
アルガーム
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の危機がサウジアラビアを含む中東・北アフリカ(MENA)地域全体にビジネスの不確実性をもたらしているにもかかわらず、2020年はM&A(企業合併・買収)市場にとって依然として波乱に富んだ年であったと、JPモルガン・サウジアラビアのシニア・カントリー・オフィサーであるバダー・アラムーディは述べている。
2020年のM&A活動は、特に不確実性が長期化している時期に、コストを合理化し、効率性と最適化を高めようとする企業が牽引したと、アラムーディはインタビューでアルガームに語った。
「例年同様、2020年も金融セクターがこの地域でM&A活動が最も活発な領域となっている。ただ、今回の合併のテーマは、エネルギー、不動産など他のセクターにも波及効果をもたらし、活動の活発化が見られるようになってきている。この動きは来年も続くと思われる」とアラムーディは語る。
アラムーディは、インフラ資産のような景気循環性の低い良質な資産は、今後も国内外の投資家の関心を集めると考えている。
アラムーディは、「夏前の時期にはいくつかのM&Aの議論が保留となったが、状況はかなり回復しており、現在は多くの新しい機会が模索されている」と指摘する。
2020年には、地域の負債性資本市場(DCM)での発行はより機動的になり、各国政府は他の政府関連機関(GRE)や企業が市場に参入するための基盤作りに優れたステップを踏んでいるとアラムーディは強調する。
サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は5月、パンデミックの最中にブリティッシュ・ペトロリアム(BP)、ボーイング、フェイスブック、ウォルト・ディズニーなどの企業の株式購入を公表している。また、インドのリライアンス・リテール・ベンチャーズやジオ・プラットフォーム、更に3つのセクター別上場投資信託(Exchange Traded Fund)にも投資してる。
「地域のソブリン発行体が、パンデミックの間にもDCMの利用に最初に動いた主体となったため、その他主体の追随を容易にした。DCMを利用した各主体は、金融システム全体の中にあふれる流動性の活用に成功している」とアラムーディは述べた。
2021年の計画
サウジアラビアでは、米国の投資銀行がナショナル・コマーシャル・バンク(NCB)に対し、サンバ・ファイナンシャル・グループの156億ドルでの買収についてアドバイザーとなっている。以前は、石油大手サウジ・アラムコの巨大な新規株式公開(IPO)時にもアドバイザーとなっている。
JPモルガンは新商品の導入とより多くの人々を雇用することによって、サウジアラビアでのプレゼンスを拡大し続けるとアラムーディは述べた。「現段階で、JPモルガンはサウジアラビアで全事業分野を展開しており、従業員のサウジアラビア人率も85%、内女性33%を達成している」と彼は付け加えて述べた。
更に、アラムーディは、「パンデミックの間もサウジアラビアでの採用活動を続けている」と述べた。
サウジアラビア中央銀行(SAMA)が発表した景気刺激策は、企業の支払い負担を軽減するのに役立ち、キャッシュフローの大きな源泉となることを証明した。アラムーディは、原油価格の改善が消費者の信頼感を蘇らせ、来年の投資銀行活動の拡大を後押しすると予想している。
「2021年は、あらゆる事業分野で多くのことが起こる非常に興味深い年になるであろう。DCMと株式資本市場(ECM)には数多くの案件があり、多くのセクターでの統合が続くだろう」とアラムーディは結論付けた。
アルガーム記事より転載