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サウジアラビアの再野生化計画はアラビアヒョウを絶滅の淵から救いつつある

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10 Feb 2024 10:02:21 GMT9
10 Feb 2024 10:02:21 GMT9
  • 王国のアル・ウラー王立委員会は、過去1年間に7頭のアラビアヒョウの赤ちゃんを誕生させた。
  • この象徴的な動物は、野生下にわずか120頭が残るのみと考えられ、サウジアラビアには約20頭が生息している。

ハイファ・アルシャマーリ

リヤド:サウジアラビアのアル・ウラー王立委員会(RCU)に所属する自然保護専門家たちは、過去1年間に7頭のアラビアヒョウの赤ちゃんを飼育下で誕生させることに成功した。かれらの目標は、野生下で絶滅寸前に陥っているこの種の個体数を増加させることだ。

野生下のアラビアヒョウはわずか120頭が残るのみと考えられている。サウジアラビアには約20頭が生息し、分布域はおおむね南西部のアシール州とヒジャーズ地方の人里離れた山間部に限られることから、保護の取り組みは急を要する。

「RCUの施設の飼育下集団は27頭の健康な個体からなります」と、同委員会の野生生物・自然遺産担当バイスプレジデントを務め、自然保護プログラムと緊密に連携するスティーブン・ブラウン氏は、アラブニュースに語った。

RCUが進めるような繁殖プログラムは、野生のアラビアヒョウの個体数を増加させるうえで不可欠と考えられている。アラビアヒョウの減少の原因は、脆弱な生息地が人間に侵食され、野生の獲物が密猟されていることだ。

ブラウン氏は、「数年前の推定では(野生に)200頭でした。きわめて急速かつ劇的に減少していて、今ではほんのわずかしか生息していないのです」と語る。

「かつての分布域の大部分、例えばUAEやエジプトではすでに絶滅し、現在は一握りの隔絶された地域、つまりサウジアラビアの西部および南西部や、イエメンとオマーンの非常に高く険しい山々でしか見られません」

自然保護従事者たちは、生存の見込みが十分に高いという確信が得られた時点で、RCUの繁殖プログラムで飼育されているヒョウたちを野生復帰させたいと考えている。計画の成否を左右するのは、人間の行動変化だ。

野生のアラビアヒョウを脅かす要因について、ブラウン氏は「家畜被害への報復としての駆除、トロフィーハンティング、違法な野生動物取引のための捕獲など、さまざまな複合的要因があります」と説明した。

サウジアラビアの環境コンサルタントであり、国立野生生物センターの勤務ののち、RCUアラビアヒョウ世界基金の代表を務めたハニー・タトワニー氏は、狩猟は野生下のアラビアヒョウが直面する数々の危険のうちのひとつでしかないと指摘する。

「複数の要因がありますが、ほとんどは人間の行動に関係しています。ヒョウが捕食する獲物の過剰狩猟や、農業、都市拡大、道路建設による生息環境の破壊といったものです」と、タトワニー氏は述べた。

「家畜を守るためにヒョウが駆除されることもあれば、悲しいことに、見せびらかすためにヒョウを狩る人もいます」

ヒョウはアフリカに起源をもち、のちにアラビア半島やアジア全域に分布を拡大した。さまざまな気候、地形、標高に適応するなかで、固有の特徴をもつ下位集団へと進化し、それぞれの生息環境により適した姿になった。

例えばアラビアヒョウは、中東の暑く乾燥した気候に耐えるように高度に適応していると、ブラウン氏は説明する。

この人目につかない大型ネコはまた、険しい地形の利用にも長け、標高0mから2000m以上までの広範囲に生息する。高い適応能力を持ち、乾燥環境や半乾燥環境で生き抜く術を身につけているのだ。

肉食獣を野生に帰すことが野生動物の保護になるという考えは、直感に反するかもしれない。だが、食物連鎖のどこに位置するにしても、すべての生物は、バランスのとれた生態系のなかで不可欠な役割を果たしているのだと、タトワニー氏は訴える。

「捕食者はピラミッドの頂点にいます。捕食者はまた、生態系の健全性の指標でもあります。かれらがいなくなればバランスが崩れ、多くの変化が起こります。例えば菌類の増加、あるいはその他の代替種の台頭によって、自然環境に不均衡が生じるのです」と、彼は述べた。

アラビアヒョウは健全で均衡のとれた生態系の一部として重要であるだけでなく、ユニークな動物として多大な文化的意義をもつ。アラビアヒョウを絶滅危機から救うことは、人類が自然界の責任ある管理を果たせるかどうかの試金石だと、ブラウン氏は語る。

「(アラビアヒョウは)数千年にわたって物語、詩、芸術作品に描かれてきました。もしも人類が、ヒョウのように象徴的意義の深い生物種に対してさえ保護の努力を怠り、かれらを失ってしまうとしたら、ネズミやナメクジやサソリのような生物に、わたしたちはどれだけ関心を持つでしょうか?」

「人々がヒョウの現状に心を痛めず、かれらを失ってもかまわないと思うなら、わたしたちは生態系全体を失うでしょう」と、ブラウン氏は述べた。

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