
日本で最も古く、最も有名なアニメスタジオのひとつであるトムス・エンタテインメントは、1964年の設立から60周年を迎えた。
同スタジオは、『ルパン三世』、『それいけ!アンパンマン』、『名探偵コナン』といった数々のアニメを制作した制作会社として知られている。
60年以上にわたり、トムス・エンタテインメントは中東地域を含む世界中の観客にアニメーションの魔法を届けてきた:『 宝島』、『家なき子』、『ベルサイユのばら』、『名探偵コナン』など多数。
トムス・エンタテインメントの竹崎忠代表取締役社長はアラブニュース・ジャパンの取材に対し、スタジオ設立の経緯を次のように語った: 「東京ムービーは1964年に設立されました。当時、日本ではテレビアニメが急速に普及し、フジテレビと虫プロダクションが制作した『鉄腕アトム』の成功が大きな話題でした」
「この反響を受け、TBSテレビもアニメ制作事業に乗り出すことになりましたが、当時はまだアニメを制作できる制作会社がほとんどなかった時代だったため、『舞台背景があって、その前でキャラクターを動かす』という似たようなノウハウを持った人形劇制作会社ならアニメも作れるのではないか…という発想から人形劇に携わっていた藤岡豊氏に協力を依頼。こうして手塚治虫原作の『ビッグX』のアニメーション制作が始まり、1964年8月からTBSテレビにて放送されました」
「その後、東京ムービーは『巨人の星』『アタックNo.1』など多くのヒット作を生み出し、アニメ業界の黎明期を支え、現在のトムス・エンタテインメントへと発展していきました」と付け加えた。
竹崎氏は、スタジオが60年の間に直面したいくつかの困難について説明した。彼によれば、それは以下のようなものだった:
すべての作業は手作業で行われ、多くの時間と労力を要した。また、手作業による品質のばらつきも問題で、統一感を保つのが難しかった。また、紙ベースの資料が多いため保存・管理も大変で、紛失や劣化のリスクもあった。
デジタル化が最初に進んだのは、着彩と撮影(素材の合成)の工程である。
コンピュータ上で作業するようになったため、セルやフィルムは使われなくなった。
現在ではデジタル作画ツールが普及段階にあるが、アニメーターにとって新たなツールを扱う技術の習得は大きな負担であり、教育支援体制の確立やフォーマットの標準化は引き続き課題として残っている。
COVID-19の大流行以前から、日本の少子化や、アニメーターのような一人前になるのに時間がかかる職業を敬遠する昨今の世界的な傾向、構造的な低賃金労働などの要因により、アニメ業界はアニメーター不足に直面していた。
COVID-19の発生以降、「巣ごもり需要」の影響もあり、日本のアニメは定額制動画配信サービス(SVOD)を中心に海外で広く視聴できるようになり、ビジネスチャンスが拡大し、制作本数も増加した。しかし、その一方で制作現場は逼迫し、先述のアニメーター不足はより顕著になっている。
トムス・エンタテインメントといえば、『宝島』や『家なき子』、『ベルサイユのばら』などの名作が人気だ。「 20年以上前にライセンスされたとはいえ、これらの古い作品が中東で人気が出るとは思っていなかったので、最初は少し驚きました。しかし、相当数のファンがいることは否定できません。2019年にリヤドで初めて開催されたアニメの祭典(サウジアニメ・エキスポ)に行ったとき、これらの作品の曲、特に『宝島』のオープニング曲「宝島」が人気で、歌手と観客が一緒に歌っていたのにはとても驚きました。30年以上前の歌やアニメが今でも楽しまれていることが本当に嬉しく思いました」と語った。
竹崎氏は、60周年というこの特別な機会と、トムス・エンタテインメントが長年にわたってアニメ業界に与えた影響について、 「トムス・エンタテインメントは、1964年の『ビッグX』を皮切りに、様々なジャンルのアニメを数多く制作し、日本のアニメの礎を築き、アニメ文化の伝承と発展に貢献する一翼を担ってきました」
「特に『ルパン三世』『それいけ!アンパンマン』『名探偵コナン』などの作品は、国内外で高い評価を受けており、ストーリーの質の高さやキャラクターの魅力で、多くのファンを魅了してきた。また、早くから海外市場を視野に入れたグローバル展開を積極的に推進してきたことで、日本のアニメが世界中で愛されるきっかけを作れたと自負しています」と語った。
「近年、アニメ産業の持続可能な未来を創るために『アニメSDGs』という構想を掲げ、制作面・ビジネス面・人材育成など、日本のアニメ産業を取り巻く様々な課題の解決にも取り組んでいる。『アニメSDGs』を実現し、日本のアニメ産業全体の持続・発展を目指すことで、これからも世界中の人々が日本のアニメを楽しみ、多くの感動体験を創造できる未来の実現に向けて挑戦を続けていきたい」と語った。
竹崎氏によると、2025年1月からは、週刊少年ジャンプ(集英社刊)にて連載中の人気シリーズ『SAKAMOTO DAYS』を放送する予定だという。
また、1994年にテレビアニメ化された『魔法騎士レイアース』を、放送30周年を記念した「新アニメプロジェクト」として始動させることも発表した。