Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

気候変動問題に正面から取り組むサウジを専門家が称賛

「サウジ・グリーン」イニシアティブと「ミドルイースト・グリーン」イニシアテイブは、環境悪化を反転させ、気候変動の問題に取り組むことを目的としている(SPA Files)
「サウジ・グリーン」イニシアティブと「ミドルイースト・グリーン」イニシアテイブは、環境悪化を反転させ、気候変動の問題に取り組むことを目的としている(SPA Files)
Short Url:
05 Apr 2021 12:04:29 GMT9
05 Apr 2021 12:04:29 GMT9
  • 「サウジ・グリーン」イニシアティブと「ミドルイースト・グリーン」イニシアテイブは、環境悪化を反転させ、気候変動の問題に取り組むことを目的としている
  • 2つのイニシアティブは、劣化した土壌の再生、水循環の改善、地域の生物多様性の回復などに貢献する

カリーン・マレック

ドバイ:サウジアラビアの2つの新しい取り組みが、環境保護と気候変動の緩和に向けて、国境を越えた話題と熱狂を呼んでいる。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が3月27日に発表した「サウジ・グリーン」イニシアティブと「ミドルイースト・グリーン」イニシアティブは、サウジアラビアとその地域全体が直面している環境問題に取り組むため、地域協力を呼びかける。

紛争、飢餓、気候変動など、サウジアラビアは伝統的にGCC地域の政策形成や危機への対応の調整において主導的な役割を果たしてきた。改革戦略「ビジョン2030」の一環である「グリーン」イニシアティブは、気候変動の緩和に対する国際目標の達成に向けた地域の取り組みの中心をサウジアラビアが担うとともに、サウジアラビア自身の目標達成に貢献する。

実際、サウジアラビアの計画は、パリ協定の署名が開始されてから5周年を迎えるアースデイ(4月22日)に米国が主催するリーダーズ気候サミットに向け、すでに大きな話題となっている。

慶應義塾大学教授で元日本エネルギー経済研究所所長の田中浩一郎氏は、Arab Newsの取材に対し、「今回の取り組みは、サウジアラビアの指導者たちが、温室効果ガスの排出を真剣に抑制し、地域における森林破壊の悪影響に立ち向かうために行う前向きなもの、称賛に値します」と述べた。

「野心的な目標を掲げた『サウジ・ビジョン2030』は、循環型炭素経済の概念を通じて二酸化炭素排出量を大幅に削減するという王国の決意の表れです」

サウジ・グリーン・イニシアティブは、王国内に100億本の木を植え、4,000万ヘクタールの劣化した土地を修復させ、2030年までに電力の50%を自然エネルギーで発電し、1億3,000万トン以上の二酸化炭素排出量を削減することを内容としている。また、ミドルイースト・グリーン・イニシアティブでは、400億本の木を植え、2億ヘクタールの劣化した土地を修復し、二酸化炭素の排出量を60%削減するとしている。

確かに、この目標は野心的といえる。しかし、サウジアラビアの国立環境コンプライアンスセンターの環境リスク評価専門家であるユセフ・アル=バラウィ氏が説明するように、植樹のプロセスは専門家やエキスパートによって調査され、最小限の水でも生存できる土着の樹木に焦点が当てられている。王国にある2,000種以上の植物のほとんどは、この地域の高温・乾燥環境に適応している。

「植物は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の濃度を下げ、それに伴う砂漠化や土地の劣化などの環境への悪影響を抑えるのに大いに役立ちます」と同氏はArab Newsに語った。

「さらに、植物によって除去できる有害ガスも異なります」したがって、『グリーンベルト』は、交通騒音の吸収・低減などに加えて、都市の大気浄化にも貢献できるのです」

経済の脱炭素化は、この地域の将来のための雇用創出の機会として大いに宣伝されている。(ロイター)

植生は、世界経済を支える3つの重要なシステム(農場、森林、牧草地)の柱である。サウジ・グリーン計画による100億本の植樹は、劣化した約4,000万ヘクタールの土地の修復に相当し、その結果、王国の既存の植生が12倍に拡大することになるとアル=バラウィ氏は言う。

「この取り組みは、地球の保全と、生活の質の向上のための環境保護に積極的に貢献するものであり、世界共通の問題に対する王国の先駆的な役割を確認するものです」と同氏はArab Newsに語った。

「『サウジ・グリーン』イニシアティブと『ミドルイースト・グリーン』イニシアティブを採用し、開始することで、光合成、二酸化炭素の吸収、酸素の生成のプロセスを通じて、空気を浄化する植生の役割を強化できます。環境を守ることは、政府や人々を含めたすべての人の責任です」

Noor Energy社の共同設立者兼CEOであるモハメド・アル=ガザル氏も同様に前向きである。サウジアラビア皇太子の取り組みは、サウジアラビア、中東、そして世界の生活の質と環境を飛躍的に向上させる可能性があると述べ、気候変動や公衆衛生が今日の世界的な難題であることを考えると、これは特に重要なことであるという。

Noor Energy社の共同設立者兼CEOであるモハメド・アル=ガザル氏(提供写真)

「サウジアラビアにある植物の多くは、この地域が原産地ではありません。この国は化石燃料の大国でもあり、化石燃料は世界を動かし続けています。しかし、サウジアラビアは、砂だらけの砂漠を再緑化し、エネルギー供給をグリーン化することで、世界をより高いレベルに引き上げることに果敢に取り組んでいます」と同氏はArab Newsに語った。

「これは、世界をすべての人にとってより良い場所にするための、サウジアラビアのG20のリーダーとしての役割の延長線上にあるものです」

GCC地域は長い間、化石燃料の世界的な主要供給国であったが、再生可能エネルギーは自国のエネルギーミックスを補完し、脱炭素化とガス排出量削減のため、(例とすれば)クリーンな水素燃料のような、環境に優しい代替手段を提供する。

「この地域のさまざまな国が、王国の傘の下で共通の目標に向かって協力しているのを見るのは素晴らしいことです」とアル=ガザル氏は語った。「これは世界中の同様の取り組みに拍車をかけ、サウジアラビアは意欲的なグリーン革命の核となることでしょう」

アラビア半島の約70〜90%は、過去と現在の人間の活動によって砂漠化の脅威にさらされている。大規模な植林と土地の修復の取り組みは、劣化した何百万ヘクタールもの土地に希望をもたらすだろう。

「劣化した土壌の再生、水循環の改善、生物多様性の回復、収入と生計を立てる機会の増加、気候変動に対する地域の回復力の向上など、このようなプロジェクトの利点は、炭素の吸収にとどまらないのです」と、ドバイにあるバイオサリン農業国際センターのプログラムディレクターであるセラ・トゥトゥンジャン氏はArab Newsに語る。

「長期的には、地域の気象パターンを変化させる可能性もあります。残念ながら、多くの人は環境を経済的・社会的利益のために用いることのできる資源といまだに考えており、生態系への影響をほとんど考慮していません。そのため、環境保護を目的としたイニシアティブやキャンペーンは、こうした考え方を変える上で大きな役割を果たします」

経済の脱炭素化は、この地域の将来のための雇用創出の機会として大いに宣伝されている。(ロイター)

アラブ首長国連邦を拠点とするグリーン・ソーシャル・エンタープライズ「Goumbook」の創設者兼マネージング・ディレクターであるタチアナ・アントネリ・アベラ氏にとって、サウジアラビアが世界有数の産油国から、よりグリーンな世界を築くリーダーへと変貌を遂げることは、非常に心強いという。

「皇太子は、気候危機との戦いを進める上での王国の責任を認識しており、経済を維持しながら環境を守るために行動する準備ができているようです」とArab Newsに語る。

「サウジ・グリーン・イニシアティブは、石油依存からの経済の多様化を目指す明確な動きです。現在でも、王国の電力のうち再生可能エネルギーによるものは1%未満です」

2030年までに再生可能エネルギーによる発電量を50%にするというサウジ・グリーンの目標は、圧倒されるものではあるが、少なくとも隣国の目標と見事に一致している。UAEは2050年までに同じ目標を達成したいと考え、アブダビは2030年というより野心的な期限を設定している。

「地球環境問題の規模と範囲は非常に大きく、一国だけでは対処できません」とアベラ氏は語る。「願わくば国連の持続可能な開発目標2030アジェンダに沿った、国境を越えた共同のアプローチが必要なのです」

BloombergNEFのアソシエイトであるアントワーヌ・ヴァグネール=ジョーンズ氏は、パンデミックが発生する前に同地域全体で二酸化炭素の排出量が急増していたことを考えると、サウジアラビアの取り組みは理にかなっていると述べる。同氏は、2019年の財政収入の3分の2を石油が占めていたにもかかわらず、サウジアラビアの経済を化石燃料から切り離すことが短期間で進展したと指摘している。

「経済の脱炭素化は、新技術に結びついた雇用創出や、クリーンな電力からの水素製造など、無数の機会をもたらします」とアントワーヌ・ヴァグネール=ジョーンズ氏はArab Newsに語った。「王国は、このイニシアティブを既存の目標に合わせました。移行を推進するためには、その掛け声がしっかりとした政策と具体的な施策に変換していく必要があります」

_____________________

  • Twitter: @CalineMalek
特に人気
オススメ

return to top