
サンフランシスコ: AppleとAlphabetのGoogleが、コロナウィルスの拡散抑制を目指し、協力して接触追跡技術を開発することを表明した。この技術では、ユーザーが付近にいる他人の携帯電話を任意で記録できるようにする。
世界のスマートフォンの99%を動かすオペレーティングシステムの開発企業である、シリコンバレーのこの2社の珍しいコラボレーションにより、感染した可能性のある個人を検査または隔離するためにアプリを利用する動きが加速する可能性がある。アプリを利用することで、世界の大半の地域にすでに存在するシステムよりも、検査や隔離を素早く確実に行えるようになる。
このような追跡は、ロックダウン命令が終了したあとのウイルスの管理において極めて重要な役割を果たすだろうと、保健衛生の専門家たちは言う。
計画されている技術は、プライバシー擁護者たちと欧州やアジアの政府との間の対立においても、この大手テック企業2社の役割の重要性を高めることになる。プライバシー擁護者たちは接触を追跡するのに分散型システムを支持する一方で、欧州やアジアの政府は中央集権的な方法を推し進めている。中央集権的なシステムには技術的な弱点があり、政府が人々の交際する人物を知ることができてしまう可能性がある。
「AppleとGoogleにより、必要とされる公衆衛生上の全ての機能が、プライバシーを守るのに都合の良い分散型のアプリで手に入ります」と、欧州の接触追跡システムDP3Tに携わるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの法学講師マイケル・ヴィールは述べる。
英国やドイツで提案されているような中央集権的なソリューションは、新たな技術の下ではもはや機能しなくなるだろうと、ヴィールは言う。
シリコンバレーのシステムが効果を上げるためには、何百万人もの人々がこのテック企業の安全対策と、公共衛生システムによるスムーズな監視を信頼し、自ら選んでシステムを利用する必要があるだろう。
両社は既存の一部の接触追跡アプリの相互運用を妨げていたAppleのiPhoneとGoogleのAndroidの間の技術的な相違を整備するため、2週間前に技術開発に着手したと述べている。
計画に基づけば、この技術を搭載するユーザーの電話機は固有のBluetooth信号を発信することになる。約6フィート以内の電話機は遭遇した電話機の匿名情報を記録することができる。
検査でウイルス陽性反応が出た人は、自分に近づいたことのある電話機の暗号化されたリストをAppleとGoogleに任意で送ることができる。これによりウイルスにさらされた可能性のあるユーザーに対し警告が送られ、当該ユーザーはさらに詳しい情報を求めることできる。公衆衛生当局は、検査で陽性と判定された個人しかデータを送れないようにすることを取り決める必要があるだろう。
記録は感染した個人のデータを匿名に保つため、たとえAppleやGoogle、接触追跡アプリ開発者に対しても暗号化されることになると、両社は述べている。AppleとGoogleによれば、この接触追跡システムはGPS位置情報を追跡しないという。
「信頼を守るため、AppleとGoogleはプライバシーや中央集権化の最悪なリスクを軽減するように見えるやり方を発表しました」と、アメリカ自由人権協会の監視・サイバーセキュリティ顧問ジェニファー・グラニックは述べる。
両社は接触追跡機能が現在のパンデミック以外に使われないことを明確にするなど、さらなる安全対策を講じる可能性があると、彼女は付け加えた。
AppleとGoogleは、両社と公衆衛生当局が認定する接触追跡アプリに対し、5月中旬にソフトウェアツールをリリースすることを計画する。1ヶ月前にAppleとGoogleに支援を求めたPrivate KitやCoEpiなどのアプリは、この新たなツールによって信頼性に欠けるかもしれない次善策を取らずに済むだろうと述べる。
AppleとGoogleがBluetoothとプライバシー問題に対処することで、アプリはユーザーや医療従事者向けのシンプルなインターフェース開発に集中することができると、接触追跡アプリCoEpiの主席開発者ダナ・ルイスは言う。
しかしながら、AppleとGoogleは今後数ヶ月以内にソフトウェアのアップデートをリリースし、ユーザーが付近の電話機を記録するのに別のアプリを必要としないようにすることを計画している。
Googleは、このツールとアップデートは中国国内や非公式のAndroidデバイス上など、サービスがブロックされている場所では利用できないことになるだろうと述べている。Appleはこの技術を、iPhoneオペレーティングシステムに対するアップデートとして配布する予定だ。
ピュー研究所の昨年の調査によれば、米国や他の先進経済国では中央値で76%の人々がスマートフォンを保有している。それに対し、新興経済国における保有者数の中央値は45%だった。
接触追跡は通常、保健当局が感染者と接触した人々の所へ行き、自己隔離や検査の受診を依頼するという労働集約的なプロセスである。世界中の政府がそのプロセスを改善するため、ソフトウェアによる手法を大急ぎで採用しようとしてきた。
「とても興味深いことだが、個人の自由という観点から懸念を抱いている人も多い。注目していくつもりだ。非常に厳しく注目していく」と、ドナルド・トランプ米大統領は記者会見でAppleとGoogleの取り組みについて聞かれ、そう答えた。
保健衛生専門家たちは韓国などの諸国でウイルスの拡散を抑制している広範な検査や接触追跡に信頼を置いてきたが、米国内では限定的な検査が接触追跡の妨げとなってきた。
例えばニューヨーク市衛生局は、追跡はウイルスが制御されるまでは役に立たず、多くの人々と出くわすような場合はアプリが有効な手段を提供する可能性があるだろうと述べている。
「これは検査の代わりではありません。アプリを持っている人を把握する必要があります。しかし行動可能な結果を生み出してくれるため、人々が責任を持って行動し、自己隔離できることで、コミュニティ全体の不安が軽減されます」と、スタンフォード大学法科大学院講師で長い間Googleの外部顧問を務めたこともあるアル・ギダリは述べる。
ロイター