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COVID-19時代のデジタル依存症に反撃

COVID-19のパンデミックのさ中にあって、アルゼンチンの若者が、アルゼンチン、ベルナルの自宅で自分のスマホを使っている。(資料/AFP)
COVID-19のパンデミックのさ中にあって、アルゼンチンの若者が、アルゼンチン、ベルナルの自宅で自分のスマホを使っている。(資料/AFP)
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31 Aug 2020 05:08:03 GMT9
31 Aug 2020 05:08:03 GMT9

ニダール・ゲスム

世界中の人々の健康および経済に与える衝撃の悲惨さがまだ十分でないかのように、コロナウイルス感染症(COVID-19)は第二波として別のパンデミックを引き起こした—- あらゆる場所でデジタル依存症が大規模に増加している。「パンデミックのデジタル依存症」をインターネットで検索するだけでも、問題意識が生まれるだろう。

デジタル依存症にはデジタルデバイス(スマートフォン、ラップトップ、タブレットなど)への依存とデジタルの過剰な使用(ソーシャルネットワーク、オンラインでのやりとり、ネット広告の無限の閲覧など)がある。これらは買い物依存症やギャンブル依存症、その他の過剰な活動など、脅迫行動のひとつである。

行動嗜癖の治療を非常に困難にしている原因は、薬物依存症(ニコチン、カフェイン、アルコール、違法薬物)とは違い、それらが我々が縁を切ることのできないものを利用する点にある。現に、(精神的にも肉体的にも)たばこの治療は可能であり、二度と触らないようにすることができるが、我々の生活の一部になったスマートフォンやラップトップはそうはできない。実際に、現在起きているパンデミックと誰もが必要とする社会活動の激減により、ほとんどの人が「選択肢のない」まま、気づけば、自宅で座って、デジタルデバイスを使い続けているが、これがたちまち依存症になってもおかしくない。

パンデイックが起きる前は、様々な情報筋が、何らかの形で依存症を持つ人の割合は1/3から1/2であると推定しており、そのほとんどが行動嗜癖だった。多くの国でデジタル依存症に関する報告が発表されており、これが普遍的で浸透性のある問題だという状況があらわになってきた。

我々(特に親)は、いつ、デジタル(あるいはより一般的には行動の)依存症がふりかかったことを知るのだろうか。一言で言えば、肉体的なもの(腰痛、目が腫れぼったい、慢性的な睡眠不足など)、財政的なもの(何かにお金を使いすぎる)、時間的なもの(すべきことを無視する、何らかの活動で時間を浪費するなど)のいずれであるにせよ、与えられた製品を使うことで明らかに生活によくない影響が出始めた時だ。これらは克服が困難であると分かるほどの強い欲求に加え、親などの他者や、彼ら自身が気づくことのできる兆候である。

依存症を持つ人は往々にして、自分の行動を管理していると主張し、あれやこれやと活動に使っているのはほんのわずかの時間であると主張して、依存症を否定する。さらには、彼らは、自分がその製品を望み、使用するのは、一時的なことだと主張する。実際には、依存性の行動の勢いには波があり、注意を払って観察すれば、時間と共に悪化する傾向にある。

この近著、『僕らはそれに抵抗できない—- 「依存症ビジネス」のつくられかた』でアダム・オルター氏は、中国がこれを公衆衛生上の一番の脅威だと宣言し、同書の出版当時の2017年時点で、中国の400箇所の治療施設に2,400万人のデジタル依存症患者がいたと語っている。言うまでもなく、この数字はそれ以来、大きく増加しているにちがいない。

人々は「選択肢のない」まま、気づけば、自宅で座って、デジタルデバイスを使い続けているが、これがたちまち依存症になってもおかしくない。

ニダール・ゲスム

英国通信局は、英国政府の規制当局であり、1,500万人のユーザー(英国の全デジタルユーザーの34%)がデジタルデトックスプログラムを試したと説明した。興味深いことに、オフラインの状況下で、彼らのうちの33%が生産性が高まり、27%が解放されたと感じ、25%がはるかに人生を楽んだと報告した。しかし、彼らのうちの16%はあの「FOMO」(喪失の恐怖)を味わい、15%は「妨害された」と感じた。

ヒューストン、問題が発生した。事態は悪化している。

どうすればよいのだろうか。まず、対象となっている人物の問題を特定し、評価する必要がある。利用可能なデジタル依存症検査はいくつもある。まずやってみることだ — 多くの人が衝撃を受けるだろう。ツールの中には、合計と(InstagramやWhatsAppなど)特定のプログラム別との両方で、毎日の使用の程度を測定することのできるアプリもある。使用が過剰になった時間を特定することもできる。評価が決まれば、深刻な問題として問題点に対処することができるのだ。

次に、専門家が我々に教えているのは、依存症では、心理療法やその他の治療法を用いたとしても、「突然禁断状態にする」ことは難しいということである。現に、そのような対処法は一時的に機能するだけであり、依存症が復活することもよくある。それよりもよい解決策は、置換活動(ある種のスポーツまたは新しい趣味、友人と集まるような社会活動 — 全員がデジタルデバイスを使わないことに同意する場合のみ)の採用である。

これらの「簡単な」解決策に効果がないと分かった場合は、前述のセンターで行われているような、さらに思い切った治療法がある。そのような治療法には、心理療法や個人、グループ、家族のセラピーだけでなく、不安や鬱などの精神的問題に対処するための薬物治療もある。

私が思うに、ひとつの社会としての我々にっとての大きな問題は、問題の深刻さの認識と評価である。私は明らかにデジタル依存症である多くの人々を目にしてきた。1時間の授業中に、スマホを「確認」せずにはいられない学生、自分のデバイスに手をのばさずにイマームの説教(約20分)を聞いていることのできない大人、など。

(親、教育者、コミュニケーター、宗教の指導者としてなど)我々には皆、「軽度」または中程度から深刻なものまで、巨大化するデジタル依存症の問題を特定・評価し、解決策を提案する義務がある。時間は我々が無頓着に浪費してはいけない商品である。

  • ニダール・ゲスムはUAEのアメリカ大学シャルジャ校の教授である。Twitter: @NidhalGuessoum
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