



ロンドン: 気候変動と資源の枯渇が迫る中、世界のグリーンテクノロジーセクターは、よりクリーンなエネルギーの未来を創造する上で、主導的な役割を果たしている。
グリーンテクノロジー(グリーンテック)とは、持続可能な地球のために、カーボンニュートラルなソリューションに取り組んでいる、革新的な企業の総称である。
これまでの炭化水素を動力源とする経済と並行して、UAEは現在、エネルギー多様化のパイオニアとして、世界で最も意欲的に太陽光、風力、廃棄物を動力源とする発電プロジェクトを立ち上げている。
人口増加とエネルギー需要の増加に直面して、アラブ首長国連邦(UAE)はグローバル技術パートナーの協力を得て、豊富な再生可能資源を活用した二酸化炭素排出量の大幅な削減に取り組んでいる。グローバル技術パートナーの中で、特に大きな役割を果たしているのが、グリーンテックの専門知識と実現に多くの経験を持つ英国である。
英国国際貿易省の再生可能エネルギー担当部門責任者であるサラ・ハイネマンによると、グリーンテック産業における英国とアラブ首長国連邦(UAE)間の投資や相互協力には大きな可能性がある。
「英国のエネルギー部門は、世界でも有数の先進的なエネルギーシステムを持っている。また、脱炭素化への移行の最前線にあり、イノベーションは多額の民間投資を引き寄せている」と、ハイネマンは語る。
「過去5年間で、英国の相対的な発電所からの炭素排出量は他のG10諸国よりも早く減少している」と、ハイネマンは指摘し、英国はまた主要国で初めて炭素排出量ネットゼロの法律を可決した国であると付け加えて述べている。
野心的なアラブ首長国連邦(UAE)のエネルギービジョン
アラブ首長国連邦(UAE)は野心的な『エネルギー戦略2050』を策定し、グリーンテック分野における将来ビジョンを明らかにしている。国際再生可能エネルギー機関によると、2014年以降、湾岸アラブ諸国協力理事会(GCC)諸国ではグリーンエネルギー技術が急速に進んでいる。
アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアの再生可能エネルギーに対する記録的な積極投資により、太陽光発電が従来の発電技術に比べてコスト競争力を持つようになったことで、湾岸プロジェクトの再生可能エネルギーパイプラインは、2018年には7ギガワット近くの新規発電容量に達している。
ドバイは、世界最大のシングルサイト・ソーラーパークを保有するだけでなく、廃棄物からエネルギーを産出するイノベーションの先駆者でもある。アル・ワーサンプロジェクトは、年間190万トンの都市ごみを処理し、約13万5千軒の住宅に電力を供給する能力を持っている。
アラブ首長国連邦(UAE)のクリーンエネルギーへの移行は、英国のネットゼロへの移行をも後押ししている。アブダビのエネルギー企業であるマスダール社は、アラブ首長国連邦(UAE)において、再生可能エネルギーへの投資、研究開発、商業化を主導しているが、同時に英国の3つの洋上風力発電所に数十億ポンドの投資を行っている。また、英国の電気自動車充電インフラにも数百万ドルの投資を行っている。
クリーンエネルギー・イノベーション
2018年の国連報告書によると、再生可能エネルギーとグリーンテクノロジープロセスへの世界の投資額が2017年に2,000億ドルを突破している。また、2004年以降、太陽光発電や風力発電などの電源に2.9兆ドルが投資されている。
英国では、大学や研究センターがグリーンテック企業と緊密に連携して、世界の需要に対応するための革新的な技術を開発し、商業化している。政府がこの分野への投資を続ける中で、英国は環境ソリューションをリードする何百もの特許を取得している。
「英国は、再生可能エネルギーの分野で強い確かな実績を保持しており、アラブ首長国連邦(UAE)の革新的なエネルギービジョンを推進し、同国の野心的な目標を達成するための支援をするのに最適なパートナーである」と、パトリック・ムーディ駐UAE英国大使は述べている。
英国のグリーンテック・スタートアップ
英国のスタートアップ企業は、アラブ首長国連邦(UAE)のグリーンテックセクターの形成を支援する上ですでに大きな貢献をしている。北アイルランドを拠点とするキバーコ社は、半年間で2,500万人が訪れると予測される世界的なイベントであるドバイ国際博覧会(Expo 2020 Dubai)の廃棄物をすべてリサイクルするソリューションの設計・構築先に選ばれている。
キバーコ社は2020年初頭にはプラントを設置しており、これまでのどの万博よりも埋め立て廃棄の割合が高くなる。リサイクルソリューションとしては、鉄金属、非鉄金属、ペットボトル、プラスチックフィルム、紙、段ボールなどを回収する。広大なドバイ国際博覧会(Expo 2020 Dubai)の南会場から出る有機廃棄物は肥料に転換され、建設資材は道路に再利用される予定だ。
キベルコ社のグローバルセールスマネージャー、コン・ギャラガーは次のように述べている。「アラブ首長国連邦(UAE)は、持続可能な政策に関して主導的な役割を果たしている。キベルコ社は現在、湾岸地域に5つの稼働中の工場を保有している。政府が大規模リサイクル戦略に転換しているため、今後の展開により関心を高めている」
英国に本拠を置くソーラーウォーター社は、都市や産業界で消費されるきれいな水を生産するために設計された世界初のカーボンニュートラルな水生成インフラドームで、その革新的なガラス技術を導入するためにアラブ首長国連邦(UAE)政府と協議中である。
ドームには太陽の熱を捕らえる広大な凹面鏡があり、このエネルギーで海水を蒸発させ、その蒸気が真水となって沈殿し、ドーム内に一定の水の循環を生み出す仕組みとなっている。塩分は、かん水から副産物として抽出され、商業的に販売され、塩分やかん水は海に還流されない。
「この9ヶ月間、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中でも、中東でのプロジェクトのパイプラインを広げている」と、ソーラーウォーター社のデビッド・リーブリーCEOは述べている。「今後20~30年の間に膨大な需要があると信じている。世界的に気候変動による脆弱性が広がり、それに対して我々は解決策を提示しているからだ」
パトリック・ムーディ駐アラブ首長国連邦英国大使は、次のように締めくくっている。「英国で勃興している再生可能エネルギー部門は、アラブ首長国連邦(UAE)の豊富な再生可能エネルギー資源を活用し、革新的な持続可能性ビジョンを実現に導く専門知識と実践的なノウハウを保持している。英国とアラブ首長国連邦(UAE)の協力関係には大きな可能性があることに間違いはない」