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松前真奈美:日本を代表するゲーム音楽作曲家が輝かしいキャリアを振り返る

松前氏は有名ゲームシリーズ『ロックマン』の作曲で知られる。(提供)
松前氏は有名ゲームシリーズ『ロックマン』の作曲で知られる。(提供)
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24 Jan 2024 03:01:03 GMT9
24 Jan 2024 03:01:03 GMT9

アミン・アッバス

ドバイ:松前真奈美氏は日本の有名ゲーム音楽作曲家であり、カプコンの多数のゲームに携わったことで知られる。代表作は『ロックマン』(海外では『メガマン』として知られる)、『天地を喰らう』、『戦場の狼』、『マジックソード』などだ。

松前氏はアラブニュース・ジャパンの独占取材に応じ、ゲームのインスピレーションの源について語った。「大学生の頃、任天堂のファミコンが発売されて、当時人気だった『スーパーマリオブラザーズ』をプレーしました。興味を持ちはじめたのはそこからでした。それからいろいろなゲームをプレーしましたが、いちばん好きだったのは『ファイアーエムブレム』シリーズです」

松前氏は日本に拠点を置くレコードレーベルの創立メンバーのひとりでもある。彼女によれば、自身が音楽に目覚めたのは父親の影響だという。「父は私を音楽の世界に導いてくれました。小さい頃、父がアコースティックギターを弾いてくれたんです」と、彼女は言う。「私が急にオルガンで曲を弾きはじめた時、父は驚いて、そのあとピアノ教室に通わせてくれました」

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「そのあと、私はピアノを続け、大学に入り、カプコンに入社し、フリーランサーになり、音楽の世界で35年以上を過ごしてきました。父がギターを弾いていなかったら、私は音楽家になっていなかっただろうし、まったく別の人生だったと思います」

彼女の最初のプロジェクトは麻雀ゲーム『井出洋介名人の実戦麻雀』であり、ゲーム音楽を作曲するのはこれは初めてだった。「実験的な音楽作品で、私にとってゲームの作曲を任せられるかどうかのテストでした」と、彼女は振り返った。「私はテストに合格し、1987年にファミコンの『ロックマン』の仕事を与えられました」

松前氏によれば、仕事が決まったのは1987年8月で、ゲームの発売予定は12月だった。そのため、彼女はすべての音楽を4カ月で書き上げなくてはならなかった。のちに同作品は大成功を収め、彼女の代表作のひとつとなった。

『ロックマン』の成功を受け、松前氏は続編の仕事を割り振られた。「別の方(立石孝氏)が『ロックマン2』の作曲をしていましたが、企画スタッフが前作のエンディングと『ロックマン2』のオープニングを繋げるプロダクションを思いついて、私が『ロックマン』のエンディング曲を提供したのです」と、彼女は振り返った。

「私は編曲を担当しました。また、エアーマンの曲の中盤のメロディを書いたのも私です。こうした経緯で、エンドクレジットに名前を載せていただいたのですが、ゲーム全体にはほとんど関わっていません」と、彼女は説明した。

松前氏はのちに、シリーズ10作目でも作曲に携わった。「過去作の作曲家全員が参加して曲作りをすることになったのです」と、彼女は語る。

「画面を見て、私はニトロマンのステージが気に入り、いくつか曲を書きました。でも三和音で作曲するのがすごく久しぶりで、チップチューンも長く使っていなかったので、2曲はお蔵入りになりました。最後の3曲目はスピード感のある曲になり、好評をいただいてほっとしました」と、彼女は述べた。

世界でもっとも有名なゲームのひとつとなった『ロックマン』シリーズの制作に携わったことについて、感想や思いを尋ねられ、松前氏はこう答えた:「私が『ロックマン』の曲を書いた時、シリーズがここまで長く続くとは考えもしませんでした。でも、『ロックマン2』の大ヒットで風向きが変わったと思います」。

「ファンの皆さんの間で、私は「ロックマンの母」と呼ばれていると聞きました。今後も続いていくと思いますし、携わることができてとても光栄です」と、松前氏は補足した。

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松前氏が音楽を手掛けた別の有名ゲームに、『ファイナルファイト』がある。「最初、作曲は別の方(坂口由洋氏)が担当していたのですが、いろいろ事情があって、全曲を書き直さなくてはいけなくなりました」と、彼女はアラブニュース・ジャパンに制作秘話を明かした。「私は当時、別の作品を担当していたのですが、締め切りが1カ月後と聞かされ、他作品を中断して作曲に打ち込みました」

「オープニングと第1ステージの曲は1日で書き上げて、予定通り納品できました。でもメインステージの曲を順番通りに作曲していく時間がないとわかり、このプロジェクトにはカプコンサウンドの全員が参加することになりました」と、彼女は語った。

松前氏はまた、『天地を喰らう』のゲーム音楽も手掛けた。1989年発売のこのゲームは、本宮ひろ志氏による同タイトルの漫画が原作で、アーケードゲームとしてリリースされた。

「アーケード部門に移ってから初めての作品だったと思います」と、松前氏は語った。「三国志演義がベースにあるゲームなので、BGMは中国風です。胡弓の音色は定番ですが、ゲームのアクション要素に合わなかったので、柔らかなトーンを使うのではなく、中国音階を採用しました」

松前氏は、1979年の漫画『エリア88』のゲーム版(海外では『U.N. Squadron』として知られる)の音楽も彼女の手によるものだ。「企画スタッフからは、映画『トップガン』のような気分の高揚する曲を作ってほしいと言われました」と、彼女は明かした。「そこでビデオライブラリーから『トップガン』を借りてきて、家で何度も見ました。私が書いた曲は、コックピットの中の孤独をイメージした、メランコリックなメロディになりました」

松前氏は、乗馬シミュレーションゲーム『ダービースタリオン』にも音楽を提供した。カプコンを退社し、結婚し、東京に移住してフリーランサーになった彼女が、初めて手掛けた仕事だ。「アクションゲームやシューティングゲームと違って、このときは思考を邪魔しない環境音楽を意識しました。ただし、メロディは覚えやすいものにしようと思っていました」

松前氏はさらに、ゲーム『ショベルナイト』では自身が作曲を手掛けるだけでなく、自身のプロダクションレーベルを通じても作曲・編曲に携わった。

「私はいつもそれぞれのゲームに合った曲を書くようにしています」と、彼女は輝かしいキャリアを振り返った。「ゲームにちっとも合っていない音楽を聞かされたら、プレーヤーはがっかりしますよね。これからもプレーヤーの視点に立った曲作りを続けるつもりです」

カプコン時代の印象深い最良の思い出について尋ねられ、松前氏は次のように答えた:「毎年、全社員が参加した慰安旅行はとても印象に残っています。飛騨高山、東京ディズニーランド、伊勢志摩など、いろいろな場所に連れて行ってもらいました。それまで関わりのなかった部署の人たちと話して、とても楽しい時間を過ごしました」。

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松前氏は2014年にドバイとアブダビを、2018年にクウェートとジェッダを訪れた。中東訪問の印象を尋ねられ、彼女はこう答えた:「日本では見られないような美しいモスク、スパイシーな食べ物、現代的なビルと旧市街の好対照が印象的でした」。

サウジアラビア訪問は特別だったと語る彼女は、「ヒジャブとアバーヤを身につけなくてはいけない機会があり、貴重な体験でした」と述べた。

「それから、私はイベントでそうした服装で演奏したのですが、女性たちが私の演奏をすぐ近くで見てくれたことにとても感動しました。今は多少変わっているかもしれませんが、私たちの社会ではまだ女性が最前線で活躍することが少ないので、私のパフォーマンスを見て、何かが心に残り、女性が秘めた可能性に気づく、そのような機会を提供できていたら嬉しいですね」

ゲーム音楽作曲家の道を志す後進へのアドバイスとして、松前氏はジャンルを問わずあらゆる音楽を聴くことを勧め、「そうすれば、シーンに合った音楽を頭の中から選んで作曲できますから」と語った。

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