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“パラサイトシングル”―なぜ若い日本人は結婚しないのか

2019年11月3日に撮影したこの写真は、東京で開かれたお見合いパーティーに参加している親たちと参加者が資料に目を通している様子を概観した構図になっています。(AFP・キタムラ・トシフミ)
2019年11月3日に撮影したこの写真は、東京で開かれたお見合いパーティーに参加している親たちと参加者が資料に目を通している様子を概観した構図になっています。(AFP・キタムラ・トシフミ)
06 Dec 2019 10:12:28 GMT9

ハセガワ・キョウコ(AFP)

【東京】格好よく着飾った日本の独身者のグループが、会議室のテーブルの周りをぎこちなく歩き回っている。ちょっとした会話を交わしながら履歴書を交換し、結婚相手を探そうとしている。彼らは全員、親に付き添われている。

匿名希望の女性(38歳)は、結婚相手を見つけて母親のもとを離れる「勇気がなかった」と話した。彼女の母親は、そのお見合いパーティーに同行していた。

「出会う機会にあまり恵まれなかったのです」。彼女はこう説明し、次のように付言した。「私の職場にはたくさんの女性がいますが、男性は少ないのです」。

政府のデータによれば、20~49歳の日本人のほぼ4分の1は独身だ。

この年代の人々は、いつも決まって結婚願望を口にするが、旧態依然の社会的風潮や強まる経済的プレッシャーによって、結婚はますます難しいものになった――専門家はこう指摘する。

中央大学の山田昌弘教授(社会学)はAFPの取材に対し、独身者は結婚まで親と同居するのが普通になっており、パートナーを探すという差し迫った重圧をあまり抱えなくなっていると話した。

「彼らは、自分たちの条件を満たさない相手と人間関係を持つことを、時間の無駄だと考えて」おり、よりよい相手の出現を待つ余裕があるのだと言う。山田教授は、こうした人々を“パラサイトシングル”と名付けている。

夫または妻と共に長期的な経済上の安定を確保することは重要とみなされているものの、手の届く価格の住まいを見つけることは難しい。それが、ママやパパと同居し続けることの動機にもなっていると山田教授は話す。

46歳の息子にふさわしい嫁を探すため、お見合いパーティーに参加したという男性(74歳)は、別の問題を指摘する。それは、息子の内気な性格の克服だ。

「私の息子はセールスマンです。お客さんを扱うのは上手なのですが、女性のこととなると、とても及び腰なのです」とその父親は明かした。

 どうして、その息子は自分で相手を見つけようとしなかったのか?それは、彼が仕事で忙し過ぎるからだった。

上昇婚

この同じ父親は、長女は結婚しているものの、米国在住の医者である一番下の娘が34歳で独身だとも話した。

彼は、その娘のことを心配する。理由は、「聞いたところでは、女性医師は結婚相手を見つけにくい」からだという。

日本の中部地方にある中京大学の松田茂樹教授(社会学)は、日本の婚姻率低下の原因は、「上昇婚」と言われる現象にあるという。

「日本の女性は、安定した雇用先があり、自分よりも教育水準の高い男性を探す傾向がある」と松田教授は説明した。

件のお見合いパーティーからの事例証拠は、この見解を裏付けるようだ。連絡先を交換しようとする女性の短い列が、出席者グループの中で最も高い収入のある男性の前にできていたのだ。

「男女の高い未婚率は、より多くの女性が、自分よりも収入の低い男性と結婚するという考え方を受け容れない限り、変わることはないでしょう」と山田教授は話した。

加えて、仕事中毒といわれる日本においては、雇用環境がより不安定になる中、数多くの人々が、職場で将来の結婚相手と出会うようになっている。

第二次世界大戦後の数十年間、日本は主として、極端に献身的な労働者に対して終身雇用を提供した巨大企業によって経済を立て直した。しかし、そのパターンは急速に変化し、職業の安定性は崩れてきている。

厚生労働省の統計によると、1990年代初頭以降、非常勤や契約雇用の被雇用者の割合は、15%から40%弱に膨らんだ。

仕事の安定性と低所得

「低い所得水準と極端に不安定な仕事の数の増加が、いつでも解雇されるという恐れとも相まって、人々を結婚して家庭を持つという考え方から遠ざけてしまっている」。契約労働者を代表する労働組合の書記長を務める関根秀一郎氏はこのように話す。

こうした労働者がパートナーを見つけたいと願っても、仕事の安定性の低下や低所得により、配偶者を見つけるチャンスが減ってしまうのだ。

2017年に公表された政府の調査によると、同年の時点では、30~34歳の標準的な「サラリーマン」の10人中6人が既婚者だったが、同じ年代の契約労働者男性のうち、結婚していたのはわずか22%だった。

関根氏はAFPの取材に対し、東京でのお見合いパーティーに参加した人々は恵まれている方だと話した。「低所得の人たちは、参加することすら考えなかったでしょう」

そうした障壁があるにもかかわらず、この種のイベントは役に立つのか? このパーティーを主催した団体の代表を務める脇坂章司(わきさか・しょうじ)さんは、確固たるデータはないにせよ、限定的ながらもある程度の成果はあったと話す。

「平均して参加者の約2%が、配偶者を見つけています」

そのパーティーに参加した独身女性は、パーティーは他の結婚を望む人々と出会うための「効率のよい」場だったと話した。

「通りすがりの人に、結婚しているかどうかを尋ねることはちょっとできないでしょう」。彼女の母親がこう付言した。

このパーティーの結婚カウンセラーのミヤゴシ・ノリコさんは、仲睦まじい夫婦になりたい人々に対し、財力のことは忘れて、「キューピッドの矢」に集中するよう求めている。

「たくさんの条件を付けるべきではありません」。彼女は参加者に向かってこう話した。「私は皆さんに、自分が一緒にうまくやっていけると本当に思える相手を選んでほしいと願っています」

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