リヤド:アル・ウラーのバッテリー式路面電車は、持続可能で革新的な交通システムの実現を目指すサウジアラビアの取り組みの証しであると、その設計を行った企業の最高幹部が述べた。
アルストムKSA の最高経営責任者であるモハメド・ハリル氏は、アラブニュースの取材に応じ、この敷設計画により、駅数17、総延長22.4 kmに及ぶ、バッテリー駆動で無架線の世界最長の路面電車ネットワークが完成すると述べた。
ハリル氏は、この路面電車計画は、炭素排出削減と低環境負荷交通の実現にサウジビジョン2030の焦点が置かれている事の証しであると付言した。
「サウジビジョン2030の一環として、(この路面電車ネットワークは)環境スチュワードシップに対するサウジアラビアの取り組みを支援するものです」と、ハリル氏は語り、「この革新的な交通システムは、炭素排出量の削減と低環境負荷テクノロジーの進歩において重要な役割を果たすことになります」と付け加えた。
「再生可能エネルギーから得られる電力によるバッテリー駆動の路面電車は、温室効果ガス排出削減へと繋がり、化石燃料への依存を軽減します」
この路面電車ネットワークで用いられる車両は、架空電線の代わりに充電式バッテリーで稼働するという点で従来の路面電車とは異なる。
この方式によって、大規模なインフラストラクチャーの必要性が減じ、交通システム自体が環境に配慮した状態を維持し得るとのと同時に、一層静穏で美しい都市環境の実現が一歩近づく。
ユネスコ世界遺産を複数有し文化と遺産保護に深く根差すアイデンティティを持つアル・ウラーにおいて、この路面電車ネットワークの特性は真価を発揮する。
先端的で持続可能なモビリティ技術を世界レベルで主導しているアルストム社は、革新的な技術を採用し、路面電車をアル・ウラーの文化構造と統合するのだと同社の最高経営責任者であるモハメド・ハリル氏は語った。
シタディスBとして知られるこのテクノロジーを用いることで、運行中の車両に搭載された充電システムへの高速充電が可能となるため、効率的であると同時に視覚的な煩わしさも軽減可能となる。
ハリル氏は、このプロジェクトは環境の持続可能性だけではなく、アル・ウラーの経済的、文化的持続可能性にも寄与すると付言した。
「観光の振興や地域産業の活性化を計ることは、石油を越えて経済を多角化するというサウジアラビアの目標に一致しています」と、ハリル氏は述べた。
路面電車は、この地域の豊かな文化遺産を尊重し、その歴史的意義を保全する開発を確実に進めていくように設計されていると、ハリル氏は確言した。同氏は、さらに、経済成長と環境責任のこのバランスが、サウジアラビアのビジョン2030の中核である持続可能性の特に重要な価値を示していると指摘した。
こうした価値をプロジェクトの進行に統合させ、文化的、歴史的要素とプロジェクトのデザインを機能的に融合させるために、アルストム社は歴史あるヒジャーズ鉄道の有する伝統的な美意識を活用する。
ヒジャーズ鉄道は、ダマスカスから現在のサウジアラビアのヒジャーズ地方を通り、メディナに至る狭軌鉄道で、その支線は地中海沿岸のハイファまで伸びていた。
つまり、ヒジャーズ鉄道の意匠の要素を現代の路面電車に用いることで、この路面電車がアル・ウラーの豊かな過去とダイナミックな未来の間の架け橋として機能するということなのである。
アルストム社のハリル最高経営責任者は、この取り組みは現地の建築様式を反映したデザインによってさらに完成度が高められ、路面電車が接続する歴史的地区を確実に補完し、各路面電車が「この地域の独自の特徴とニーズを反映するように最適化されています」と解説した。
ハリル氏は、「このために、地域の環境と調和する外観デザインや地域の伝統を瞥見していただくことで乗客の体験を向上させるように内装を至適化しています」と概説した。
ハリル氏は、さらに、展望車や乗降しやすい低床設計、気候に適した空調、ダイナミックな車内運行情報システムなどの特徴はすべて臨場感あふれる旅行体験の提供のために調整されていると付け加えた。
この特注の路面電車は、その設計と敷設の両方で、ラロシェルを含むフランス国内のアルストム社の生産拠点で製造される。
70年以上にわたってサウジアラビアの交通セクターに関わってきたアルストム社は、メッカとメディナを結ぶハラマイン高速鉄道を支え続けてきた。
アルストム社は、また、ジェッダのキング・アブドルアジーズ国際空港にも自動人員移動システムを提供している。この国際空港における旅客サービスの開始は2020年で、アルストム社は2022年から保守管理を担っている。
ハリル最高経営責任者によると、アルストム社はサウジアラビア国内で継続的に事業活動を行い得ていることに「大きな誇り」を持っており、「モビリティを再構築し将来の持続可能な輸送ソリューションを導入することで実現する、傑出したビジネスハブになるという熱望」の支援を中東地域で行うことは同社のビジョンと一致しているのだと付言した。
現在進められている輸送ソリューションの一環として、ハリル氏は、最近リヤドで実証された水素燃料のコラディア・リント列車を例に挙げて、これはサウジアラビアのみならず中東やアフリカでの低環境負荷交通の取り組みにおいて重要な節目になると付け加えた。
「この取り組みは、2022年9月に国際鉄道技術見本市のイノトランスにおいてアルストム社とSAR(サウジアラビア鉄道)の間で署名された覚書の一部であり、この地域における初の水素動力列車の導入を示すものです」と、ハリル氏は語った。
コラディア・リント列車は、水素燃料電池を動力源とする世界初の旅客列車として注目を浴び、2023年11月にリヤドのイースト・ネットワークの34 kmを走行する試運転が行われた。
このコラディア・リント列車は、二酸化炭素を直接排出せずに推進用電気エネルギーを生成可能で、低環境負荷的なアプローチという観点において「革命的」であるとハリル最高経営責任者は評価している。
ハリル氏は、このデモンストレーションは、サウジアラビアの包括的な持続可能目標とビジョン2030の目標に沿ったもので、コラディア・リント列車自体の有する「技術的驚異」以上のものだったと語った。
「サウジ・グリーン・イニシアチブに取り組む国として、コラディア・リント列車の試運転は、環境的に持続可能な未来への取り組みを強化するものです」と、ハリル氏は断言した。
地域諸国がネットゼロを目標に掲げて努力を重ねる中、アルストム社は、中東全域で、持続可能なモビリティを提供することに決然として取り組んでいる。
ハリル氏によると、現地の保守管理関連の専門家や企業への投資により、アルストム社は強固な地域基盤を構築したという。また、同氏は、「アル・ウラー路面電車」などの将来のプロジェクトの成功にそれが寄与すると確信しています」と語った。
アル・ウラー路面電車プロジェクトの下、アルストム社のサービスチームは巡回ワークショップを活用し、点検整備に必要な特殊な器具やツールを現地の保守管理チームに一時的に提供している。
さらには、これまで現地で育まれて来た地域固有の人的能力も活用していく。スペインにあるアルストム社のピント事業所のブレーキ整備・修理の専門家が、アル・ウラーにおいて現地チーム向けのトレーニングセッションを企画し、専門知識の共有と共に現地での能力開発に取り組む。