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日EU関係の黄金時代は、グローバルリーダーシップの好例である

ブリュッセルで開催された日EU定期首脳協議に臨むウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長(左)、シャルル・ミシェル欧州理事会議長(左から2番目)、岸田文雄首相。
ブリュッセルで開催された日EU定期首脳協議に臨むウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長(左)、シャルル・ミシェル欧州理事会議長(左から2番目)、岸田文雄首相。
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17 Jul 2023 08:07:14 GMT9
17 Jul 2023 08:07:14 GMT9

EUと日本は、戦後長らく緊密な同盟関係にあった。しかし、日EU関係が「黄金時代」を迎えつつある兆候があり、日EU間のパートナーシップにとどまらず、地政学的・経済的に重大な影響を及ぼす可能性がある。

もちろん、「黄金時代」などという仰々しい用語は極めて主観的なものであり、覆りやすいものである。例えば、2010年の総選挙後にデービッド・キャメロン氏が英国首相に就任したとき、英中関係は「黄金時代」に入ったと宣言された。だが、その後すぐにさまざまな二国間問題が生じたことで、早々にこの宣言は放棄された。

しかしながら、日本とEUの関係が史上最高レベルに良好であると思われていることなど、特にウクライナでの戦争が始まって以来、「黄金時代」という言葉が日EU関係を表すのに非常に適しているのには、いくつかの強力な理由があるように思われる。

この言葉は、日EU双方の政治家によってまだ広く使われてはいないが、元EU・NATO・国連ベルギー常任代表であるジャン・ド・ルイ氏などのトップ外交官を含む、ますます多くの主要な思想家によって言及されるようになっている。

この言葉が使われるようになっている理由の1つは、近年、双方間でさまざまな重要な協定が結ばれていることだ。これには、日EU経済連携協定、日EU戦略的パートナーシップ協定、日EUグリーンアライアンス、持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップなどが含まれる。

さらに、2022年5月の日EU定期首脳協議で署名された共同宣言は、共通基盤の拡大を強調するものであった。これは、長年の協力だけでなく、民主主義、法の支配、人権、グッドガバナンス、多国間主義、開放的市場経済などの強力な価値観と原則の共有に支えられている。

近年の日EU関係の進展で特に印象的なのは、従来は経済協力に基づくパートナーシップであったものが、より深い安全保障関係へと発展している点である。これはウクライナ戦争中に特に顕著になったが、欧州戦域に限ったことではない。

欧州内では、アジア太平洋地域への関心と理解が大幅に高まっている。これは、EUがアジア太平洋地域との協力に関する新しい戦略を発表した際に明らかになり、鉄道などの主要セクターにおける新たな経済協力から、合同海軍演習のようなより広範な安全保障活動に至るまで、EUが日本をアジア太平洋地域の主要なパートナーと見なしていることが、さまざまな形で明確に示された。

木曜日に開催された重要な日EU定期首脳協議では、日EU関係が深まり、広がっていることが明らかであった。日EU定期首脳協議の議題には、開花しつつある戦略的、経済的、連結性パートナーシップの実施における次のステップが含まれていた。

特に先週の火曜日と水曜日にビリニュスで開催されたNATO首脳会議との関連で、ウクライナが議題のトップを占めたのは必然であった。昨年、NATOの年次首脳会議に初めて招待された日本は、2023年にG7の議長を務めた際に明確な国際的リーダーシップを示したことを含め、ロシアの侵攻以来、ウクライナへの支持を堅持してきた。日本は、ロシアがウクライナ、そしてより広く欧州にもたらす安全保障上の脅威と、中国がアジア太平洋地域にもたらす脅威との類似性を描こうとしている。

したがって、日EU防衛関係の緊密化は、ロシアと中国の野心に対する相互の懸念が高まる中で進んでいる。一方、トランプ大統領時代は、米国がかつてのように頼りになる同盟国であるとは限らないことを示した。

例えば、EU唯一の核保有国であるフランスと日本は安全保障関係を強化しており、フランスはアジア太平洋を外交の主軸に据えようとしている。すでに日本の民生用原子力産業に積極的に関わっているフランスは、日本が軍事費の大幅増額を最近発表したことから、日本の軍事分野でも存在感を高めたいと考えている。

日EU貿易協定は、多国間主義と貿易自由化へのコミットメントを促進することで、世界に異なる道筋を示した。

アンドリュー・ハモンド

ウクライナ以外にも、日EUパートナーシップをこれまで以上に前向きな領域へと導くためのアジェンダが豊富にある。これには、海洋安全保障協力の強化、インフラ整備の拡大、EUの外交戦略グローバルゲートウェイの整合性向上、持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップなどが含まれる。

また、日EUグリーンアライアンスを基盤とし、エネルギー安全保障、脱炭素化、重要鉱物を含むグリーンサプライチェーンにおけるパートナーシップを強化する大きな余地もある。これは、米国のインフレ抑制法の影響に関する日EU相互の懸念を考慮すれば、なおさらである。

これらのことを総合すると、急速に変化する国際的な地政学的・経済的状況を背景に、EUと日本が幅広い問題にわたってより大きな世界的影響力を発揮する機会が増大していることがわかる。近年、国際貿易とルールに基づく経済秩序の課題において双方が示したリーダーシップの資質が、達成できることの模範を示している。

この日EU間の連携推進は、トランプ大統領時代に、トランプ政権が「アメリカファースト」を重視する中で、米国がこの課題を軽視したことにより、加速した。

同じ頃、世界の国内総生産の約3分の1を占め、合計約6億5000万人の人口を対象とするEUと日本の貿易協定は、多国間主義と貿易自由化へのコミットメントを促進することで、世界に異なる道筋を示した。

この協定はそれ自体が重要であるだけでなく、2019年に日本が主催したG20サミットや、さまざまなG7首脳会議といった主要なフォーラムでの貿易交渉のより広範な外交の形成にも役立った。

したがって、日EU首脳協議は、日EU関係が歴史的な高水準にある理由を示す新たな例となった。日本とEUは、多国間貿易体制、ルールに基づく経済秩序、さらには自由民主主義そのものなどの問題において、グローバルリーダーとなった。これは今後、エネルギー安全保障やグリーン成長といったより広範な課題にまで拡大する可能性がある。

アンドリュー・ハモンド氏は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイトである。

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