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中東地域での野望を達成するためイラクを食い物にするイラン

民兵組織カターイブ・ヒズボラに所属するイラクのシーア派兵士たちが、バグダッドの軍事パレードで行進している。(AFP通信)
民兵組織カターイブ・ヒズボラに所属するイラクのシーア派兵士たちが、バグダッドの軍事パレードで行進している。(AFP通信)
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24 Jan 2020 04:01:24 GMT9
24 Jan 2020 04:01:24 GMT9

イラク国内のイラン勢力が強まっている。イラン政権は、イラクというアラブ国家を代理戦争の地として積極的に利用し、革命的な理想と支配的な野望を叶えようとしている。ごく最近の出来事では、今月イランの指導者たちはイラク政府の主権を侵して、米軍が駐在するイラクの空軍基地にミサイルを発射した

イランが掲げる革命的な行動指針のひとつとして、代理軍隊を配備し中東におけるライバルの影響力を弱めることが挙げられる。イランはこのような非対称戦争の能力に長け、イラクのみならず、レバノン、イエメン、シリアなどの国々でも同様の行為に及んでいる。たとえば、イランはこれまで繰り返しフーシを雇い、サウジアラビアを攻撃してきた。

イラクでは、イランが支援するシーア派民兵組織「カターイブ・ヒズボラ」がイラン政権の利益のために働いている。カターイブ・ヒズボラは米国からテロリスト組織に指定されており、先月終わりにはカチューシャ・ロケット砲弾を4発打ち上げ、イラクの首都バグダッド近郊にある米軍基地を爆撃した。また、年越しの際にバグダッドの米国大使館を攻撃した抗議者の多くも、同組織の者だったと報告されている。

カターイブ・ヒズボラは、イラン系イラク市民のアブー・マフディー・アル=ムハンディスによって創設された。ムハンディスは、イランの国境警備を行うイスラム革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」にとっても近しい助言者だった。報告によると、コッズ部隊とレバノンの代理部隊「ヒズボラ」が、カターイブ・ヒズボラのようなイラクの民兵組織を訓練しているらしい。さらに、「アサイブ・アフル・アル=ハク」や「カターイブ・アル・イマーム・アリ」などのイラク人テロリスト集団もコッズ部隊から派生している。

イラン・イスラム共和国は、ムッラー(イスラム学者)最大の味方であるバッシャール・アサドを支援するため、このような民兵組織を利用してシリアで戦わせてきた。またイラクの領土を活用し、特に民兵の助力を得てシリアへ武器を輸送していたという報告もある。

バグダッドにおけるイランの影響力は軍事だけにとどまらず、安全保障や政治にまで浸透し拡大している。

マジッド・ラフィザデ博士

イランが支援するイラクの民兵組織は、「世界一のテロ支援国家」という強力な味方をつけているがゆえに、今日まで生き延びてきた。イラクでの民兵組織設立を支援した後、イラン政権は「人民動員隊(PMF)」のスポンサーとなった。PMFは民兵組織の複合体で、カターイブ・ヒズボラもそこに所属している。イラクの民兵組織をひとつの旗の下で動かそうと決断したイランの思惑のひとつとして、以下が挙げられる。イラク政府がすべての民兵組織を同一の合法的集団として承認し、国家機構に結合してしまえば、彼らに賃金と弾薬を供給せざるを得ない。このような圧力をかけることで、イランは財政的負担をイラクの納税者に押し付けたのである。

イラン政権の足跡をたどることで、テヘランのイラク民兵組織もまた宗教を悪用し、派閥抗争を利用して権力を手に入れ、さらにはイランの偏狭な宗教・政治的野望を推し進める術を身につけた。また民兵組織は、市民を脅かすさまざまな犯罪行為に携わり紛争の種を増やしていることでも悪名高い。たとえば、即決の処刑、失踪事件への関与、拷問、無差別攻撃、戦闘から撤退する人々の行動を不当に制限するといった事例が挙げられる。

バグダッドにおけるイランの影響力は軍事だけにとどまらず、安全保障や政治にまで浸透し拡大している。イランのイラクに対する多大な影響力は、両国間の社会的、経済的、宗教的結びつきが原因ともいえる。たとえば経済的視点で見ると、バグダッドの全輸入品の25%近くがイラン製品で、イランはイラクへの輸出で莫大な利益を得ている。

宗教的視点で見ると、支配層のムッラーたちは毎年何千人ものイラン人宗教者、学者、学生をナジャフやカルバラーなどイラクの都市へ送り込んでいる。イスラム共和国に賛同する世論を形成するにあたり、彼らが多大な影響力を及ぼしているのだ。もちろん言うまでもないが、イラクのシーア派指導者やシーア派政党の一部は、かつてイラン・イスラム共和国に本拠地を置き、そこで育成されている。

しかも、イラクが内紛で分断され混乱状態が続き、シーア派政党がイラク政府を掌握している限り、イランはイラク国内で最も影響力の強い外国軍隊でいられるという事実を指導者たちは知っている。だからこそ、イラン政権は民兵組織の武器と弾薬を切らさないようにありとあらゆる手段を講じるのだ。イランは再三にわたり、違法な武器と技術をイラクへ密輸している。

さらに広く見れば、イランが支援するイラクの民兵組織による暴力行為から、中東全域に広がる代理軍隊の戦術や長期的な戦略の実態が明らかになるはずだ。イランが訓練・武装させた代理軍隊は皆、混乱・紛争・暗殺というイラン政権を支える大黒柱と、スンニ派や西側が発するあらゆる解決策の拒絶の上に成り立っているのだ。

結論として、イランは今後もイラクにおける最も影響力の強い外国軍隊であり続けるだろう。そして占領軍のようにふるまい、イラクを代理戦争の地として利用し、偏狭な野望の達成を目指している。

マジッド・ラフィザデ博士は、イラン系アメリカ人の政治学者。イラン・アメリカの外交政策に関する第一人者で、実業家でもあり、「International American Council」の議長も務めている。Twitter@Dr_Rafizadeh

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