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地域関係の改善は、イランにおける人口危機の緩和に役立つ

イランのテヘランにあるダウンタウンの商業地区を歩く人々。(AP通信)
イランのテヘランにあるダウンタウンの商業地区を歩く人々。(AP通信)
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25 May 2023 09:05:18 GMT9

公式な統計によると、イラン社会は急速に高齢化社会に向かっている。2022年3月時点で、イランの人口増加率は辛うじて0.6%に達した。イラン医科大学のモハメド・タバタバイ保健局長によると、2023年5月13日には出生率は1.6%まで低下した。危険なのは、今後数年間人口が減少傾向にあると予想されていることである。

RCP(代表濃度経路)シナリオによると、現在の出生率の低下傾向が衰えずに続く場合、イランの人口は2051年には8,200万人にまで減少する。2060年には7,760万人、2100年には4,200万人になる。また、2051年までに高齢化率は30%に達すると予想される。アリー・ハメネイ最高指導者は声明で次のように述べた。「現代人はますます高齢化している。これは悪いニュースで、恐ろしい事態だ」さらにこう付け加えた。「もしこれが現実になれば、国は自らを救う手立てがなくなる」したがって、ハメネイ師はイラン政府に高齢化社会の解決策を見出し、国の人口を倍増させるよう促した。

イラン政権は、高齢化がますます顕著になっている人口ピラミッドに関する政策を再検討した。同政権によれば、人口は国力の要素の1つであり、地域の影響力を強化する上で重要な要素であり、特に近隣諸国との人口競争を考慮すると、イランの人口が将来減少する可能性は同国の地域的地位と役割に影響を与えるだろう。近隣諸国の人口と出生数の増加率はイランよりも高く、イランはこの変化が将来的に国の存続を危うくすると感じている。イランは、多数のスンニ派が住む広い地域に位置しており、親政府派の民族グループも拠点を置いている。これは、人口増加が単なる国内問題ではなく、地政学的な側面もあることを意味する。

とはいえ、イラン国内の様々な民族や宗派間の人口増加率の格差は、イランに住むシーア派ペルシャ人の懸念を深めている。これは、シーア派の人口増加率がスンニ派のそれよりもはるかに低いためであり、将来シーア派の権力掌握に脅威をもたらす。さらに、シーア派国家としてのイランの存在と、宗派的な側面を基盤とする「ヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者の統治)」政治プロジェクトを脅かす。公式の数字から、合計で2,000万人から2,500万人に達するスンニ派は優勢に傾いており、テヘランだけで100万人以上を超えることは注目に値する。

問題は、イラン政権自体がこの人口ジレンマの責任を負っていることだ。過去40年間にわたり、政権は不安定でポピュリズム的な人口政策を採用してきたが、包括的な戦略ビジョンが欠けており、混乱した一貫性のない政策だった。それは特定の状況に応じたもので支配層エリートの利益に基づいており、時間に左右されるさまざまな高圧的な予防措置、対策、決定を含む。支配層は、人口増加の問題を国家の強さの現れと見なすときもあれば、それを資産ではなく負担でありイランにとってさらに多くの危機の原因と見なすときもあった。イランの支配層エリートは、これらの危機が人口の多さによるのではなく、むしろ政権の非効果的な政策の結果であるという事実に気づいていない。

最高指導者の度重なる嘆願にもかかわらず、公式の数字は、子どもをもつ意欲がイラン国民の中で低下していることを示す

モハメド・アル・スラミ博士

したがって、政権は人口危機の解決に向け取り組みを強化しているにもかかわらず、何の反応も見られない。そして、最高指導者の度重なる嘆願にもかかわらず、公式の数字は、子どもをもつ意欲がイラン国民の中で低下していることを示す。これは、人口政策が劇的に変化し、政権とその最高指導部の信頼性、理想、価値観、スローガンを損なったからである。言い換えれば、政権の人口政策は、常に政権と高官らの利益や願望に基づいて変化してきた。

政権が人口増加を切実に必要としていたとき、その指導部は天からの恩恵と寵愛だとして大規模な人口を奨励した。反対に、政権が経済的、開発的な問題に直面した際には、産児制限は国家的、社会的、宗教的な義務であると考えられた。これらの計画が人口増加率と出生率の不均衡な低下をもたらした時―社会の人口バランスを長期的に保つために均衡のとれた比率を維持する戦略がなければ、イランの地域的野心は将来人口動態の脅威に直面することを意味するので―政権はその過ちを悟り、イランを標的にした西側諸国を非難した。

そのため、政策は再び変更された。この混乱した政策は、特に過去40年間の政治的、経済的、社会的な面での政府の失敗を考えると、政権に対する人々の信頼を確実に損なっている。数々の失敗によって生活環境は悪化し、若者は絶望している。

結論として、イランは、政権の無秩序な人口計画が原因で、人口増加と経済発展のバランスを取ることができなかったと言える。この失敗はまた、好戦的で膨張主義的な外交政策を追求したこととも関連しており、イランは圧力を受けて極端な孤立に陥っている。加えて、政府がポピュリズムに抵抗する経済政策の代替となる経済政策を採用しなかったこともこの問題の原因である。その結果、経済成長率は低迷しており、優れたガバナンスの達成や投資の増加に失敗したため、湾岸諸国のような生活水準の向上や生活環境の改善には至っていない。

イランが現在の人口ジレンマから抜け出す唯一の方法は、国内における経済発展のサイクルを押し上げることだ。しかし、これはイランが地域的・世界的な紛争を解決しなければ達成できない。現場では、イランがサウジアラビアとの関係を回復し、地域的・世界的な孤立を終わらせ、地域の国々との関係―切実に必要とされる経済関係などを強化する可能性が高まっており、イランにとっては解決を実現する絶好の機会となっている。

モハメド・アル・スラミ博士は、国際イラン研究所(ラサナ)の所長を務めている。ツイッター: @mohalsulami

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