


アミン・アッバス
川口俊和氏は、140万部以上を売り上げ、2018年に映画化もされた小説『コーヒーが冷めないうちに』でよく知られる日本の人気作家だ。
『コーヒーが冷めないうちに』は、2020年にイギリスとイタリアでベストセラーになり、2021年にはAmazonのAudibleのトップセラーとなった。その成功によって、この作品は32ヶ国語に翻訳された。
また、この人気作のおかげで、川口氏は2月4日から14日までドバイで開催された第14回エミレーツ航空文学フェスティバルに参加することとなった。
川口氏はアラブニュース ジャパンの取材に対し、「処女作『コーヒーが冷めないうちに』は、もともと舞台の脚本として書いたものを、サンマーク出版の編集者、池田るみ子さんが舞台を観て、小説として書き直してほしいと言われた」と語った。
川口氏は、執筆のプロセスは題名を決めるところから始まり、その後に登場人物の関係性を構築していくと説明した。土台が出来上がったところで、物語を書き始めていく。
「いつも、アイディアや思考のやりとりが登場人物の会話を通して明らかになる様子を捉えたいと思っている。私にとって、インスピレーションは常に頭の中の想像上の俳優、女優たちからもたらされる」
川口氏は、また、違う国や文化の人たちにもわかりやすく、時代を超えて共感しやすい物語にすることなど、制作過程で意識しているいくつかのことについて語った。
作家としてのキャリアの確立については、「小説を書き始めたのは40歳を過ぎてから。それまで一つも小説を書いたことがなかったので、大きな挑戦だった」と、語り、脚本と小説がいかに違うかを強調した。
川口氏は、「舞台では俳優が表情や動きで感情を表現できる」と指摘した。だが、「小説ではすべてを言葉で書かなければならない。何度も心が折れそうになった。頭の中には常にはっきりとしたイメージがあるのだけれど、それを文章で表すことは必ずしも思ったほど簡単ではない」と、付け足す。
困難ではあったが、この物語が世界中の多くの人に読まれていることは嬉しく思うと川口氏は語る。
「様々な言葉や文化を持つ読者に私の物語が読まれていることは、とても光栄だ。愛する人たちへの思いは誰もが共感できる普遍的なもので、この気持ちは言語や文化の壁を越えることができると信じている」と、川口氏はアラブ・ニュース ジャパンに語った。
川口氏は本作が「イギリスで22万部、台湾で12万部、イタリアで20万部以上売れた」と話した。「イタリアの出版社からは、次の3作目は6万部刷る予定だと言われた。全く信じられない。日本ですら、私のような新人作家にとってこの数字は奇跡的だ」
現在は、同シリーズの新作と短編小説を執筆中だという。
また、小説家を目指す人へのアドバイスを求められた川口氏は、「自分の作品を最後まで書き終えることがとても大切」と断言した。「これは、私が小説を書く時に心がけていることだ。決して、途中でやめないこと。読み返してみて、完璧でないと思ったら、完了するまで書き続けることだ」
好きな小説としては、戸部新十郎の忍者歴史小説『服部半蔵』シリーズや、J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズなどを挙げた。
日本文化の中で最もインスピレーションを与えてくれるものは何かという質問に対し、川口氏はこう答えた。「漫画だ。小学生の頃から、夢は漫画家になることだった。漫画を読むのも好きだし、描くのも好きだった。漫画が私に与えた影響は大きいし、物語をつくることに導いてくれたと思う。今でも物語を書く時に、漫画だったらどんな表現になるんだろうと想像しながら書いている。同じ物語でも漫画、小説、舞台ではまったく表現が違ってくる。その違いを見ることが、私にとっては素晴らしいインスピレーションだ」
川口氏は中東を訪れたこともあり、とても居心地が良く、ほっとできた、いつか住んでみたいと話した。