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アル・ザワヒリ殺害によってタリバンの孤立は解消されるだろうか

アルカイダ指導者アイマン・アル・ザワヒリの殺害現場付近のタリバン戦闘員。2022年8月2日、アフガニスタンのカブールにて。(ロイター)
アルカイダ指導者アイマン・アル・ザワヒリの殺害現場付近のタリバン戦闘員。2022年8月2日、アフガニスタンのカブールにて。(ロイター)
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04 Aug 2022 02:08:52 GMT9

日曜のアルカイダ指導者アイマン・アル・ザワヒリの殺害により、国際社会がタリバンへの対応において直面する大きなジレンマが浮き彫りになった。執拗に国際法を無視する過激派集団の統治下にあるアフガニスタンの人々に人道支援を行うかどうかというジレンマだ。米国の発表によると、アル・ザワヒリ容疑者は殺害時、カブール中心部のタリバンの事務所や警備サンターからそう遠くない場所にいた。昨年8月に権力を掌握して以来、タリバンはアル・ザワヒリと同氏が率いるテロ組織アルカイダとの関係を断つよう繰り返し要請されてきた。同組織は今も盛んに戦闘員を集め、世界各地で勢力拡大を図っている。タリバンはダーイシュとの戦いには積極的に見えるが、アルカイダの排除についてはなんら努力しなかった。

アル・ザワヒリがカブールの市街地で暮らしていたという事実は、指導者の排除に続く組織解体と、アフガニスタンに潜伏していると思われる同組織メンバーの逮捕状を持ち得る他国との協力を求めるタリバンへの圧力を強めるものだ。タリバンは国際的な承認と組織および幹部に対する制裁の解除を求めているが、国際法を無視して有名なテロリストに隠れ場所を提供する限り、その望みは叶わないだろう。

タリバンはアルカイダとのつながりを維持してきただけでなく、女性の権利を守るという再三の約束も破っており、少数民族の保護や包括的政府の樹立のためにほとんど何もしてこなかった。

6月、国連人権高等弁務官事務所はアフガニスタンを訪問した後、女子の中等教育の禁止は110万人の少女たちに直接の影響を与え、「彼女たちから未来を奪っている」と述べた。3月以降に女性や少女の権利に影響を及ぼす他のいくつかの政令が成立しており、移動の自由や人道・保健サービスへのアクセス、女性だけの非政府組織などでの就労を含む就労機会がさらに制限されているとする国連は、この状況を “制度化された体系的女性弾圧 “と表現した。

人権を尊重するというタリバンの再三の公約に反して、意見や表現の自由、平和的な集会の権利、参政権に対してさらなる制限が課されてきた。国連は、人権侵害に直面するアフガニスタン人を支援する重要な国家機構であるアフガニスタン独立人権委員会をタリバンが解散させたことも報告している。

一部の国際監視員は、タリバンによる政権掌握以来、アフガニスタンの全般的な治安状況が改善したと指摘しているが、人権擁護者、女性の権利やマイノリティのための活動家といった市民社会の活動家らは、殺害、強制失踪、隔離拘禁、攻撃、嫌がらせ、脅迫、逮捕の対象になってきた。人権高等弁務官事務所によると、解放された人もいるが、自由を奪われ、愛する人々から離され、発言の権利を奪われたままの人もいるという。

タリバンの統治下で、人道的状況も悪化している。失業率が高まる中、全世帯の93%が深刻な食糧不安に直面しており、特に世帯主が女性の世帯、高齢者、障害者、子どもたちに悲惨な影響が及んでいる。また、医療を含む基本的なサービスへのアクセスも低下している。

世界保健機関(WHO)によると、5歳未満の子ども300万人以上を含む1,800万人以上が公共医療を必要としているという。

先月のアフガニスタン東部での大地震により、この災害による即時の影響への対処、保健や教育などの基本的サービスの提供を含む、同国の長期的な人道面・開発面のニーズへの対応の支援のために、世界各国との関与が必要であることが明確となった。昨年8月にタリバンがカブールを掌握して以来、同グループは世界の他の国々と有効な関係を築くことができておらず、まして政治的承認など得られていない。そうした失敗が、今回の地震への不十分な対応で浮き彫りとなった。

この失敗は主としてタリバンが自ら招いたもので、国際規範を尊重するという約束を反故にし、包括的政府の設立を怠り、内部関係者以外のアフガニスタン人と関わることを怠ったことが原因だ。

この地震とその余震により、1,000人以上が死亡し、数千人が負傷した。犠牲者には数百人の子どもたちも含まれている。被災地では数万人が家を失い、数百万人のアフガニスタン難民や国内避難民に加わることになった。

残念ながら、タリバンはアフガニスタンの人々のニーズより、統治に対する自らの偏狭な考えを優先し、国際社会やイスラム協力機構(OIC)の要請を無視している。OICはタリバンに穏健な考え方をするよう求め、昨年12月の外相会議でアフガニスタン情勢を主題とした。6月にOICは、国際イスラム法学アカデミー事務局長Koutoub Moustapha Sano博士が率いる宗教学者使節団をカブールに派遣した。使節団はタリバンやアフガニスタンの学者と面会した。

アフガニスタンの人道的・経済的状況は悪化しているものの、学者たちの会談は良い兆しだった。タリバンはまだ方針転換をしていないが、イスラム諸国の主流から外れたその誤った優先順位を変える政治的意志が彼らにあるならば、宗教指導者らがさらに関与することで突破口が開かれる可能性がある。
先週行われた米国とタリバンの代表の凍結された準備金についての話し合いによる、限定的な進展についても今後に期待が持てる。報道によれば、両者は外国にあるアフガニスタン中央銀行の資産のうち数十億ドルを信託基金に移すことに関して提案を交わした。まだ大きな意見の相違があるが、近い将来それが解決されれば、アフガニスタン国民を支援するためにかなりの資金が解放される可能性がある。同様に重要なことに、これによって中央銀行の業務が促進され、為替レートが支えられ、国内外への送金が容易になる可能性がある。

タリバンはまだ方針転換をしていないが、宗教指導者らがさらに関与することで突破口が開かれる可能性がある。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

また、今週リヤドで開催された湾岸協力理事会援助調整委員会(GCC Aid Coordination Committee)と国際パートナーとの会合も、今後に期待できる内容だった。この会合では、タリバンの政策に大きな変化がなければ、現体制に直接または暗黙の政治的承認を与えることなくアフガニスタンの人々を支援する一連のメカニズムについて合意がなされた。

このようにアフガニスタンへの対応について楽観できるかすかな兆しが見えてきているため、アル・ザワヒリの排除によって、国際社会が政治的承認を検討するための重要な前提条件となるアルカイダとの関係断絶について、タリバンがより柔軟な姿勢を見せるかもしれない。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士は湾岸協力会理事会(GCC)政治問題・交渉担当事務局長補で、アラブニュースのコラムニスト。本記事で表明された見解は個人的なものであり、必ずしも湾岸協力理事会の見解を代表するものではない。ツイッター: @abuhamad1  
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