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西側はイランの脅威に目覚めつつあるが、では、どう行動するのか?

IIISが主催する第18回マナーマ対話で演説するウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長。2022年11月18日(File/AFP)
IIISが主催する第18回マナーマ対話で演説するウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長。2022年11月18日(File/AFP)
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23 Nov 2022 11:11:47 GMT9
23 Nov 2022 11:11:47 GMT9

先週のマナーマ対話の席で、私はイランに由来する地政学的脅威に関するいくつかの非常に緊迫感のある西側高官の発言に驚かされた。

ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長のコメントは、詳細な引用に値する。「数年来、複数のアラビア湾岸諸国が、イランが世界のならず者国家にドローンを供給するリスクについて警告してきました。我々が次のような非常に単純な事実を理解するのに、あまりに長い時間がかかりました。すなわち、イランが核兵器を開発することを阻止しようと努力すると同時に、我々はドローンから弾道ミサイルまで、他の形の兵器の拡散にも注意を向けなければならないという事実をです。これは中東地域のみならず、我々全員にとっての安全保障上のリスクなのです」

これらの注目すべき発言は、西側諸国が組織的にイランの弾道ミサイルやドローン計画および中東全域でイランが支援する民兵組織がもたらす脅威に関する警告を無視してきたことを暗に認めるものだ。

ここ数週間で起きた変化と言えば、イラン製ドローンとミサイルがヨーロッパの国であるウクライナで発電施設や民間のインフラ設備を壊滅させるために用いられたということだ。多くの犠牲者を出しただけでなく、イランの兵器開発計画の直接の帰結として、数千万人が暖房も電気もなしに冬を越すことになるだろう。

アメリカのコリン・カール防衛担当国務次官はバーレーンの聴衆に対し、イランの核活動は今や「これまでになく進んでいる」と述べた。イラン政府は武器の備蓄を増やし、「多年にわたる制裁にもかかわらず」、それらをイランの代理を務める組織に供給している。イラン製ドローンとミサイルはアラビア湾での船舶輸送の攻撃に用いられ、ここ数日ではオマーン湾のオイルタンカーにミサイル攻撃が行われた。

アラビア半島全域で、イラン製ミサイルによる経済的に重要な非軍事施設を標的とした攻撃が行われてきた。イラン製の武器とイランの民兵組織が、数万の罪のないイエメン人やシリア人を殺害してきた。

フォン・デア・ライエン氏は、イランとロシアが共同で世界秩序のルールを無効化しようとしていると警告し、次のように付け加えた。「誰も問題にしなければ、どこでこの事態は終わるのでしょうか。歴史は、このような事態が終わりのない戦争を招くと示しています。軍拡競争と大量破壊兵器の拡散を招くのです」

私たちには西側諸国がイラン政権に立ち向かうための現実的戦略を持っているか否かを知る権利がある

バリア・アラマディン

イランの有するドローンと弾道ミサイル、巡航ミサイル計画は中東地域において、群を抜いて最大の規模である。専門家が懸念するのは、ウクライナで市民に対して怒りに任せて用いられているこれらの兵器を見ることでイランが得た教訓が、その精度と破壊力の増強につながるのではないかということだ。

バーレーンでは、アメリカ国家安全保障会議の職員、ブレット・マクガーク氏がここ数週間の「世界のイランに対する見方の大転換」について述べた。「イランが供給する武器が地域全体を脅かしている」とイギリスのジェームズ・クレバリー外務大臣は、あたかも英国政府がつい最近発見した秘密を明かすかのように、マナーマ対話で語った。クレバリー氏は続けて、「イランの政権はロシアにウクライナで市民を殺害するための武装ドローンを売るという手段に出た」とも述べた。自明の事柄を述べるという点では、満点の発言である。しかし、その結果テヘランの神権体制には何が起きるというのだろうか。批判のための批判は抜きにして、私たちには西側諸国がイラン政権に立ち向かうための現実的戦略を持っているか否かを知る権利がある。

フィンランドとドイツの外務大臣を含む、ヨーロッパ諸国の高官に、デモ参加者に対する暴力的鎮圧に関与したイラン当局者への最近の制裁以外に、具体的にどのような方策が取られうるかについて私が投げかけた質問への反応は、明らかに曖昧なものだった。ドイツ外相は制裁強化について語ったが、イランは敵対と孤立をむしろ糧としてきた国なのだ。合法的な石油部門への制裁によって、イスラム革命防衛隊のような組織が石油、ドラッグ、武器、その他ありとあらゆる物品の密輸を独占し、その結果体制はさらに富むことになった。

イランの武器輸出は国際的な制裁違反であり、したがって国際社会はこのような武器の輸送を阻止するために行動を起こす義務がある。イラン・ロシア間の非民間機の飛行を制限する、両国を戦争犯罪で起訴するなどの見込みある方策を取ることができるだろう。ヨーロッパ諸国はさらに進んで、イランとの外交関係を格下げまたは断絶する、あるいは飛行機の往来や商業活動を停止することも可能である。

あらゆる予想に反して、2か月以上にわたってイラン全土で抗議デモが続いている。騒乱はむしろ激しさを増し、固定化しつつある。数百人が殺害され、少なくとも内58人は子供である。

およそ1万5,000人が逮捕され、その幾人かにはすでに死刑が宣告された。しかし、勇気あるデモ参加者たちを止めることはほとんどできず、彼らは体制転覆を見るまで譲歩しないだろう。アフマド・ハータミー師のような強硬派は死刑宣告を広く用いるよう奨励し、「これらの犯罪者に対して」法的措置を取るよう求めている。

イラン南西部の町イゼで起きた銃撃事件の後、ダーイシュの関与を示唆する偽の声明が出回った。おそらくは、デモ参加者を貶め、彼らをテロリストや過激派として描こうとする政権による計算された試みの一環だろうと考えられる。クルド人地域でも、抗議デモ参加者の名誉を傷つけようとする類似の努力が行われている。だが実際には、テロリストや過激派は国の運営を任されている人々の方なのだ。

私は、数人の西側高官に国際社会がデモ参加者の支援のためにさらに努力しない理由を尋ねてみた。多くの場合、反応はもしそうすれば、イラン政府の騒乱は外国勢力が支援しているという主張を裏付けることになるというものだった。しかし、イラン政府はどちらにしても常にそう主張し続けているのであり、そうしたところで何の違いがあるというのだろうか。

今や西側政府関係者がイランのもたらす脅威を認識し始めている以上、彼らの設定する目標は単なる振る舞いの変容にとどまるべきではない。20年間にわたり、イランの軍事核プログラムを阻止するための共同の外交努力が行われてきたが、それで何が達成されただろうか。宗教指導者による体制は、原子爆弾の製造に間近に迫っており、交渉は頓挫し、国際原子力機関との協力も実質的に停止しているのだ。

大きな問題は、西側諸国がマナーマでこれ見よがしに行っているあらゆる大仰な「パートナーシップ」に関する誓約にもかかわらず、繰り返される約束の破棄がアラビア湾岸諸国からの信頼を大きく傷つけてきたという点だ。言葉ではなく行動だけが、この状況を変えることができる。そのような目に見える行動の例として、マナーマでアメリカ中央軍司令官、マイケル・クリラ大将によって議論された構想がある。クリラ司令官は敵のドローンを標的とする試験的プログラムに加えて、100隻以上の無人船舶から成る艦隊を展開させて海域をパトロールする計画に言及した。

西側諸国は、イランの政権にはアフリカとアジア全域の過激派や反乱軍、のけ者扱いを受けている体制に武器を輸出してきた過去があるにもかかわらず、テヘランがロシアにドローンやミサイルを売るのを止めると本当に信じているのだろうか。同様に、イランの軍事部門がロシアその他の顧客からの思いがけない大金を手にして、これをどう投資するのかは想像もできない。

西側諸国は、この犯罪的なテロリスト政権を転覆するという目的に向けて、最大限努力しなければならない。この残忍な神政主義者たちが権力の座にある限り、中東と世界、そしてイラン国民自身に安定は訪れないだろう。

西側高官たちがこの現実を認め始めたことは、心強い兆候である。空虚な言辞はもうたくさんだ。彼らはこの問題について、どのような行動に出るのだろうか。

  • バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東およびイギリスのニュースキャスターである。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

 

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