東京：ビッグデータは日本銀行に驚くべき成果をもたらし、新型コロナウイルスのパンデミックの際に経済を圧迫する懸念を和らげようとしており、日銀が世界で最も過激な金融刺激策をどのように運用するかに影響を与える可能性がある。

Googleが提供する携帯電話を介した人々の動きを示すデータを利用し、日銀は5月にロックダウン措置が解除された後、家計の裁量支出が他の国よりも早く、より鮮明に反発したことを明らかにした。

その他のビッグデータでも、パソコンなどの耐久財の販売が大幅に回復したことで、レジャーや外食、旅行などのサービスへの支出の弱さが一部相殺されたことが明らかになった。

このことにより、日銀の施策決定者たちは経済が最悪の状態を脱したと判断し、直ちに追加的な金融支援を必要としないとの結論に達した。日銀の黒田東彦総裁は今月、金融政策を安定的に維持することを決定した後、「経済は徐々に着実に回復していくと予想している」と述べた。

「スポーツやその他のイベントなどのサービス部門は、COVID-19以前のレベルに簡単には回復しないかもしれない……しかし、商品の消費と生産は底を打ち、現在は急回復している」と同氏は述べている。

データに関しては最も保守的な中央銀行の一つとされてきたが、日銀は現在、180人の統計チームを編成し、貨物の動き、スマートフォンから収集した交通データ、工場周辺の人間の活動の衛星画像などを調べ、経済についてのより良い洞察を得ようとしている。

従来とは異なるデータも、日銀の2％のインフレという困難な目標の達成の成功度を測る方法にも影響を与える可能性がある。

民間データを用いてリアルタイムのトレンドを追跡した指標によると、サービスコストが低迷していても一部の商品の価格は堅調に上昇しており、公式の消費者物価指数（CPI）が示唆するほどのデフレではない可能性があることを示唆している。

この調査結果を受けて、日銀は7月の四半期報告書で、COVID-19が物価に与える可能性のあるインフレとデフレの両方の影響を検討する必要があると警告した。

CPIは日銀の主要な物価指標であることに変わりはないが、代替情報が増えれば、日銀の施策は指数から切り離される可能性があると、一部のアナリストは指摘する。

「日銀は、単にCPIを追跡するという従来のアプローチではうまくいかないことを知っている。2％という目標は変えないだろうが、より広い範囲のデータを見始めるだろう」と、元日銀職員で日本におけるビッグデータの先駆者である渡辺努氏は述べている。

「施策決定者はビッグデータに完全に依存しなければならないだろう。それはすでに世界中で起こっていることで、加速するばかりだ」

主要な中央銀行は、毎月の小売売上高や失業率などの従来の指標ではCOVID-19の影響を確実に把握するには時間がかかりすぎるため、パンデミックに見舞われた経済について迅速な判断を下すために、リアルタイムのデータにますます目を向けている。

連邦準備制度は、多数の高頻度データを収集し、オンライン世論調査や人の動きの変化を測る指標を作成するなどの新しい方法を模索しながら、この動きを推進してきた。

日銀はそれに追いつこうとしている。

昨年、日銀はビッグデータの知見を経済予測に反映させるためのタスクフォースを立ち上げた。これは小さなことだが、140年の歴史を持つ同行の伝統的な理論とモデルを重視する姿勢からは大きな逸脱でもある。

また、ニューヨーク連銀が使用している、頻繁に更新される消費者と産業活動のデータを組み合わせて国内総生産の指標としている週次指数も導入した。

日銀のトップエコノミストである神山一成氏は、同行にはデータ収集や分析を効率化できるデータサイエンティストを雇用し、育成する準備ができているという。彼の任務は、パンデミックによって勢いを増している。

「ショック時には、景気の状態や先行きの不透明感が高まる。ライトをつけずに運転しているようなものだ」と神山氏は言う。

「高周波データを含む迅速な情報を提供してくれる従来とは異なるデータが本当に価値のあるものになるのはそのときだ」

ロイター