
米原子力エネルギー開発会社テラパワーと米エネルギー省による次世代高速炉開発計画に、日本原子力研究開発機構(原子力機構)と三菱重工業が技術協力することが4日、分かった。2028年に米ワイオミング州での運転開始を目指し、今月にも相互協力に向けて検討を進める方針を盛り込んだ覚書を結ぶ。
原発は運転時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、脱炭素の流れが加速する中で欧米で有用性を見直す動きがある。だが、米国では長年、高速炉の本格的な開発は行われず、知見が乏しい。一方、日本は廃炉作業中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)や高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町)の開発実績があることから、協力に向けて交渉が行われていた。
米国は先進的な原発の開発に力を入れており、次世代高速炉で主導権確立を狙う。ただ、開発計画では中国やロシアが先行しており、米国は日本と協力して巻き返したい考えとみられる。テラパワーはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らが設立。今回の高速炉(出力34万5000キロワット)は冷却材にナトリウムを使用し、建設費は約40億ドル(約4600億円)とみられる。
日本側は高速炉の設計技術や運用データを提供するほか、原子力機構の施設で安全試験を行うことを想定している。関係者は「次世代炉開発のノウハウ取得や専門人材の育成につながる」として日本側のメリットも強調。安全試験施設の整備では、原子力機構を所管する経済産業、文部科学両省も支援する。
高速炉は中性子を高速状態で反応させる仕組みで、世界的に主流の軽水炉より効率的に熱を取り出すことができる。しかし、空気と激しく反応するナトリウムは取り扱いが難しく、もんじゅは1995年に液体ナトリウム漏えいによる火災事故を起こしている。
時事通信