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宗教間・文化間の対話―サウジアラビアとUAEの事例

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10 Apr 2023 07:04:31 GMT9
10 Apr 2023 07:04:31 GMT9

宗教間および文化間の対話は、あまり議論されていないが非常に重要な文化外交の柱の一つであり、平和の促進に役立つものである。これを主導した中東の二つの国、サウジアラビアとアラブ首長国連(UAE)について検討することは重要といえる。

サウジアラビアは、このような文化外交の側面に投資し、文化・宗教間対話を通じて平和的共存を提唱してきた長い歴史を持っている。例えば、2005年には、サウジアラビア、オーストリア、スペインによって、「世界中の異なる宗教・文化間の対話を可能にし、力を与え、奨励する」ため、KAICIID対話センター(アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター)が設立されている。

2008年、サウジアラビアのアブドラ国王は、ムスリム世界連盟が主催する「マドリード宗教間対話会議」を後援した。イスラム教スンニ派、シーア派、仏教、キリスト教、ユダヤ教、ヒンドゥー教など、さまざまな宗教を代表する数百人の代表が出席した。この会議は、「宗教間対話に関する国連評議会の創設につながる可能性を秘めた、年次の宗教間会議を生み出す」ことができる最初のステップと見なされた。

故アブドラ国王が指摘したとおり、「トーラー、新約聖書、コーランはすべて人類の幸福を求めている。したがって、人類の利益のために協力することは、信者としての義務である」

ここ数年、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子も宗教間対話を非常に重視しており、この重要な使命の推進・促進に重要な役割を担っている。

サルマン皇太子のリーダーシップの下、サウジアラビアは他の宗教団体や信仰へのアウトリーチに積極的に乗り出している。2020年、サウジアラビアは、イスラム教の聖職者、ユダヤ教のラビ、キリスト教の司祭、その他の宗教指導者が参加する世界的な宗教間フォーラムを主宰した。2022年には、初の「宗教信者の共通の価値観 」をテーマにした多宗教会議がリヤドで開催された。

この種の会議は今までになく、15人以上のラビを含む約100人の宗教指導者が参加した。

中東でも世界の他の地域でも、緊張や紛争を抑えるためには、宗教間の対話を促進することが重要である。

マジッド・ラフィザデ博士

主催団体であるムスリム世界連盟の事務局長であるムハンマド・アル・イーサ博士は、次のように述べた。
「この会議の目的は、より協力的で平和な世界と、より調和のとれた地域社会のために人道的パートナーシップの構築に努めるムスリム世界連盟の価値観に合致しています。この会議は、現代の主要な問題のいくつかに取り組んでいます。イスラム教発祥の地であるサウジアラビアに本部を置く世界最大のイスラムNGOとして、私たちはこの活動を行う特別な責任を負っています。気候変動への取り組みであろうと、世界中の難民や脆弱なコミュニティの支援、あるいは単に平和と共存のメッセージの普及であろうと、このイベントが育んでいるような宗教間の信頼と協力は、そうした現実的な目標を支えるためにどうしても必要なのです」

UAEはサウジアラビアとともに、その野心的なアジェンダに参加している。注目すべき重要な展開として、アブラハムの三宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)をまとめた「アブラハム・ファミリー・ハウス」のUAEでの開設が挙げられる。

AP通信の報道は、アラビア湾岸に建設されたこの新しい複合施設を以下のように詳述した。「アラブ首長国連邦の首都に、カトリック教会、ユダヤ教のシナゴーグ、イスラム教のモスクがある。(中略)アッシジの聖フランシス教会、モーシェ・ベン・マイモーン・シナゴーグ、イマーム・アルタイブ・モスクの3つの礼拝堂は(中略)2019年にフランシス法王を迎え、その後2020年にイスラエルを外交的に承認したUAEが、公然と寛容に向けて進んでいることの現れである。アブダビのサディヤット島にある同施設では、崇拝者たちがすでに祈りを捧げ、語り合っている」

また、宗教間の対話を促進することは、中東であろうとその他の地域であろうと、緊張や紛争を抑える上で重要である。中東でこの目標を追求する国が多ければ多いほど、この地域は平和になるだろう。

UAEの「アブラハム・ファミリー・ハウス」の価値観と使命は、「信仰は多様であるが、人間性は共通である人々が平和のうちに集うこと」というビジョンが示すように、このような重要な目的に合致している。また、同施設は以下のように述べている。「私たちの使命は、知識の交換、対話、信仰の実践を通じて、共通の人間性の橋渡しをすることです。私たちの価値観は、平和的共存、好奇心、そして人間的友愛を中心に置くことです。これらは200を超える国籍のコミュニティが平和的に共存するUAEの多文化と多様性を体現しています」

宗教間・文化間対話は文化外交の中核をなす柱である。イスラム教発祥の地であるサウジアラビアとUAEが、地域内外の平和的共存を促進するために先導的な役割を果たしていることは、有望である。そして、サウジアラビアとUAEが主導するこのような重要な宗教間・文化間のプロジェクトを欧米が認識し、支援することが重要となる。

  • マジッド・ラフィザデ博士はハーバード大学で教育を受けたイラン系アメリカ人の政治学者。ツイッター:@Dr_Rafizadeh
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