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ロンドン:2020年8月のベイルート港爆発事故で割れた貴重な古代のガラス品コレクションが修復され、ロンドンの大英博物館で展示される。
レバノンの首都にあるベイルート・アメリカン大学考古学博物館には、74点のガラス食器が所蔵されていたが、そのうち72点が硝酸アンモニウムの爆発による衝撃波で破壊された。
だがイギリスでの展示を目的に、数か月にわたる修復作業が行われ、8点の古代遺物が修復された。
ロンドンの大英博物館で修復士を務めるDuygu Camurcuoglu博士は、ガラス食器は爆発によって古代の完全性は失われものの、修復チームは食器の構造を強固なものにしたと述べた。「壊れたガラスの破片を隠すのは本当に大変です」と彼女は言う。
しかし、今回の修復は単なる展示のために許可されたわけではない。この修復によって、研究者が爆発のダメージで新たに露出したガラスの表面をスキャンし、紀元前1世紀にレバノンで使用されていた吹きガラスの様式や技法を分析できるようにすることが狙いだ。
紀元前1世紀は、のちのガラス製品の大量生産につながる新たな技法や実験様式が誕生し、ガラス工芸にとって極めて重要な時代だ。
Camurcuoglu氏によると、分析することでその地域「独自の」製造技術が明らかになり、またガラスから素材や着色方法も分かったという。さらに、分析の結果、リサイクルされた痕跡も判明したと述べた。
8点の食器のうち6点はローマ時代のもので、残りの2点はビザンチンまたは初期イスラム時代の作品だ。
Camurcuoglu氏によると、中東で初期ローマ時代のガラス製品が多数発見されるのは珍しいという。
大英博物館のハルトヴィヒ・フィッシャー館長は「8月25日から10月23日まで開催される『ベイルートの割れたガラス展』は『破壊と修復、レジリエンスとコラボレーション』について伝えています」と述べた。
8点のガラス食器は今年、ベイルート・アメリカン大学に返還される予定で、ベイルートで修復された18点のコレクションに追加されることになっている。
大英博物館の話:「これらの遺物修復により、ベイルート・アメリカン大学考古学博物館は、ローマ帝国各地でこの地域の技術的な進歩が広範囲に影響を及ぼし、今日のガラス産業の形成に繋がったことを伝えることができます」