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レバノン、シリア、ヨルダンが問題を克服する方法

ヨルダンにいるシリア難民のほとんどは、ヨルダンの町や村、地域社会の中で暮らしている。(ロイター/ファイル)
ヨルダンにいるシリア難民のほとんどは、ヨルダンの町や村、地域社会の中で暮らしている。(ロイター/ファイル)
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09 Aug 2023 01:08:33 GMT9
09 Aug 2023 01:08:33 GMT9

レバノン、シリア、ヨルダンの政治、安全保障、人道、経済的状況は、相互に密接に結びついていると言っても過言ではない。これらのアラブ諸国一国の繁栄と成長が、ほかの2か国に直接影響を与えるならば、経済的苦境や政情不安も同様である。

国境を接するレバント3か国が現在直面している問題の多くは、シリア内戦に端を発している。内戦はインフラに壊滅的なダメージを与える可能性があり、何よりも内戦の影響を受けた国々だけでなく、隣接する国々の生産・製造プロセスにも支障を来す。

レバノンとヨルダンがまだ完全に終結していないシリア内戦の波及を引き続き経験していることは注目に値する。それらの国の一部には、依然として非常に不安定で治安の悪い地域が残っているのである。

これは、騒乱発祥の地であり国内における最重要拠点の1つとされているダルアー市を含むシリア南部に特に当てはまる。ダルアーはヨルダンとの国境に近く、シリアのゴラン高原内の地域クネイトラにも近い。

レバノンおよびヨルダンに直接影響を及ぼしているもう1つの重要な動きは、シリア難民の大量流入である。12年以上にわたる内戦の後、シリアは依然として世界最大の難民危機にある。国連難民機関は3月、「1400万人以上のシリア人が安全を求めて避難を余儀なくされている」と報告した。

ヨルダンは、国民1人当たりの難民数が世界で2番目に多い国である。国連難民高等弁務官によると、ヨルダンは現在、「2011年、シリアの危機が自国民に想像を絶する苦しみをもたらした際に避難し難民登録されたシリア難民67万5000人」を受け入れている。「ヨルダンにいるシリア難民のほとんどは、ヨルダンの町や村、地域社会の中で暮らしており、ザータリとアズラックの2主要難民キャンプに住んでいるのは、わずか17%である」

一方、レバノンは現在、国民1人当たりの難民受け入れ数世界一である。国連難民機関によれば、「レバノン政府は150万人のシリア難民と13,715人のその他の国籍の難民がいると推定しており、シリア難民の90%は極度の貧困の中で暮らしている」

その結果、シリア、レバノン、ヨルダンの多くの人々が深刻な経済的苦境に直面していることは驚くべきことではない。これらの国の失業率はいずれも10%を超えている。

レバノンの経済危機は、19世紀以降、世界的に見てもワースト10に入ると言われている。シリア国民は記録的な食料不安と生活必需品の価格上昇に直面している。シリアの通貨は、2011年に騒乱が勃発する直前には1ドル約47ポンドで取引されていたが、最近では史上最低を記録し、1ドルは現在約13,000シリアポンドの価値となっている。インフレ率も2022年には139%に達し、ワールドポピュレーションレビューによれば、インフレ率の高さではベネズエラ、スーダン、レバノンに次いで世界第4位である。

国境を接するレバント3か国が現在直面している問題の多くは、シリア内戦に端を発している。

マジッド・ラフィザデ博士

とはいえ、ダマスカス、ベイルート、アンマンが直面している問題の多くは、いくつかの領域で互いに緊密に協力すれば、適切に対処し解決することができる。

目的を達成するためにまず必要なのは、政治的意志の一致である。シリア、レバノン、ヨルダンの指導者たちは、それぞれの社会政治および経済的状況が絡み合っているという事実を考慮しながら、経済、人道、政治的ダイナミクスを前進させる包括的、統一的かつ長期的なビジョンを描くことができる。

この地域のいくつかの国は、自国をより良く、より豊かな未来へと導くために、長期的かつ刺激的なビジョンを掲げている。例えば、サウジアラビアの「ビジョン2030」は、経済的のみならず、環境、社会、宗教的な状況、そして政治的な改革をも包含しているため、現代の中東で導入された計画の中で最も野心的かつ包括的なものの1つである。また、UAEは「We the UAE 2031」ビジョンを掲げており、これは「UAEが今後10年間、社会、経済、投資、開発の側面に重点を置き、発展の道を歩み続けるための国家計画である。計画は、世界的なパートナーとして、また魅力的で影響力のある経済ハブとしてUAEの地位を高めようとするものである」

シリア、レバノン、ヨルダンの指導者たちが確固たる一致したビジョンを打ち立てた後、安全保障問題、国境の安全確保、政治的安定性の向上、外国投資の誘致、歴史的意義を生かした観光収入の増加などで緊密に協力する道筋を描くことができる。インフラに投資し、食料不安や電力不足に対処し、シリアからの麻薬密輸に取り組み、シリア難民が安全に故郷に戻れる道を開かなければならない。

間違いなく、このような計画が実を結ぶには時間がかかるが、ことわざのとおり、「ローマは一日にして成らず」である。

シリア、レバノン、ヨルダンはいずれも歴史的、文化的に重要な位置にあり、過去には文明に多大な貢献をした。安全保障、社会、経済、政治的な問題で緊密に協力すれば、現在直面している多くの問題に適切に対処できるだけでなく、次に続くほかの国々の模範となる。

まとめると、シリア、レバノン、ヨルダンの政治、経済、社会、安全保障の状況は相互に絡み合っている。これらレバント3か国が直面している困難な問題に対処するには、一致した強いビジョンと、いくつかの領域における緊密な協力が必要である。

マジッド・ラフィザデ博士はハーバード大学で学位を取得したイラン系アメリカ人政治学者である。
Twitter: @Dr_Rafizadeh

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