原因はいつもほぼ同じであり、結果も簡単に予測できるが、支配者層のエリートはいつも驚いているようだ。先日イラクとレバノンで大規模な抗議行動が行われたが、その前にはアルジェリア、スーダンなど中東および北アフリカ諸国(MENA)でも大規模な抗議行動が行われている。これは、汚職、経済的困窮、不適切な統治という同一の不満によって火がついたものである。その中には、いまいましい宗派主義が関わっているものもある。また、これらの抗議行動に共通する明確な特徴は、30歳未満の人たちが主に関与していることであり、このことも驚くべきことではない。
国際通貨基金(IMF)は、この地域の経済見通しに関する最近の報告の中で、失業と低成長がアラブの複数の国における社会的緊張と抗議活動多発の原因だとしている。IMFによれば、この混乱状態は、世界の貿易摩擦、石油価格の不安定、英国の欧州連合からの離脱をめぐる混乱もあいまって、同地域の成長の鈍化の要因となっている。IMFは先月、2019年の同地域の成長率予測を0.1%にまで引き下げた。昨年は1.1%だった。
成長の水準は、若年層で25%超と特に高い失業率に対処するために必要とされるレベルにはほど遠い。全世代の失業率の同地域平均は11%で、その他の新興国市場、発展途上経済における7%よりも高い。
若年者は大きな労働力であり、高い生産性、イノベーション、発展を生み出す存在であるため、プラス要因と考えるべきものである。しかし、政府が雇用を創出したり、サービスを提供したり、投資、起業家精神、平等な機会に貢献する環境を推進したりすることができないため、若年者が脅威であり問題であると捉えられているのだ。
抗議行動には、現在の貧弱な教育制度、医療サービス、雇用市場に関する若者の不満が投影されているが、これは急進化や暴力につながることもある。
ユニセフが4月に出した「MENA Generation 2030」の報告によると、21世紀前半に、この地域のかつてないほど多くの人々が最も生産的な期間に移行し、人口ボーナス(人口動態の変化による成長)の可能性をもたらす。
抗議行動には、現在の貧弱な教育制度、医療サービス、雇用市場に関する若者の不満が投影されている
マハ・アキール
ユニセフの報告によれば、現在この地域の人口のほぼ半分を占める子供と若年者(24歳以下)が変化の主体となる可能性を持っており、自分たちのため、そして自分たちのコミュニティーのために、繁栄し、安定した将来を手に入れようと活動している。しかし、この可能性を解き放つには、意義のある学習、社会参加、仕事を創出するため、即座に大規模な投資を行うことが必要だが、現在これらはどれも限定されており、特に若い女性、最も弱い立場の人たちに行き渡っていないとこの報告では指摘されている。
分厚い若年者層の生活の条件や機会を改善するという問題に取り組むべきなのはMENA地域だけではない。MENA諸国も含まれるイスラム協力機構(OIC)の57のイスラム教国の若年者は、世界の若年者の4分の1を占める(世界の10〜24歳の若年者は推定18億人)。そして2050年までには3分の1を占める可能性がある。このことはOIC諸国にとってすばらしいチャンスだが、このすばらしい可能性を生かすにあたっては、重大な課題に直面することにもなる。
「State of Youth in OIC Member States 2017(OIC諸国における若者の現状2017)」の報告によれば、課題とは次のようなものである。質の高い教育訓練を提供すること。十分な量の雇用創出と教育から労働市場への移行を円滑化すること。スキル形成と雇用市場において男女問わず平等な機会を創出すること。生活水準向上のための世代間社会移動を促進すること。若者の積極的な社会参加を保証すること。若者の有害物質、有害行動の中毒を減少させること。
しかし、OIC諸国の大部分では、若年者の多くが政策立案や政治的な意志決定への参加に消極的なままで、軽視されているのが現状である。私たちは相変わらず若者や若者の「問題」に「対処」しているのであって、若者を意志決定プロセスに関わらせたり組み入れたりすることはしていないのだ。
OIC-2025アクションプランでは、若者の能力開発の必要性と、経済成長、平和と安全保障、人権、起業家精神という重要分野において指導つきで関与させることの必要性を強調している。また、OICは教育、雇用、社会的包摂、過激思想、起業家精神、医療サービス、結婚、市民社会と関与、文化的課題とグローバリゼーション、移住と統合、環境を11の優先分野に指定する若者戦略2018を採択した。
テクノロジーの大変革が現在そして若者がかじを取る将来を形作る時代に、この「若者の人口の増加」が生じていることは、熟慮すべき重大な要因である。人口動態とテクノロジーという2つの力は、情報の自由な流れ、説明可能な政治システム、機会の平等などに対する若い人たちの期待に影響を与える。若者たちがソーシャルメディアを利用するのを妨げれば、大規模な抗議活動の引き金を引くことになるのは当然である。
国連の持続可能な開発目標により、公共の問題について若い人たちに役割を与えることが、平和で包摂的な社会、万民の司法へのアクセス、すべてのレベルで効率的で包摂的で説明可能な制度を促進するための鍵となった。
今日、世界の若い男女が環境問題、人権、社会参加、開発に対して積極的に活動している。彼らは以前には知られていなかったテクノロジーを利用している。私たちの目の前で爆発してしまいかねない、古くて力不足のやり方を続けるのではなく、エネルギーやコミュニティーの成長の潜在能力を利用することができる、可能性を拡大する環境を創造することが重要である。
マハ・アキールは、ジッダを拠点とするサウジアラビアのライターである。Twitter: @MahaAkeel1