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不名誉な体制:少女に毒物、デモ参加者を強姦、武器を密輸

イギリス海軍がインド沿岸のボートから押収したイラン製兵器。(AFP)
イギリス海軍がインド沿岸のボートから押収したイラン製兵器。(AFP)
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06 Mar 2023 11:03:01 GMT9
06 Mar 2023 11:03:01 GMT9

混乱し弱体化したイラン体制が攻撃に出る中、その標的になっているのは少女や女性たちだ。主に聖都コムやその周辺にある60校もの女子校が毒ガスによって攻撃され、数百人の女子生徒が病院での治療を余儀なくされた。コムとボルジェルドだけで1200人が被害を受けた。

これらの攻撃の規模と大きさから、これが組織的な作戦であることが分かるが、イラン指導部は攻撃に関与した者を捕まえることよりも、攻撃を軽視し国外の「敵」を非難することに専心している。イブラヒム・ライシ大統領は、名指しはしないものの外国がイランに対して「ハイブリッド戦争」をしかけていると無闇に糾弾した。また同じスピーチの中で、イラン政府が経済や通貨の崩壊に対処できないのは自国以外の世界のせいだという被害妄想的な主張を行った。

彼は誰を騙そうとしているのだろうか。ユネス・パナヒ副保健相とマジッド・ミラフマディ副内相は既に、これらの攻撃の背後にいる者は女子生徒が学校に行くことを阻止しようとしていると認めている。コムで11歳の女子児童ファテメ・レザエイさんが亡くなった後、地元検察は遺族に対し、メディアに話さずに黙って埋葬するよう指示した。自分の娘が毒による攻撃を受けたと抗議する親たちを警察が打ちのめしている様子を撮影した動画が拡散した。デモ隊は教育省の外で、「バスィージ!防衛隊!お前らはイランのダーイシュだ!」と叫んだ。

マフサ・アミニさん(22)殺害を受けた体制への反乱の中心にいたのが女子教育施設だったのはもちろん偶然ではない。このデモで女子生徒たちは自分のヒジャブを燃やし、独裁の終結を求めた。広く信じられているところでは、親体制の強硬派が現在狙っていることは、女子生徒たちを威嚇して教育からドロップアウトさせること、学校を閉鎖に追い込むこと、政治活動への関与の代償を見せつけることだ。女性が教育を受けることに対するこのような恐怖は、タリバンやボコ・ハラムと全く同じ逆行的なメンタリティーの証拠だ。

それでも、イランの勇敢な女性たちは脅しに屈することを拒否している。女性が宗教警察を公然と無視してヒジャブを着けずに人前に出ることは今や普通のことになっている。彼女たちは恐怖の障壁を破ったのだ。体制は何もできない。

デモの最中に拘束された数千人の女性、男性、少女に対して体制が組織的に強姦、性暴力、拷問を行ったことが調査によって明らかになっている。考えてもみてほしい。イスラムの原則(その原則に基づいて「慎ましい」服装を暴力的に強制しようとしたことがデモのそもそものきっかけではあるが)に則ったものであるはずの体制が、今や唾棄すべき不信心な方法に訴えて、黙らない国民を抑えつけようとしている。そのようなやり方に保守的な親体制の人々までもが反発したことで、アヤトラ(宗教指導者)たちの正当性はさらに損なわれた。

アムネスティ・インターナショナルによると、イランは2023年に入って既に約100人を処刑した。その多くは政治活動を行って処刑された人々だ。処刑された人々の中に著名な元国防相高官だったアリレザ・アクバリ氏が含まれていたことは、体制の自滅が始まっている兆候だ。

さらに、イランが安価なドローンやミサイルの製造・輸出におけるグローバルリーダーになりつつあると欧米諸国は警鐘を鳴らしている。イランのドローンが比較的安価なことはウクライナ紛争の様相を変えた。ロシアが民間人や経済的目標に対して激しい攻撃を行うことを可能にしたからだ。ウクライナの各都市は今や、イランの兵器のさらなる技術革新のための血塗られた実験場と化している。

イランの軍事情報当局は、そのような兵器をアフリカやアジアでテロリストや反乱者に売ることで数十億ドルを稼げるとほくそ笑んでいる。ある当局者は誇らしげに、「中国が我々のドローン1万5000機を買う順番待ちをするほどに、我々の力は強くなっている」と述べた。そのような違法な輸出による多額の収入は、地域各地の武装勢力への資金提供など、イランの戦争遂行能力を高めるための投資に還元されることになる。イランの大規模な弾道ミサイル計画の範囲、精度、破壊力は、欧州の一部をたやすく射程内に収めるレベルにまで進んでいる。

イラン体制は何千人もの自国民を殺害し、毒で攻撃し、拷問し、強姦することで、同時に世界の安全保障を存続の脅威に晒している。

バリア・アラマディン

国連の核監視機関である国際原子力機関(IAEA)の事務局長に対してなされた協力強化という曖昧な約束は笑止だ。このような無意味な約束は以前にも、体制が外交的圧力に晒された時に聞いたことがある。そして体制は、IAEAとイランによる直近の共同声明が出されてから数時間後にはもう、監視カメラの導入や現場の査察などの具体的な問題に関する合意に達したことを否定した。

イランの兵器の拡散を示すさらなる例がある。イギリス海軍がオマーン湾で、イラン製対戦車誘導ロケット弾と中距離弾道ミサイル部品をフーシ派のもとに輸送していたボートを拿捕したのだ。これは何百回と行われている同様の輸送の一例に過ぎない。

一方イランは、自ら認めているように、ウラン粒子濃縮を核兵器級まであと少しの水準である濃縮度83.7%にまで進めた。私は長年イランの核問題を取材しているので、イランがウラン濃縮を5%、20%、60%と進めていった時にどれほど警鐘が鳴らされたかを覚えている。各段階では世界の指導者らが、イランが濃縮をこれ以上進めることは許されないと強い口調で非難したものだ。

体制は現在IAEAに対して非協力的な姿勢を示しているため、イランが核施設で何を行っているかは我々には分からない。米国防総省の高官は、イランが核兵器1発分の核物質を生産するのに必要な日数は僅か12日であり、3ヶ月あれば最大7発を製造できると述べた。北朝鮮の場合と同じように、ある朝目覚めたらイランが複数の都市全体を消滅させる能力を持った核兵器の実験を行っていたなどということになる可能性があるのだ。

CIAのビル・バーンズ長官が悦に入って言うには、イランが現時点で核兵器製造の準備をしていることを示す証拠はないという。しかし、アヤトラたちが正当な民生利用目的のない濃縮度60%のウランを備蓄している理由は何だと考えているのだろうか。

しかしイランは、最近イスラエルと米国の間で立て続けに行われている核開発問題に焦点を当てた外交活動(ロイド・オースティン国防長官やマーク・ミリー統合参謀本部議長による地域訪問など)に怖気づいているはずだ。ミリー議長は自身による異例のシリア訪問について、ダーイシュや、イランを後ろ盾とする民兵組織の活動が活発化していること、また地域規模の紛争が発生する可能性を考えれば危険を冒すに値するものだと述べた。

我々はムッラー(聖職者)体制の終焉を目の当たりにしているわけではないかもしれないが、少なくとも終わりの始まりではある。体制はあらゆる間違った動きを取ることで、またイスラエルと米国による核施設への先制攻撃がほとんど不可避になるような事態を作ることで、執拗に自らの対面を損なっているのだから。

これらの国内活動や拡張主義的活動は困惑させるような迅速さで行われている。内部の混乱や崩壊の兆候があまりにも明白になっている中、地域を不安定化させるイランの能力についての最も悲観的な推定に反して、体制が制御不能に陥りつつあるのだ。

イラン体制は何千人もの自国民を殺害し、毒で攻撃し、拷問し、強姦することで、同時に世界の安全保障を存続の脅威に晒している。そうであるなら、世界はいったいなぜ手をこまねいているのか。

• バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東およびイギリスのニュースキャスターである。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

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