Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

メイド・イン・テヘラン:麻薬・ミサイル・殺人ドローン

軍事演習で発射されるドローン。イランの非公開の場所。(WANA、ロイター経由/ファイル写真)
軍事演習で発射されるドローン。イランの非公開の場所。(WANA、ロイター経由/ファイル写真)
Short Url:
24 Oct 2022 08:10:31 GMT9
24 Oct 2022 08:10:31 GMT9

怒りに満ちたデモやゼネストが6週目に入り勢いを増し続ける中、イランは我々の目前で崩壊しつつあるのかもしれない。しかし、一部の経済部門は黄金時代を謳歌している。覚醒剤、武装ドローン、その他のありとあらゆる殺人的禁制品を輸出している者たちはかつてないほど儲けているのだ。

多くの者にとって警鐘となったのは、ウクライナ全土の民間人に死の雨を降らせたカミカゼドローンが実はイランから輸入されたものであることだ。そのうえ、情報専門家が確証したところによると、イランの軍人がクリミア入りしてこれらの殺戮機械の操縦に直接関与し、イランの軍事機器の将来的な進歩のための参考としていたという。ウクライナのエネルギーインフラに対する破壊的な攻撃を受け、寒い冬を前にして新たに多くの難民が欧州に避難した。

イランは国連安全保障理事会決議に反して既にドローン1750機をロシアに供与している。また、地対地ミサイル数百発の輸出にも同意しており、こうした比較的コストの低い兵器がウクライナ戦争の形勢を大きく変えるのではないかとの懸念が広がっている。イラン当局が誇るところによると、ウクライナでの虐殺が絶好の宣伝となってさらに22ヶ国が兵器購入に関心を示している。

イランのドローンやミサイルはサウジアラビアやUAEへの攻撃にも使用されている。また、レバノンのヒズボラは、自分たちが望むものを得られなければイスラエルの海洋採掘施設をドローン攻撃すると脅していた。先週には、イランが支援するフーシ派がイエメンの石油ターミナルで国際海運を標的としたドローン攻撃を行った。地域で最大かつ最も高度なイランのミサイル計画は、今や数千の弾頭と射程2000kmのミサイルを擁する。

麻薬に関しては、メタンフェタミン取引におけるイランの役割が増大したことの壊滅的な帰結がワシントン・ポスト紙の調査で明らかとなった。2017年の時点で、メタンフェタミン生産における技術革新(中央アジア固有の植物から主要成分を調達するなど)により、この薬物はずっと安価に合成できるようになっており、イランが世界における生産の中心地となっているのだ。

トルコ当局による報告は、越境密輸ネットワークがイラン人によって支配されている実態や、過去1年で押収量が2倍近く増加したことを示している。一方、ヨルダン麻薬取締局の報告では、今年のメタンフェタミン押収量(45トン以上)が既に20倍の増加となっている。

イラクの事態は比較にならないほど悪い。バスラが地域における麻薬取引の一大拠点となっており、政府とのつながりを持ちイランに支援された強力な民兵組織が取引を支配しているのだ。この民兵組織「​ハシュド・アル・シャアビ」は、アフガニスタンから調達したヘロインなどの禁制品の大量輸送を独占することで大儲けしている。

ソーシャルワーカーや医療関係者は、このような事態がイラク社会に与えている壊滅的な影響を証言している。高い失業率、政治の混乱、社会的セーフティーネットの欠如が、希望を持てない世代が薬物に溺れるための最適な条件を作り出しているのだ。最近までイラクにおける麻薬中毒は無視できるほどの水準だったにもかかわらずである。

イラン自体にも壊滅的な結果がもたらされている。(恐らくはかなり不正確な)イランの公式統計によると、国内には約440万人の薬物使用者や中毒者がおり、少なくとも年間5000人が薬物が原因で死亡している。

欧米諸国は、イランによる数十億ドル規模の麻薬や兵器の輸出について、遠くの国を不安定にする遠い問題だと見なしているようだが、莫大な収入を生み出すこれらの活動によってイランは世界的脅威へと変貌を遂げつつあるのだ。

バリア・アラマディン

イランの監督下にある他の2つの国、シリアとレバノンにおいては、合法的な経済は崩壊しており、非常に中毒性の高い薬物「カプタゴン」の大量生産が組み込まれた数十億ドル規模の麻薬経済に取って代わられようとしている。カプタゴン数億錠が南欧やアラブ世界各地の港を通して密輸されているのだ。

今年、カプタゴン80万錠(9400万ドル相当)をラタキアからマレーシアに密輸しようとした罪に問われている「カプタゴン王」ムハマド・ダコウ氏に対する判決を無期限停止にするよう、レバノンの司法制度に対し強力な既得権益層が圧力をかけた。ダコウ氏は、レバノンとシリアの国境にある広大な生産施設を支配している。同氏の妻のサハル・モフセン氏は、ヒズボラの治安部門トップでレバノン内外の兵器や薬物の移動を管理しているワフィク・サファ氏の近親者である。マレーシアの薬物取引のインボイスの写真がダコウ氏の携帯電話の中から発見されたにもかかわらず、同氏は釈放された。

ヒズボラは、レバノン・シリア国境の無法地帯の土地を支配するため、忠誠が保証されている新しい住民をバスで送り込む人口工的学政策を監督してきた。2021年末には、ダコウ氏とつながりのある準軍事部隊が国境のトゥファイル村において、地元住民を脅して退去させるために8時間にわたって武力攻撃を行った。

ヒズボラはコカイン取引にも大きな利害関係を持っている。その取引は、南米から西アフリカにまで広がるレバノン人移住者コミュニティが、レバノンや地域の金融機関ネットワークを通して促進している。

その利益は密かに準軍事活動やテロ活動に還元されており、イランが地域における傑出した立場を強化することを可能にしている。同様に、国際的な石油制裁は、イスラム革命防衛隊が石油輸出産業の大部分に取って代わることを促した。数十億ドルの収入が戦争遂行や不安定化の資金に注がれるとともに、腐敗した指導者たちや革命防衛隊将校たちの懐に入っているということだ。

欧米諸国は、イランによる数十億ドル規模の麻薬や兵器の輸出について、遠くの国を不安定にする遠い問題だと見なしているようだが、莫大な収入を生み出すこれらの活動によってイランは世界的脅威へと変貌を遂げつつあるのだ。

人々は、ウラン濃縮を加速させるための多額の資金がどこから来ていると思っているのだろうか。数十年にわたって制裁に包囲されている国がどのようにして地域で最大かつ最も高度なミサイル装備を保有し、準軍事的な傀儡組織に惜しげもなく分配するようになったのだろうか。通常兵器と非通常兵器の両方を攻撃から守るための地下の広大な強化掩蔽壕やトンネルを建設する資金はどこから来たのか。そして、地域全体の何十万人ものホメイニ主義民兵の給与や装備は究極的には誰が負担しているのか。

これはイランに近接する国々だけではなく地球全体にとっての脅威だ。北朝鮮100個分の殲滅能力を持ったテロ国家と近い将来に戦いたいとは誰も思わないだろう。

これもまた、世界のリーダーシップの失敗例である。世界の指導者たちは、イランから溢れ出す薬物、兵器、核技術、テロの流れがもたらす有害な結果を真剣に受け止めることを怠っているのだ。彼らは本当にこの脅威に気づいていないのか、それとも単に行動を起こすためのビジョンや決意を欠いているのだろうか。

  • バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東およびイギリスのニュースキャスターである。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。
topics
特に人気
オススメ

return to top