時としてインフラと経済の発展のための非常に貴重な原動力となれることが証明されている。他の場合には、抱えきれない債務を負った政府が、貿易や鉱物資源に関しての譲歩や、港の支配権の放棄を強いられている。

ウラジミール・プーチンは、わずか数年で中東の主要な黒幕になろうとロシアを強引に割り込ませてくる中、欧州中心の古い秩序を覆そうと、はるかに目立つ動きを見せている。しかし、イタリアよりも小規模な機能不全の経済のため、ロシアの動きは、アジアが世界のリーダーシップを取る時代の前座に過ぎないものかも知れない。

世界の出来事を報道する立場の私たちには、すべてが地獄に向かっていると感じられることがしばしばある。市民の暴動、地域紛争、ポピュリストの扇動者たち、不寛容や過激主義の台頭がいたるところに見られる。しかし、この混乱をよく見れば、肯定的な結論を導くことができる。これらの反動的、家父長的、そして移民排斥主義的な傾向は、溺れかかっている古い秩序の最後のあえぎなのだ。

制度的に大きな制約のある米国の選挙システムで、トランプは2016年に得票数では300万票近くの差で敗北している。来年大統領の座を維持するかどうかに関わらず、彼は一般投票ではより大きな差で再び敗れる可能性が高い。

プーチン大統領、イランのハメネイ師、トルコのエルドアン大統領などの扇動型政治家たちは、恐怖と貧困に苦しみ不満を抱いた市民が、モスクワ、テヘラン、イスタンブールのようなコスモポリタンで若年層が主導する都市において非常に屈辱的な選挙の敗北を味わい、すべての希望を失った時に繁栄する。

リビアのカダフィ大佐、イラクのサダム・フセイン、イエメンのサーレハ元大統領と同じように、彼ら独裁者たちは歴史の誤った側に存在し、最終的に彼らを地面に崩落させる、一般国民からの拒絶という重力が働く前の期間にいるのだ。

メディアや司法への取り締まりに加え、独裁者たちはは常に教育制度を標的にする。なぜなら、啓蒙された知識のある若年層は、決して自発的に退行的かつ不誠実で腐敗した指導者を支援したりはしないからだ。イランとベネズエラは世界で最も頭脳流出率が高い国だが、もし教育を受けた若者がとどまって自らの活力を祖国で発揮することを選択すれば、変化は決して遠いものではないだろう.

今後の10年間は、変動と騒乱に満ちたものになるだろう。行き場を失ったエリート層が地位低下への対応に苦闘する一方で、新興勢力は、増大した影響力を持続可能かつ有益なものにする責任感を育んでいる。

これはゼロサムゲームではない。すべての国が、安定性、開かれた国境、多国間協力、公正で強制力のあるルール、そして良い統治のための共通の価値観から恩恵を受けるからだ。たとえ、一部の国々はより小さな取り分でやっていくことを学ばなければならないとしても。にもかかわらず、世界的な不平等は急速に拡大している。2019年を通じて、世界で最も裕福な500人の資産の合計は、全体的な成長が停滞している経済情勢の中で、25%という驚異的な率で伸び、5.9兆米ドルに達した。

しかし、私は楽観的であり続けよう。なぜなら、指導的な役割をより多くの女性が担っていけば、世界はもっと人道的で思いやりある場所になり、また以前よりも良い形で未来の世代に世界を引き継ぐ義務を、人々はより深く自覚するようになるはずだから。

フィンランドの34歳のサンナ・マリン新首相。クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行総裁。ナンシー・ペロシ米国下院議長。そして、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長。彼女たちは、私が挙げたい多くの力強い例のほんの一部だ。

レバノン、イラク、香港、南米が混乱しているのは、ますます高学歴で広い視野を持つ若年層が、腐敗し信用を失った既成秩序を根本的に拒否し、もっと良いものの構築に貢献しようと決意しているためだ。

彼らは必ずしもすぐに成功するとは限らないが、それは彼らの試みが間違いだったという意味ではなく、また彼らが間違いから学ばず、彼らの夢が最終的に現実になるのを見ることはない、という意味でもない。

バリア・アラムディン(Baria Alamuddin)は、受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディアサービスシンジケート』(Media Services Syndicate)の編集人であり、多数の国家元首にインタビューしてきた。

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