レベッカ・アン・プロクター
アルウラ: サウジアラビア、アルウラの広大な砂漠の景観の真っ只中に展示された14点の大規模な芸術作品は取り除かれた。しかしそれらが発信したメッセージは、芸術愛好家のみならず、この歴史的な場所を訪れるすべての人びとの胸にとどまっている。
第1回「Desert Xアルウラ」は3月7日で幕を閉じ、サウジアラビア全国、中東、米国出身のアーティストたちを、サウジアラビアの最ものどかで美しい場所の一つへ集結させた。
このイベントは1月31日、アルウラのサウジアラビア王立委員会後援により開幕された。企画はDesert X の芸術監督ネヴィル・ウェイクフィールドと、サウジアラビアの学芸員ラニーム・ファルシ並びにアヤ・アリレーザが担当した。
「歴史上今この時期に Desert Xのような展覧会を行ったことは、この上なく重要な意味をもちます」とファルシは言う。「かつてはこのイベントは比較的来訪者の集まりにくいものでした。ところが今では世界中から人々が訪れます。」
https://youtu.be/KZ9zJ1-WpOU
ファルシ氏はこの展覧会のことを「国境を越える対話」と表現する。
「これは芸術と文化の対話、つまり国境を越えて私たちすべてを結びつけてくれるものなのです」と彼女は言う。「展覧会を通して私たち全員がこの会話に参加するよう招かれているのです」
サウジアラビアの人々は砂漠に特別な思いを寄せています。砂漠の話をする時、彼らは胸がいっぱいになるのです。
ラシェド・アル・シャシャイ、サウジアラビアのアーティスト
この展示会はサウジアラビア初の敷地全体を展示場とした大規模展覧会であり、1960年代後半と1970年代初頭の『ランドアート』という芸術運動にヒントを得たもので、『ランドアート』はロバート・スミスソン、リチャード・ロング、ハンス・ハッキー、デニス・オッペンハイムといった人々によって先導された。
「ランドアートに関する私の過去の経験は、そのスケールの大きさに限界がありました」とサウジアラビアのアーティスト、ザーラー・アル・ガンディは言った。彼の作品は昨年の夏サウジアラビアの第2回ベネツィア・ビエンナーレ展に展示された。 「当時はたった2m四方の大きさの作品しか制作していませんでしたが、私の国で80m級のアートを制作しました。それによって独自の制作意欲とエネルギーが湧きましたね」
『過去の断片』というアル・ガンディの作品は、ブリキ製のデーツ(ナツメヤシの実)容器約6千個を、アルウラの息を呑むような素晴らしい砂漠を背景に80mに渡って並べたもの。そのブリキ箱が砂漠の日の光を受けて輝いていた。
アルウラの豊かな農作物、湧き水、ヤシの木立への謳歌として、アル・ガンディはもともと デーツを保存して持ち運ぶのに使われていた容器を再利用したのだった。その結果として長方形の光の共演が生まれ、あたかも砂漠の景観の中をキラキラと光る川のように見えていた。
そこから少し歩くと、レバノンの彫刻家ナディム・カラムによる人と花の大規模な彫像群があった。『パレードで』というタイトルがつけられ、その多種多様な彫像の形状が何千年もの昔アルウラを経由していった大規模隊商を彷彿とさせていた。
「私はいつも砂漠のその広大さから計り知れないパワーを感じていました。そのパワーとの対話をする機会が与えられ、非常に貴重な体験でした」とカラムは言う。
「アルウラとの出会いは驚きの連続でした。巨大でこの世のものとは思われない岩、古代文明跡、そして想像の中で聞こえる隊商のゆっくりとした歩みとざわめき。そこでは時間というものが全く別の意味を持っています」
サウジアラビアのアーティスト、ラシェド・アル・シャシャイはこう語る:「サウジアラビアの人々は砂漠に特別な思いを寄せています。砂漠の話をする時、彼らは胸がいっぱいになるのです。」
それぞれの作品がメッセージを発している。アル・シャシャイの『ある簡潔な文章』は、通常物を入れて運ぶために使われるプラスチック製の荷台で作ったピラミッドのような構造物で、それはアルウラの交易の歴史を映し出しており、その展示場所を物やアイデアを交換する中心地として表現していた。Desert X アルウラで再び生まれ出たパワフルな概念だ。
「アート作品の多くがこれらのメッセージを観る人の耳元へたとえ話をささやくように伝達していきました。まるで砂漠を渡る風の音のように」とアル・シャシャイは語った。
このユニークな展覧会は、かつて古代の隊商たちの十字路であった場所に、世界中からのアーティストたちを招き寄せ、第1回Desert X に特別な感動をもたらし、自然美のみならず異文化間の対話を賛美した。それこそが国境を越える芸術のあるべき姿だ。
「サウジアラビアは豊かな文化をもつ国で、芸術が歴史の中で長い間その一部となっています」とファルシは言う。「過去数十年にわたる草の根的アプローチが今ようやく芽を出し、国家レベルに行き渡ってきました」
この展覧会は文化的「孤立」ではなく文化的「包括」がテーマとなっている、とアル・シャ シャイは続けた。
「芸術は異なるものの見方を与えてくれると同時に、人間性の共有に基づいた理解をはぐくんでくれると信じています。」