


スジャータ・アッソムル
ドバイ:サウジアラビア人デザイナーのアルジャウハラ・サディーム・アブドルアズィーズ・アルシェハイ氏から話を聞くと、ココ・シャネルの精神を受け継いでいるようにも聞こえる。「ファッションとは、衣服だけに存在するものではありません。空にも街にもファッションは宿っています。理想や生き方、周りの出来事とも関わりがあります」
持続可能性ブランド「Sadeem」に所属する若手ファッションデザイナーのアルシェハイ氏は、現行コレクションとして「Abwaab」(扉)を掲げている。「過去を手放すことなく前進する国の姿から着想を得ています。サウジアラビアは断固とした決意をもって、数々の未開発資源を開拓してきました」
同氏のコレクションは今週金曜日の夜、「ファッション・フォワード・ドバイ」(FFWD)のランウェイを歩く。
高級感を中心に据えたSadeemのデザインに、シルクが生地として採用されたのは当然ともいえる。「シルクは繊細で高級感がある天然繊維です。耐久性と生分解性も備えています。また、私は環境に優しい織物工場としか取引しません」と同氏は語る。
トレンドの後追いをするのはアルシェハイ氏のやり方ではない。「要らなくなった商品は、友達にあげるか、交換するか、古着屋に持っていくか、慈善団体に寄贈するなどしてほしいです」
自分への見返りだけを求めて買うものではない。同氏のモチーフの多くはサウジアラビア固有の民間伝承や建築様式、衣装、宝飾品を参考にしているので、そのファッション性はアラブの遺産とモダンデザインを融合したものである。「主役となっている幾何学的な形状と三角形は、アラブの遺産のデザイン美学を反映したものです」
現代のアラブ人女性をターゲットにした衣装だが、世界的な訴求力も兼ね備えている。製作にあたるのは、ニューヨークのガーメント・ディストリクト、ドバイ・デザイン・ディストリクトに加え、リヤドにあるアルシェハイ氏のスタジオだ。
「MENA地域で新進気鋭の若手の売り込みを支援するファッション財団を作り上げることが夢です」と同氏は話す。「職人芸による伝統的なモノ作りを守っていくことが主眼になります。創造的思考の持ち主を繋ぐ強力なネットワークを構築するとともに、持続可能な共通目標へ向けた戦略的解決策を実践するコミュニティとの協力を進めていきたいと考えています」
Sadeemのようなファッションレーベルこそが、アラブファッションの話題を世界に広める役割を果たしてくれるのだろう。