
Deema Al-Khudair
ジッダ: 新型コロナウイルスによるロックダウンで増えたおうち時間に、カードゲームやボードゲームを楽しんでいたサウジアラビアの人々は、Netflixの新シリーズ『クイーンズ・ギャンビット』に触発されて、今はチェスに夢中だ。
新型コロナウイルスの感染拡大初期には家庭での人気ゲームといえば、カロム、シークエンス、ウノ、Balootなどだった。しかし、冷戦期を舞台にしたドラマ『クイーンズ・ギャンビット』の人気で、今やチェスを楽しむ人たちが増えている。
『クイーンズ・ギャンビット』は、1960年代のアメリカで、チェスに出会い、才能を開花させていく孤児、ベス・ハーモンの物語だが、少女の成功はその内面の苦悩を代償としていく。
アラブニュースは、このドラマの影響でチェスを始めたり、再開したりしたサウジアラビア人に取材した。
エンジニアのManaf Alamさん(25歳)は大学でチェスを始め、プレイ歴は4年になる。
Manaf Alamさんは「チェスはゆっくりと進めるゲームで多種多様な戦術があります。さまざまなパターンを考え、相手の2手先を読むのです」としたうえで、「他者との交流がサウジアラビア文化において重要な部分を占めることが、サウジ人が選ぶゲームにも示されていると思います」と述べた。
「サウジ人はBalootのような戦略的ゲームを好みます。サウジ人には他国の人とは異なるメンタリティーがあり、トリックの仕掛けられたゲームを楽しむのです」
サウジで心理学を学んでいる学生、Raana Marghalaniさん(20歳)は『クイーンズ・ギャンビット』を見て、チェスに興味を持った。
Raana Marghalaniさんはいう。「チェスをしている時、私はすべての主導権を握っていると感じます。でも私の次の手は、相手の一手にかかってもいるのです」
「チェスは私に、相手の反応や自身の計画に応じて、どのように他者と接していくべきかを教えてくれます。チェスは他のどんなゲームとも違っていて、特別な機会や道筋を提供してくれます。私は多くのことを学びました」
ジッダの「1/15ネイバーフッド カフェ」はチェスを楽しむ人たちの人気のたまり場になっている。
イエメン人のプロダクトオーナー、Alawi Al-Jifriさん(28歳)は2か月前、Netflixで『クイーンズ・ギャンビット』が配信された頃、カフェの客がチェスをしているのに気付いたという。
Alawi Al-Jifriさんが初めてチェスをしたのは9歳の時だが、10年以上もやめていて2年前に再開した。
「私がこのカフェに通い出した1年2か月か3か月前には、チェス盤を見かけることはありませんでした。客の1人が自分のチェスセットを持ち込み、私は2日連続で初めてプレイし、それから誰もがプレイできるように、このままチェスセットを置かせてもらえないかとお願いしたんです。皆が賛成し、チェスをプレイするようになりました」
「今では皆がチェスを楽しんでいます。チェスのルールを知らない人までもが興味をもっています」とAlawi Al-Jifriさんは説明してくれた。
サウジでコンピューター エンジニアとして働いているIbrahim Al-Muslimさん(29歳)は10歳の時からチェスをしている。Ibrahim Al-Muslimさんによれば、アラブ人は競争好きで負けず嫌いの性格であり、手ごたえのある対決に挑むのが好きなのだという。
そのうえで「一般的にいって、アラブ人は困難に打ち勝つことを好みます。また思索家で頭が切れる。それがゲームであれ仕事であれ、困難な課題そのものを好み、すばやく戦略的思考を展開します」と指摘した。
『クイーンズ・ギャンビット』は現在、サウジアラビアで見られているNetflix番組トップ10の中で、堂々の1位を飾っている。冷戦期を舞台に、中毒に苦しみながらも、世界最高のチェス プレイヤーをめざすベス・ハーモンの歩みを中心に描かれるドラマだ。
去年、第1回ハイル国際ラピッドチェス チャンピオンシップが開催され、17か国から200人を超えるプレイヤーが参加し4日間のトーナメントを戦った。