
カイロ:古代エジプトのファラオ、ラムセス2世のひつぎが、まもなくフランスの首都パリで開幕する大型の展覧会の主役として展示される。ラムセス2世は歴代のファラオの中でも有数の治世の長さで知られる王だ。
ラムセス2世の装飾性の高い棺は180点あまりの出土品とともに、例外的な措置としてフランスに貸し出されており、この中には一度もエジプト国外に出たことのない品々も含まれる。パリのグランド・アール・ド・ラ・ビレットで開催される展覧会の目玉になりそうだ。
ラムセス2世は古代エジプトの王(在位紀元前1276〜1213年)で、ヌビアへの支配を確立し、アブシンベル神殿を建設した人物だ。
ラムセス2世の棺は4月7日〜9月6日までパリで展示される予定だが、王のミイラはカイロのエジプト博物館に残される。
エジプトからフランスへのラムセス2世の石棺の貸与は、王のミイラの保存に対するフランスの科学者たちの貢献に対する謝意を示すためのものだ。ラムセス2世のミイラは1976年にパリで展示された際に、フランスの専門家によってカビの除去を受けた。
今回の展覧会の科学アドバイザーを務めるエジプト学者のベネディクト・ロワイエ氏はこう述べた。「歴史的な視点から見たこの(棺)の価値は計り知れない。これはラムセス2世のミイラではなく棺で、2900年にわたってミイラを守ってきた木製のケースです。
つまり、これは非常に(王にとって)身近な品であり、実際、ラムセス2世が眠る場所だったのです」
フランスのリマ・アブドゥル・マラク文化相はこう述べた。「子どもたち、そしてあらゆる年代の人々にとって非常にすばらしい機会です。写真やインターネットで見るのと、実際に見るのとではまったく違います」
展覧会を訪れた人は、棺の側面にある碑文をじっくり見るという希有な機会を得ることになるだろう。碑文には、盗掘に遭ったことを受けて紀元前1070年以降、ラムセス2世の遺体が3回にわたって移された際のことが詳細に書かれている。
「ラムセス大王とファラオの黄金」と題された展覧会では他に、金と銀のジュエリーやアミュレット、マスクや他の棺といった古代エジプトの手工芸品も展示される。
ラムセス2世は最も長い治世と高い知名度を誇るファラオだ。エジプト王国の安定と拡大に大きな役割を果たし、平和と繁栄をもたらした。
棺はシーダー材で作られているが、もともとはラムセス2世のために作られたものではなかった。第18王国の終わりごろ作られ、当時は金で覆われ、宝石やガラスがちりばめられていたと思われる。表面は磨き上げられ黄色く塗られ、明るい色の模様や黒で強調された目が描かれている。
エジプトの駐フランス大使であるアラー・ユセフ氏は、棺の展示は「例外的」なもので、両国をさまざまな分野でつなぐ「格別な歴史的関係」の結果だと述べた。
大使はまた、展覧会では「ファラオ文明ファンが仮想現実ショーでアブシンベル神殿や(エジプトの女王)ネフェルタリの墓を見る」こともできると言う。
また大使はフランスの人々に対し、エジプトに来て「その豊かな文明や、エジプトが目の当たりにしている幅広い発展のプロセス、そして有望な未来を知って」欲しいと呼びかけた。
1月、エジプトの内閣は展覧会を計画したヒューストン自然科学博物館の館長の求めに応じ、ラムセス2世の棺をフランスに移送することを承認した。
展覧会では最新技術を使ったマルチメディア復元により、古代エジプトの富と美、そしてラムセス2世の人生と業績について伝えることになる。
展覧会は大都市を巡回して行われている。2021年11月のヒューストンを皮切りに、昨年8月にはサンフランシスコで開催された。