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声を上げるエルサレムのパレスチナ人

キングフセイン(アレンビー)橋を渡るためにイスラエルの国境管理所で待つパレスチナ人の家族たち。2002年7月5日。(AFP)
キングフセイン(アレンビー)橋を渡るためにイスラエルの国境管理所で待つパレスチナ人の家族たち。2002年7月5日。(AFP)
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30 Jul 2022 10:07:54 GMT9
30 Jul 2022 10:07:54 GMT9

エルサレム問題とその将来は長年注目の的となっている。特に1967年のイスラエルによる占領以降はそうだ。

エルサレムのパレスチナ人は、同市の強制統一を目的としたイスラエルの市会議員選挙をボイコットした。政治的統一に対する反対はあったが、東エルサレムのパレスチナ人の状況は当初は有望だった。彼らはイスラエル市民が享受する社会的恩恵のほとんど全てを享受することができたが、永住者であり大半はイスラエル市民ではないため、イスラエルの政治には参加できないままだった。

1993年にホワイトハウスで調印されたパレスチナ・イスラエル原則宣言は、エルサレムが将来のパレスチナ国家の首都になると宣言しているにもかかわらず、東エルサレムのパレスチナ人が政治的孤児になる新たな現実を作り出した。彼らはイスラエル人ではなく、暫定首都ラマッラーのパレスチナ政府と連携することや政府から資金や協力を得ることもできない。

イスラエルとPLOの新たな関係は概ね一方的なものではあったが、東エルサレムを除く占領地のパレスチナ人がパスポートを得て、自分たちの身と権利を守るある種の政府を持つことを可能にした。一方、約35万人を数えるエルサレムのパレスチナ人は、いかなる形の代表制度も持つことができないままだ。

ラマッラーのパレスチナ指導部との関係を築こうとするいかなる試みにもイスラエルはあらゆる手段で対抗する。パレスチナ人が指名したエルサレム問題大臣は頻繁に逮捕され、エルサレムのパレスチナ人を代表するいかなる政治的行動も取らないよう警告を受ける。

選挙による代表プロセスの不在が問題をさらに深刻にしている。占領地で議会選挙を開催しようとした直近の試みは、エルサレム市民の参加(オスロ合意で合意された行為)をイスラエルが拒否したため、2021年4月に中止となった。

指導部のハシェミット王家がエルサレムのイスラム教とキリスト教の聖地を管理しているヨルダンは最近、この溝を埋めようとして、エルサレムのワクフ評議会に多数のエルサレム市民を指名した。しかし、同評議会の主な仕事はイスラム教の聖地を守ることであり、その任務以外の政治的問題に関わることに前向きではない。

ラマッラーのパレスチナ指導部との関係を築こうとするいかなる試みにもイスラエルはあらゆる手段で対抗する

ダオウド・クタブ

この困難な状況によって、パレスチナ人は自分たち自身で組織化して日常的な問題に対処することを余儀なくされた。問題の一部は内部で解決されてきたが、外部の関与を必要とするが公に対処することが難しい問題もある。

しかし、最近のキングフセイン橋の混雑問題には、エルサレム市民を含む多くの人が柔軟に考えることを迫られた。

7月27日、この記事の著者を含む176人の著名なパレスチナ人のエルサレム市民が、移動上の困難を緩和する方法に関するヨルダンのビッシャー・アル・カサウネ首相への書簡に署名する異例の行動を取った。ラマッラーにいるヨルダン代表に送られたこの書簡は、エルサレム市民が北部のシェイクフセイン橋を通行することを説明なしに禁止した決定を再検討するようヨルダンに求めるものだった。

シェイクフセイン橋は1994年のヨルダン・イスラエル平和条約後に開通し、外国人やイスラエル人だけでなくイスラエルの永住者すなわちエルサレムのパレスチナ人も通行を許されている。自動車でもそれ以外でも、この橋を通ってヨルダンに渡ることができる。しかし、数年前にヨルダンがエルサレム市民の橋の使用を禁止したため、彼らは費用の高いキングフセイン橋を使うかイスラエルロッド空港から飛行機で出国するかの難しい選択を迫られることになった。

この書簡はヨルダン政府に対して、シェイクフセイン橋をエルサレム市民に再び開放し、自動車で家族を連れてヨルダンに入国できるようにすることを求めている。そのような決定はヨルダンの観光にとって恩恵となり、南部の国境検問所はエルサレム市民の入国を許可し続けているのだから政治的コストもないだろう。

この書簡は、地域社会の宗教・社会・政治指導者らに支持された。ヨルダン政府がどう反応するかは分からないが、ここで重要なのは、エルサレムのパレスチナ人たちが、(占領者のイスラエルも後援者の米国も欧州の友好国も解決を急いでいないようである)パレスチナとイスラエルの紛争の解決を待つのではなく、自分たちの日常的な問題を解決するために行動に出ているということだ。

  • ダオウド・クタブ氏はエルサレム出身のパレスチナ人で、受賞歴のあるジャーナリストである。ツイッター:@daoudkuttab

 

 

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