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新型コロナでの世界的失敗から学ぶことができるだろうか

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21 Sep 2022 03:09:36 GMT9
21 Sep 2022 03:09:36 GMT9

先週のニュースに紛れて、特別な発表があった。この発表がトップ記事として扱われることは、もしあったとしても、かなり少なかった。しかし、それは大半の人々の生活に過去32か月間にわたって影響を及ぼした非常に重大な問題に関するものだった。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長が「(新型コロナウイルスの)パンデミックの終息に今までになく近づいている。まだ終結に至ってはいないが、終わりが見えてきた」と発表した。どうやら、世界各地の新型コロナウイルス感染症による死者は、パンデミックが公式に宣言された2020年3月以来最も少ない水準となっているようだ。新型コロナウイルス感染症が致死的な病気からコントロールできる病気に変わる時が来たのだろうか。

すぐさま当然の警告が続いた。このパンデミックは何もかもが容易にはいかない。最後が最も困難な可能性があり、最も労力を要し、警戒が不可欠だ。まだ新たな感染増加の波や、新たな変異株が発生する可能性がある。これから北半球が冬に入れば、感染者が増えるかもしれない。

パンデミックの末期は長く、なかなか終わらない傾向がある。ウクライナ侵略や物価上昇といった他の問題に注意が逸れるこの時期にそれが重なった。HIV/エイズのパンデミックは終わったと宣言されたかもしれないが、現在も死者が出ている。2021年末の時点でHIV感染者は約4000万人にのぼる。

WHOは各国政府向けに6つのポリシーブリーフ(政策提言)を提示した。この3年間で学んだことの多くを要約したものだ。そこで疑問が生じるが、一体どこの政府の長がそれを読むのだろう。それに応じてどんな対策が講じられるだろう。

なぜこの件はもっと大きなニュースにならないのだろう。何しろこのパンデミックはあらゆる国を襲ったのだ。累計感染者は6億人以上にのぼり、650万人以上が命を落とした。しかし、これらは公表されている数に過ぎない。多くの国の統計は当てにならないのだ。その上、多くの国が随分以前に検査をやめてしまっている。

現在の経済危機の一因であり、何兆ドルもの損失があったが、損失の全容がいつ分かるかは不明であり、分からないままかもしれない。あらゆる緊急対策や、国境封鎖、移動やその他の活動の制限についてよく考えてみてほしい。多くの人はこの3年間を決して忘れはしないだろう。

反応が乏しい理由はおそらく、パンデミックは終わっていなくとも、多くの人々にとっては既に終わっているからだ。多くの人、特により裕福な国々の人々は、パンデミックにうんざりしており、通常の、規制のない生活に戻っていて、もうその話は聞きたくないのだ。大多数の人々はワクチンが守ってくれる、科学がいつも解決策をもたらす、と信じている。他の人々はより運命論的な姿勢をとっており、ただ普通に暮らし、もし感染したらそれはそれでいいと思っている。そして陰謀論者もいる。その中には、新型コロナウイルス感染症が実在さえしていないという人々もおり、彼らは明らかに興味を持っていない。

今こそ、世界がどのようにパンデミックに対処してきたかを振り返る時だ。有名な医学雑誌『ランセット』は今月、同誌が2020年7月に設立した委員会による調査結果を公開した。それはWHOの緩慢な対応を含む新型コロナウイルス感染症への対応を酷評するものだった。政府間の協調はあまりに乏しかった。規制の導入は遅すぎた。指導的立場の政治家たちはこの文書に書かれていることについてもよくよく考えるべきだ。

最初から、あまりに多くの人々がこの病気を甘く見ており、多くの関係者は責任ある行動をとらなかった。

クリス・ドイル

最初から、あまりに多くの人々がこの病気を甘く見ており、多くの関係者は責任ある行動をとらなかった。中国は新型コロナの原因ウイルスの発生源についてより多くの情報を公開することを拒否し、当然ながら批判を浴びた。2020年1月には多くの国々の対応が遅れた。富裕国に感染が広がった時にしか国際的問題とならなかった。あまりに多くの保健機関がこのウイルスが空気感染することを認めようとしなかった。あまりに多くの人々がアジア以外には広がらないと考えていた。多くの人々はウイルスが変異するとは考えず、各国政府の対応は遅かった。

パンデミックを振り返る時、新型コロナウイルス感染症はこれから起こることの一部に過ぎないかもしれないということにも、誰もが留意すべきだ。グローバル化した21世紀の世界において、このような感染症は瞬く間に広まる。我々は何かを学んだだろうか。

パンデミックによって浮き彫りになったのは、世界全体における平等の慢性的欠如だ。富裕国には対処するためのリソースがあった。しかし、こういった富裕国の政府でさえも、十分な防護具の製造や調達に苦労した。ワクチンに関する不平等はひどいものだった。知的財産権のシステムが大きな障壁となっている。現在でもアフリカ大陸は、ワクチン接種完了者61.9%という世界平均に大きく後れをとっている。多くの富裕国はワクチンを貧しい国々に分配することより自国に貯めこむことを優先した。

この状況は変わるのだろうか。多くの人々は懐疑的なままだ。過去のパンデミックでは、こういった不平等への対応が講じられることはなかった。

ワクチン接種への躊躇はいまだに残っている。非常に迅速なワクチン開発および展開という驚くべき科学の成功があったにもかかわらず、多くの人がいまだ懐疑的だ。こういった疑念は、安易に退けるべきでないものもあり、この種の躊躇はフランスなどの国で顕著だ。その他の陰謀論者(例えば、ビル・ゲイツが世界中の人々にマイクロチップを埋め込むためにワクチンを利用したなどと考える人々)のような人々の疑念は相応の軽蔑を持って退けられるべきだ。この課題に世界の当局はどのように取り組み、より確かな信頼を醸成するだろうか。

原因の一部は、科学的専門知識を無視し、さらには侮辱する風潮がどんどん広がっていることにある。WHOはこれを「インフォデミック」と称した。この責任の一端は政府にある。北朝鮮は今年5月まで新型コロナウイルスの感染者はいないと主張していた。ソーシャルメディアはパンデミック対策の邪魔をする作り話と嘘の有害な促進剤となっている。関連機関と各国政府はその対策をする必要がある。

もう一つの懸念される点は、多くの人々が規制は課されるべきでなかったと感じていることだ。このパンデミックの帰結は、いつでも経済が最優先で、公衆衛生は後回しだというものになるのだろうか。リズ・トラス氏は、新たな英国首相となることにつながった選挙運動の中で、再びロックダウンを課すことはないと公約した。しかし、将来において公衆衛生のためにロックダウンが必要となるか否かは誰にも分からない。それを排除するのは愚行である。

万全の準備と協力が鍵となる。早期警戒体制を改善し、監視を強化しなくてはならない。検査を続け、ワクチン接種率を向上させるべきだ。医療機関などはバイオセーフティー(生物学的安全性)を改善しなくてはならない。建物内の換気と空気清浄に努めなくてはならない。

率直に言えば、世界は失敗した。準備ができていなかった。学びを得られなかった。過去にWHOがパンデミックへの備えを呼びかけたにもかかわらず、準備がなされなかった。今回1つのパンデミックが発生したが、これから数多く発生するかもしれない。今からでも、全ての人がWHOの声明の最後の部分に注意を払うべきだ。最後の1ヤードが最も難しいのだ。

  • クリス・ドイル氏はロンドンに拠点を置くアラブ・英国理解協議会のディレクター。ツイッター:@Doylech
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