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サウジアラビアは異宗教間対話にオープン_反ユダヤ主義撲滅・監視担当米国特使が発言

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30 Jun 2022 12:06:20 GMT9
30 Jun 2022 12:06:20 GMT9
  • 歴史学者とホロコースト研究者、サウジアラビアの異宗教間対話へのオープンさに「勇気づけられた」
  • イスラエルとパレスチナの紛争はユダヤ教徒とイスラム教徒の間に誤解と反感を招いた。

ロジエン・ビン・ガッセム&ラワン・ラドワン

リヤド:反ユダヤ主義監視・撲滅担当米国特使デボラ・リップシュタット氏が、アラブニュースのインタビューにて、反ユダヤ主義やイスラム教徒へのヘイトといった重要なトピックを取り上げる際は、オープンで正直であることが変化を起こす方法であると述べた。

リップシュタット氏は現実社会での反ユダヤ主義に何度も直面している。英国にてホロコースト否認論者のディヴィッド・アーヴィング氏がリップシュタット氏に対して名誉毀損訴訟を起こした事で彼女は最もよく知られているだろう。リップシュタット氏は2000年に勝訴し、裁判官はアーヴィングを「人種差別と反ユダヤ主義」に携わる「ネオナチ論者」であると評した。

リップシュタット氏の訪問は、ジョー・バイデン米大統領の来月のサウジアラビア訪問を前に行われた。以前にトゥルキ・アル・ファイサル王子がアラブニュースの『フランクリー・スピーキング』のインタビュー内で米国とサウジアラビアの関係は一進一退だが戦略的と説明した際に、両国の関係は「下降の一途」をたどっていると述べた。そのタイミングでの訪問になる。

5月24日、カマラ・ハリス副大統領はエモリー大学の歴史学教授であるリップシュタット氏を特使に任命した。それからわずか1カ月後、サウジアラビアへ初の海外訪問を行い、マスコミに「サウジアラビアはアラビア湾岸地域での非常に重要な国で、私を迎え入れる意欲とオープンさを示している」と語った。

リヤドのアラブニュース本社で行われた討論会の傍らにいるリップシュタット氏(AP通信写真/バシール・サレー)

リヤドのアラブニュース本社で行われた討論会の傍らで、リップシュタット氏は「ユダヤ人についての描写の中で、過去数年間、しばしば数十年間、ユダヤ人は悪者扱いされてきました。ユダヤ人は非常に軽蔑的な言葉で語られ、サウジアラビアの外にも、他の全てのイスラム圏にも影響を及ぼしました」と言及した。リップシュタット氏は考え方の変化を目の当たりにし、変化の必要性を認識する人々に出会い、「格別に勇気づけられました」と付け加えた。

「それが最初の一歩です。個人であれ、コミュニティであれ、家族であれ、国家であれ、自分自身の欠点を認識し『変わりたい』と言うことです。それができるのは正直な人だけです。私はここ(サウジアラビア)で正直な人たちを見てきました、とても勇気を与えることだと思います」とリップシュタット氏は述べた。

長年に渡り、さまざまな宗教団体や学者、リーダーたちとの間で異宗教間対話が奨励されてきた。リップシュタット氏は討論会で、オープンな対話は根本原因にたどり着き、認めるための手段であり「偏見がどのような働きをするのか、ユダヤ人へのヘイトや反ユダヤ主義がどのような働きをするのかを理解するためのものです。さらに重要なことは、あるグループに対するヘイトが他のグループに対するヘイトに変わる作用です。あらゆる偏見には同じ動作原理があります。人種差別であれ反ユダヤ主義であれ、イスラム教徒に対するヘイトであれ、それが何であれ、 同じ方法で作用します」と述べた。

同氏はこうも述べている。「いわゆるサイロ・アプローチ、一方とは戦うがもう一方とは戦わないといった事はできません。全面的に戦わなくてはいけませんが、反ユダヤ主義を真摯に受け止める必要もあります。多くの国で、反ユダヤ主義を間違いの無いよう真摯に受け止めることに失敗しています、それがあまりにも多いのです。私がサウジアラビアで非常に興味深く思い勇気づけられたことは、物事が変わりつつあるということです」

宗教学者や異宗教間の研究者たちはこのような議論や異文化間の対話が橋渡しとなり、平和を促し、古くからの敵対意識を終わらせる手段であると考えている。

2016年、アメリカユダヤ人委員会と北米イスラム協会はイマーム・モハメド・マジッド氏とリップシュタット氏を含む31名のメンバーからなる、一見ありそうもない同盟を発表した。この発表は米国や欧州全土で外国人排斥や反イスラムのレトリックが広がる中行われた。

戦後欧州と米国ではヘイトスピーチや反ユダヤ主義に対し異なるアプローチを取っており、欧州ではホロコーストの否認を違法とする国もある。

「我が国は完璧ではありません。大統領も、私の上役の国務長官も、他のリーダーたちも、私たちの欠点を認めています。私たちは世界に向けて、『私たちは完璧だから、あなた方は変わるべきだ』と説教をしているわけではありません。私たちが言っていることは、私たちに関係する問題が米国内にあり、そして米国外にもあるということです」とリップシュタット氏は述べた。

「私たちは説教をしに来たのではありません。話をしたり、教えたり、どうしたら物事が良くなるかを共に切り拓くために来たのです」

デボラ・リップシュタット氏の訪問は、来月のジョー・バイデン米国大統領のサウジアラビア訪問を前にして行われた。(AN写真/バシール・サレー)

リップシュタット氏の主な専門分野の内の一つが、ホロコーストの起因についての研究である。数十年に渡り、また複数の政権の中で、同氏は米国ホロコースト記念博物館の歴史コンサルタントとして活躍してきた。ビル・クリントン氏とバラク・オバマ氏の両氏はリップシュタット氏を米国ホロコースト記念評議会員に任命し、ジョージ・W・ブッシュ氏は同氏にアウシュビッツ解放60周年記念式典にホワイトハウスを代表して出席するよう依頼した。

「異宗教間対話と異宗教間の協力を心から信じる者として、単なる対話だけということはありえません。対話というのは、単なる言葉に過ぎませんから」と、同氏は述べた。

リップシュタット氏はムスリム世界連盟事務局長ムハンマド・ビン・アブドゥルカリム・アル・イッサ博士が、かつてのナチスの絶滅収容所であるアウシュビッツを訪問したことが、同氏にとっていかに印象的で感情を揺さぶるものであったかを強調した。アル・イッサ博士は2020年にアメリカユダヤ人委員会と著名なイスラム教指導者からなるグループに加わり、それは「前例の無い訪問」と呼ばれた。

「ホロコーストの研究者として、また何度もそこを訪れた者として、そして反ユダヤ主義の研究者として、私の知っている限りの態度の変化、この国の中の変化、そしてユダヤ人の描写の変化…私はとてつもなく心を動かされました」とリップシュタット氏は述べた。

リップシュタット氏は初めてサウジアラビア訪問の際、「どうすれば物事が良くなるのかを共に切り拓きたい」と主張した。(AN写真/バシール・サレー)

イスラエルとパレスチナの紛争をめぐる対話は、これまでかなりの間、宗教間にくさびを打ち込み、全ての宗教に関わるものに対立感情を高めてきた。リップシュタット氏は人々が問題を、特に政治的な問題を混同していると述べ、それについて「我が国は非常に重く受け止めている」と述べた。

「反ユダヤ主義は政治的問題、イスラエル人とパレスチナ人の問題を超越しています。そういった問題が深刻でないと言っているわけではありません、もちろん深刻です、しかしそれらの問題が解決されるまで反ユダヤ主義に対処することを待つわけにはいきません。これらの問題は同時に対処するべきです」とリップシュタット氏は語った。

サウジアラビアの駐米大使、リーマ・ビント・バンダル・アル・サウード王女は最近リップシュタット氏と会談し、サウジアラビアの平和、寛容さ、異宗教間対話の促進における意義深い前進を伝えた。

リップシュタット氏はこの会談を「素晴らしかった」と評した。

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