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アニメ版「鬼滅の刃」、新型コロナ禍の日本でヒット

2020年12月4日、東京の書店の棚に並べられている「鬼滅の刃」シリーズ最終章の第23巻。(共同ニュース / AP)
2020年12月4日、東京の書店の棚に並べられている「鬼滅の刃」シリーズ最終章の第23巻。(共同ニュース / AP)
鬼滅の刃 (©2016 吾峠呼世晴 / 集英社) からの1シーン。(AP)
鬼滅の刃 (©2016 吾峠呼世晴 / 集英社) からの1シーン。(AP)
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04 Mar 2021 06:03:15 GMT9
04 Mar 2021 06:03:15 GMT9

東京:鬼は、あらゆる場所にいる。時として紫色の粘液のように広がり、隠れ潜み、殺めるのだ。

伝奇アクションアニメ「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」で描かれる恐ろしい窮状は、新型コロナ禍に苦しむ日本で大ヒットし、その共感の波は世界へと拡大している。

「鬼滅の刃」は、すべての実写映画、そして、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」さえも超えて、日本で最大の興行収益を上げた映画となった。

外崎春雄監督による2020年のこの映画は、先月マイアミで限定上映された。2021年のアカデミー賞にノミネートされる条件に米国での上映が含まれているからだ。ノミネーションの発表は3月16日、受賞式は4月26日に行われる。

東京でヘアスタイリストとして働く那須明菜氏は、純粋な心を持ったヒーローが逆境にも関わらず他者の生命を救おうとする物語が、特に現在新型コロナウイルス禍真っ只中の日本で感動を呼んだのだと語る。

「沢山の登場人物が出てきますが、それぞれが、鬼さえもが、唯一無二の自身の物語を持っています。この映画を見ると、誰もが自分が経験してきたことを思い出して登場人物に共感してしまうのです」と、那須氏は言った。

あまりにも心を奪われて映画館で泣いてしまったシーンがあったと那須氏は言う。主人公の正義感に強く共感したのだという。

これは普遍的なテーマを持った映画である。家族愛、そして、誰にも理解できる素朴で平和な暮らしへの思い、鬼が突然現れるまで当たり前だったそんな生活への思慕が描かれている。那須氏を初めとするこの映画のファンの一部は、この物語の鬼たちは新型コロナウイルス禍の暗喩なのだと考えている。

世界の他の国々と同様、日本もまた新型コロナウイルス禍によるダメージを被った。経済的というだけではなく心理的にも傷を負ったのだ。人々は不安にかられている。喪に服している人もいる。日本での新型コロナウイルス禍関連のこれまでの死者数は8,000人で、他の国々と比較するとはるかに少ないが、現在増加中である。ワクチンの接種はようやく始まったばかりだ。

日本ではロックダウンン措置は講じられたことが未だになく、映画館も客席間のソーシャル・ディスタンスを確保しつつ営業を継続している。

「鬼滅の刃」の主人公竈門炭治郎は、鬼たちから妹を救うために剣士となることを決心し、最後には世界を救う。伝説的な剣豪である武蔵のように強く、それでいて愛らしく純真でキュートな目をした主人公は、色鮮やかなアニメーション映画の中で息を呑むような剣技を披露する。

悪夢めいた列車の旅を物語の舞台にしたこの映画は、現在Netflixでストリーミング中の、TV放映時に人気を集めたアニメシリーズの延長線上にある。

TVアニメの第2期は日本では年内に放映される予定だが、子供向けのシリーズとしての適切性という観点からの議論が既に巻き起こっている。生々しい性的な描写は無いものの、物語の舞台が遊郭となっているからである。

原作のコミックシリーズは、吾峠呼世晴 (ペンネーム) の作品で、2016年から週刊少年ジャンプに連載された。作者が公の場に姿を見せたことはこれまで無いが、米国のニュース雑誌タイムの「次世代の100人」に選出されている。

北アメリカでの日本の漫画とアニメの出版や配給を行っているビズメディアの少年ジャンプ英語版のアンディ・ナカタニ編集長は、「鬼滅の刃」は同社のベストセラーで、米国で3百万部超売り上げていると述べた。

「基本的には成長物語なのです」と、ナカタニ編集長は言った。

「物語を通して、主人公は生き延び、成長し、何とか諦めずに希望を持ち続け、自身の存在の核を保ち続けます。恐らく、世界で現在起きている事すべてが、多くの人々がこの忍耐の物語にとりわけ共鳴する素地となっているのはないかと思います」と、同編集長は述べた。

日本国内では、「鬼滅の刃」からビデオゲームやフィギュア、主人公の耳飾りの模倣品、さらにはマクドナルドのハッピーセットに付属するシールといった多様な商品が派生している。

米国でアニメや漫画の配給と出版を行っているTOKYOPOPの創業者で最高経営責任者のストゥ・レヴィは、日本の民間伝承と現代的な格好良さを組み合わせている、「鬼滅の刃」のアプローチが大好きなのだと言う。

「『ウォーキング・デッド』といった最高のゾンビ物が米国人に対して持っているのと同様の魅力がこの作品にはあります」とレヴィ氏は述べ、「鬼滅の刃」の米国での権利を得ようとしたものの競合する他企業に獲得されてしまったと付け加えた。

「主人公の好感度と強烈な戦闘能力のバランスが素晴らしいです。この主人公のような、ひたむきで、楽しげで、情熱的で、誠実で、努力家といった登場人物が活躍する、日本の良質な漫画作品は数多くあります」。

AP

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