
リン・ティヒニ
ドバイ:今年3月28日から4月20日まで開催される『センス・オブ・ウィメン』展は、ドバイでは未だかつてなかったイベントだ。この展示会は、女性アート作品に特化した財団「MIAアートコレクション」が、アラブニュースとその国際版との提携で提供するものだ。開催数日前に、東京出身で現在はバルセロナに住む日本人アーティスト、イトウ マリが、展示作品の背景にあるインスピレーションについて語ってくれた。作品を通してイトウは、私たちを独特の世界観へと引き込む。その世界観は、アジアや、日本画のような伝統的日本作品の影響を帯びていると共に、彼女のカンバスの多くに見られる黄色味を帯びた光によって、スペインのインスピレーションも感じられる。
光と影の「強烈」なコントラストが織りなす都市の発見
イトウは、天気や、モダニズムの影響を受けた建物など、バルセロナでの日常生活からインスピレーションを引き出している。「私は異文化を発見したくて、義務教育を終えた時点で東京を離れました。長い芸術の歴史をもつヨーロッパが本命の地でした。そして、私のギャラリーのオーナーが勧めてくれたバルセロナを選びました。この街はアーティストにとってインスピレーションの宝庫であり、良い選択をしたと思っています」と彼女は言う。「光と影の強烈なコントラストを私が感じたのは、この地でした。スペイン特有の黄色味の強い光が、それまで考えたことのなかった新たな芸術的視点を私に与えてくれました」と彼女は付け加えた。
イトウは、作品の中でボリュームとバランスの探求を表現しようとしている。「私の生まれた国では、アートは平たく、たっぷりとしたボリュームのあるヨーロッパアートとは著しく対照的です。私はその2つの技法を混ぜ合わせています。母国の「日本画」と呼ばれる伝統技法に、スペインで見出した光からのインスパイアを受けた奥行きのある背景を取り入れているのです」と彼女は述べた。
イトウ マリの作品は、私たちを彼女特有のイマジネーションへと引き込み、夢見心地な世界観へといざなう。しかし、何かが警告してくる。これら一見すると花に見えるものの表情だ。それらは、喜怒哀楽が入り混じった人間の欲望の種を想起させる。「人の欲望の原点は、目には見えませんが、誰もがそれを感じます。だからこそ、赤ちゃんは泣くことでお腹が空いたと知らせることができ、楽しければ、笑いたくなって笑うことができるのです……つまり、私の花は赤ちゃんの顔をもっていて、それだからこそ、そこには平和も戦争もあるのです。人間というものは常に、怒りと喜びをもっています」とイトウは述べた。それ故に彼女は、「無意識に沸き起こり、人の人格を形成する」欲望というもののまさしく原点を問いただしているのだ。
イマジネーションと感性を解き放つ場『センス・オブ・ウィメン』
「アートの世界で私は、非常に自由を感じています。だからこそ、自分のイマジネーションや感性を解き放つ可能性を感じることができるのです。私は作品を通して、自分の世界観や考えを人々に提示したいと考えています。それらを発見することで何か新たな考えや感性を得る機会にしていただければと考えています」とイトウは言う。「そしてこの自由、私はそれを、女性が観るアートに特化したこのバーチャル美術館で展示する機会を通して、感じることができました」と彼女は付け加えた。
イトウは言う。「2020年は、全世界にとって非常に困難な年であり、私たちは習慣を変化させてきました。私たちは閉じ込められたようなものでしたが、この展示会が、そこから抜け出す代替手段があることを示してくれています。私たちはバーチャルアートのおかげで、家でもどこでも活動することができます。アーティストたちはそれができるし、それをしたがっています」
彼女は、自身がポジティブと表現するその性格を通して、その作品によって困難な時代に希望を与える。「アーティストたちにとっての2020年以降の課題は、展示会を開くのに、バーチャルとリアルという2つの形式を常に意識する必要があるということです。それはまた、決して諦めるべきではないということにもなります」と彼女は述べた。