ヒブシ・アルシャマリ、リヤド
5年前、サウジアラビアの当時のムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は、サウジアラビアの経済を改革し、石油依存を低減させ、「活力溢れる社会、つまり、穏健なイスラム教国、国家的誇り、サウジアラビアの遺産、そしてイスラム文化を色濃く反映する強靭な根と基盤に特徴づけられた社会」を育むために組み立てた戦略的プランを発表した。
彼はその同日、アルアラビーヤニュース衛星放送局とのインタビューで、サウジ政府は目標、主な業績の指針、プロジェクト管理事務所、そして全人口の60%が35歳未満である国家のための新たな展望を持っているということについて語った。
それから5年が経ち、ビジョン2030の5年間の成果を振り返って、4月27日(火)にサウジアラビアの経済開発問題委員会は、3つの主要テーマである「活力溢れる社会」「経済の繁栄」そして「意欲的国家」についての成果に言及した。
それでも、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ビジョン2030の目標を達成させる上で、様々な分野においてまだまだやるべきことが残っていると考えている。
同委員会は、4時間以内の緊急医療サービスへのアクセスが、ビジョン2030の立ち上げ当初には36%であったのが、現在87%まで向上していると言う。道路の管理と強化が改善され、年間の交通事故による死傷者数については、10万人中改革開始当初の死者数28.8人から13.5人まで減少している。
週1回以上スポーツ活動に参加している市民の数は、改革前の13%から、2020年には19%へと上昇した。
「ビジョン2030はスポーツ、エンターテイメント、文化、観光など、生活の質に関連する部門の向上にも貢献した」とクオリティ・オブ・ライフ・プログラムのマーケティング&コミュニケーション課長代理を務めるカリド・アルバケル氏がアラブニュースに語った。
「ビジョン2030によって新たな職が生まれ、収入源が多様化し、GDP(国内総生産)も向上 した」
住居については、より利用しやすくなった住宅補助の結果として、戸建て所有者数が5年前の47%から現在60%まで増加していると指摘した。
「これは、手頃な価格の住居ユニットの供給増、社会の貧困層のための住居を確保することに特化したプログラムの実施、住宅部門の法律および規制の開発と改善、そして経済全体に対する住宅部門の影響の最大化によるものだ」とハウジングVRP 2030研究調査部長を務めるメシャール・アル=シャンマリ氏がアラブニュースに語った。
その他、委員会によると、サウジアラビアの観光向け遺産場所の数が2017年の241カ所から昨年は354カ所へと増加し、それによって観光部門に新たな職が生まれてGDPへ大幅に貢献している。
二聖モスクへの宗教巡礼をはじめとする観光業を推進するため、サウジアラビアは旅行用文書記録を合理化した。ウムラ用のビザの取得は以前14日もかかっていたが、今では5分以内に取得可能となっている。一方観光客用のE-ビザは2、3回のクリックで入手できると委員会は言う。
同期間中、動植物の保護を目的とする7つの王立自然保護地区が開設された。
気候変動対策の一環として、サウジアラビアはG20で採択された循環炭素経済という概念を奨励し、太陽熱、水素、アンモニアによる開発プロジェクトを拡大した。
サウジアラビアは2030年までに電力消費量の50%を再生可能資源から調達しようと考えている。これはサウジグリーンおよび中東グリーンの二つのイニシアチブと並行しており、植生を促進し、炭素排気量を低減させ、汚染や土壌劣化に対抗するために設計されている。
金融方面については、サウジ・パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が5年間で1.5兆サウジリヤルまで倍増し、一方海外直接投資は53万2,100サウジリヤルから176万2,500サウジリヤルに増大した。
海外投資を簡易化するため、ビジョン2030は金融部門をテコ入れし、台頭する市場指標MSCI およびS&P ダウ・ジョーンズに対してサウジ証券取引所(タダウル)を開設した。
経済開発問題委員会によると、フィンテック・サウジセンターの設立により、サウジ証券取引所(タダウル)は世界の10大金融市場の一つとなった。
「コロナウィルス感染症COVID-19のパンデミックにより、様々な金融取引における近代的ソリューションやテクノロジーの採用スピードに大きな影響が出た。特に財務支払い、融資、金融サービスへの影響が大きい」とアブドゥラー・アル=ジャイダン氏はアラブニュースに語る。彼はサウジ商工会議所内の情報テクノロジー&コミュニケーション全国委員会のメンバーだ。
ビジョン2030の最優先目標の一つは経済の多様化だ。長きにわたって石油の輸出に依存してきたサウジアラビア経済は、現在多方面へと分岐させようとしている。非石油のGDP比率は2016年の55%から2020年には59%となっている。非石油歳入も2015年の1,660億サウジリヤルから昨年は3,690億サウジリヤルへと増大した。
サウジアラビアは現在デジタル分野でも競争力のある国となっている。国際電気通信連合の世界サイバーセキュリティ・インデックスでは、G20諸国中で第6位につけている。
「デジタル支払いにおけるサウジアラビアのイノベーションは、情報&コミュニケーションテクノロジーのインフラストラクチャ全体に対する先見的な投資なくしては有り得なかった」とイブラヒム・アル=ハドハイフ氏はアラブニュースへ語る。彼はスライマン・アブドゥル・アジズ・アル=ラジ株式会社のビジネス開発スペシャリストだ。
「サウジアラビアの住人も企業も、共に効率的なインフラストラクチャの恩恵を受けている。政府の手続きの大半はオンラインで行われており、サービスの質が向上し、ビジネス上の取引も簡素化されている」
個人の権利や職務上の権利を保護するために起案された法律を通して、サウジ女性たちの労働力への参入が2017年の19.4%から2020年には33.2%に増大した。
サウジアラビアのビジョン2030立ち上げから5年が経ち、政府機関へのアクセス向上や、不正対策の進展なども見られる。
3年前に不正事件の罰金として国庫が回収した総額が2,470億サウジリヤルに至り、これは非石油総収入額の20%に相当し、他にも巨額の価値の非現金資産が財務省へ送られている。
同委員会によると、司法裁判も効率とアクセスが向上し、説明責任を追求するカルチャーが政府内や市民の間に浸透しているという。
ビジョン2030の企画者たちは、次なる段階として、一般大衆および民間部門の参入増大を望んでおり、数々の意欲的な目標の中でも医療部門の改革を次なる目標として計画している。