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ロシアの極東への注力は中国との友好的な関係を浮き彫りにしている

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04 Sep 2022 11:09:29 GMT9
04 Sep 2022 11:09:29 GMT9

世界の関心の多くは依然としてウクライナに集まっているが、ロシアの国際的な地位を回復させるというウラジミール・プーチン大統領の野望は、ヨーロッパを越えてはるか遠くに広がっている。

例えば、モスクワは資源が豊富なアフリカで、かつて旧ソ連が持っていた影響力を取り戻そうとしている。一方、アメリカ大陸では先月、世界最大の石油埋蔵量が確認されているベネズエラで軍事演習に参加した。

さらに、極東ロシアやアジア太平洋地域でもプーチンの権力欲が見られる。例えば、日本最北端の主要な島である北海道の沖にあり、紛争の対象となっている島で、歴代の首相と会談し、共同経済活動を推進しようとしたこともその1つである。

今月、ロシアは地政学的にも経済的にも、この極東地域への注力をさらに強めることになる。9月1日、モスクワは同地域と日本海で数日間の軍事演習を開始した。中国の大規模な部隊を含む5万人以上の軍隊、140機以上の航空機、60隻以上の軍艦も参加し、「海上通信や海洋経済活動地域を防衛し、沿岸部の地上部隊への支援を行うための共同行動を演習」する。

この演習の意図は、ロシアの軍隊がウクライナで軍事行動に携わっているときでさえ、モスクワには大規模な訓練を行うのに十分な軍事力があることの誇示である。

この演習は、北京とモスクワが近年主催する一連の共同軍事訓練の最新のものであり、海軍演習や、日本海と東シナ海での長距離爆撃機によるパトロールなどが含まれている。昨年は、ロシア軍が初めて合同演習のため中国領土に派遣された。

経済面では、9月5日から8日にかけて、ウラジオストクでモスクワが主催する「東方経済フォーラム」が開かれ、プーチンが基調講演を行う予定である。このイベントの目的は、極東ロシアの経済発展を支援すること、および、中国、ユーラシア経済連合、上海協力協定、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5大新興国をまとめて付けられた名称)、アジア太平洋経済協力フォーラム、東南アジア諸国連合(ASEAN)など、アジア太平洋地域との国際協力を拡大することである。

このイベントは、今週、60カ国以上からゲストを迎える予定である。昨年のフォーラムでは、総額約3兆6千億ルーブル(600億ドル)の協定が締結された。

このようなさまざまな経済・政治フォーラムに共通するテーマの1つが、プーチンと北京の習近平の下でますます強化されている、ロシアと中国の間の友好関係である。この2人はそれぞれ、相手を世界政治における最も親密な同盟者とみなしている。

ロシアと中国の国益は決して一致するものではないが、両国は米国との間で続く関係の冷え込みをヘッジするために協力し合う可能性が高い。

アンドリュー・ハモンド

この関係の安全保障面は広く解説されているが、広範な経済対話についてはあまり理解されていない。

この2国間には、数多くの共同プロジェクトが存在する。例えば、銀行間送金の新しい方法や、金融・経済インフラを共有化し、両国が欧米の支配する金融機関から独立して機能できるようにすることを目指す、共同信用機関などである。

また、中国とロシアは、他国と共に、BRICS諸国のインフラやその他のプロジェクトに融資する新開発銀行など、世界銀行や国際通貨基金に代わるフォーラムの創設にも関与している。

さらにエネルギー分野でも、両国は、東シベリアから中国東北部までの約2,000マイルのガスパイプライン建設を含む、4,000億ドルの天然ガス供給契約に調印した。また、西シベリアから中国新疆ウイグル自治区までつなぐ、2本目の大規模なガスパイプラインの建設にも合意している。

二国間の経済協力が強化されたことで、ウクライナや台湾など、主要な地域問題や世界的問題についても、両国は共通の立場の強化に務めることができるようになった。例えば、中国はウクライナにおけるロシアの行動をあからさまに批判しようとせず、代わりに米国とNATOがモスクワを刺激していると非難している。

ロシアも、最近のナンシー・ペロシ米国下院議長の台湾訪問を受け米国との緊張が高まる中、中国を支持した。プーチンは、米国のウクライナ支援とペロシ氏の台湾訪問の間の共通点を指摘し、どちらも世界の不安定化を煽る企みの一環であると示唆している。

モスクワと北京は過去に軍事同盟を構築する可能性を否定しているが、プーチンは、その可能性を排除することはできないと述べている。プーチンは、ロシアが機密性の高い軍事技術を中国と共有し、同国の防衛能力を大幅に強化してきたと指摘する。

さらに、モスクワと北京が共に西側との緊張の高まりに直面する中、プーチンと習近平は、かつてはライバルだった共産主義国同士の「戦略的パートナーシップ」を発表している。

ロシアと中国の国益は決して一致するものではないが、両国の首脳は二国間のさらなる利益だけでなく、米国との間で続く関係の冷え込みをヘッジするためにも、緊密な協力を続ける可能性が非常に高い。

そして、このことは両者の間で拡大している経済的・政治的対話に裏打ちされている一方で、両者の個人的な親密さが活気を取り戻した関係性の原動力となっており、この友好的な関係は2020年代にさらに強化され、もし両者が政権を維持すれば2030年代まで続く可能性があるように見える。

  • アンドリュー・ハモンド氏はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイトである。

 

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