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一転失脚か?自国の星カルロス・ゴーン氏の不祥事を受けてレバノンで驚きが広がる

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22 Nov 2018 02:11:09 GMT9
22 Nov 2018 02:11:09 GMT9

カリーヌ・マレク

現在、金融商品取引法違反の疑いで捜査結果を待っている状態だ

しかし、同胞の英雄としてゴーン氏を尊敬する多くの人々は、尊敬の念が揺らぐことはないと言う

ドバイ:レバノン国内及び国外に暮らすレバノン人たちは、自動車業界の大物であるカルロス・ゴーン氏を支援しようと集結している。同氏はレバノン、ブラジル、フランスの国籍を持ち、ルノー・日産・三菱アライアンスの会長を務めているが、「重大な不祥事」があったとして日産での内部調査を経て月曜日日本の検察に逮捕された。逮捕の報道は、自動車業界に衝撃を走らせた。

ゴーン氏はブラジル出身で、パリと東京に暮らしているが、祖父はレバノン出身である。今週レバノン人の間で逮捕の報道を受けて落胆が広がっており、レバノン人コミュニティーが同氏を一員として認識していることは明らかだ。

世界最大の自動車アライアンスの結成の立役者とされるゴーン氏に向けられた金融商品取引法違反の疑いで行われている捜査は、まだ結果待ちの段階である。しかし多くのレバノン人たちは、同氏を同国の大使のような存在であり規範的人物であると考えている。ルノーはゴーン氏をCEOに留まらせることを発表したが、日産と三菱は、同氏の解任を取締役会に提案する考えを示した。

ベイルートのKingpin Consultancyでパートナーを務めるミシェル・ハマム氏は「この報道にはショックを受けました」と言う。「しかしそれ以上に驚いたのは、日産と三菱の役員と取締役会の動きです。検察による調査結果が出る前なのに、解任の判断に動いているからです。日産の幹部は同社の会長に不利な内容の記者会見を開きましたが、そのような内容の会見など前代未聞です。内部で同氏を失脚させるクーデター的なもの(があったのではないかと)どうしても感じてしまいます」

ハマム氏は、ゴーン氏は同社の再建に欠かせない役割を果たしたと言う。「しかし今になってみれば、同氏がいなくても会社は大丈夫だろうと考えているようです。同氏は常に、アラブ世界でも世界中でも、トップレベルの実業家と見られてきました。その評価は変わらないはずです。彼の業績を見れば納得できるはずです」

大富豪でもあるゴーン氏は現在64歳で、自動車業界の大物として、世界で最も影響力のある経営者の1人である。2002年には、『Fortune』誌によって同年最も秀でたアジアの実業家に選出された。また2003年には、アメリカ外で最も影響力のある実業家トップ10にも名を連ねている。

『Financial Times』誌とPricewaterhouseCoopersによる調査でも、ゴーン氏は2003年に最も尊敬を集めるビジネスリーダー第4位に選出され、翌年にはどちらの調査でも第3位にランクアップしている。多くのレバノン人にとって、こうした評判は色褪せることはない。

「ゴーン氏は、レバノンの国名をトップビジネスの世界に轟かせた、大使のような存在でした」とハマム氏は言う。「まだ一方の側の見解しか聞いていないので、その評価がこれから変わってしまうのかどうかについては、現段階では何とも言えないですが、同氏の逮捕を受けて両側から声が上がるでしょう。同氏を非難する意見も出れば、逮捕という事態を無視する人も出てくると思われます。嵐が過ぎてしまえば、同氏はアラブの実業家からは引き続き高く評価され続けるでしょう。いずれにせよ、ルノーの経営陣の反応が重要です。同社は同氏をCEOに留めることを確認しています」

ベイルート在住のレバノン人実業家ロバート・パオリ氏も、逮捕の報道には衝撃を受けたと言い、また答えの出ていない疑問が多いとも言う。「カルロス・ゴーン氏ほどの知性のある人が、本当にそこまで初歩的な過ちを犯すとは、考えにくいです。だから私たちは、真実が明らかにされるのを待っている状態です」と同氏は語った。

「私はかなり衝撃を受けました。ゴーン氏のような人物が世界で活躍することにある種の誇りを感じていましたから。同氏はビジネスの世界のレバノン大使のような存在でした」

パオリ氏は、ゴーン氏がレバノンで行なって自身の評価を高めた事業をいくつもあげた。「同氏にはものすごい潜在性を感じていました。いつの日かレバノンに戻ってレバノンでの政界入りを期待していました。政府でレバノンの財政の管理を担当してもらえたらと思っていたのです」

「捜査結果が出てくるまでは、誰もゴーン氏に関する考えを変えることはないと思います」

湾岸諸国に住む多くのレバノン人の間でも、ゴーン氏をレバノン人の実業家だけではなくアラブ人全体の規範だとするなど、同様の意見が聞かれた。

アラブ首長国連邦で働くレバノン人のジャン=ピエール・モンダレク氏は、「ゴーン氏が自動車業界にもたらした功績に対して、多くの人は尊敬と賞賛の念を持っていました」と語る。「この報道にはがっかりしています。これからの動向がとても気になっています。逮捕されたからといって実際に罪を犯したとは限らないからです。有罪が確定するまでは、同氏は無罪とみなされるべきです」

「同じく自動車業界で情熱を燃やして働いているレバノン人として、自動車業界にこれほどインパクトをもたらした人物がどうしてこのようなことに巻き込まれたのか、人間として、私は不思議に思っています。だから、これから事態がどうなっていくのか注目しています」

ドバイでAegis Hospitalityを設立したサメル・ハマデー氏は、ゴーン氏の事件は他のどの企業不祥事よりも衝撃が強かったと言う。

「大物が一転失脚したわけです。これから誰が、もしくは何が巻き添えになっていくのか、誰も想像できません」と彼は語った。

「レバノンでは、政治的に言えば、多くの悪しき実業家が出てきていた状態だったので、ゴーン氏はビジネス上の英雄的存在だったのです。地元のレバノン人ビジネスマンからは感じられないような誇りを、同氏は感じさせてくれました」とハマデー氏は言う。

同氏は、ゴーン氏に対する世間の評価は変わらないだろうと見ている。「この地域は企業不祥事には慣れっこです。その他の不祥事と同じように、次の不祥事が出てきたらすぐに忘れ去られるでしょう」

ハマデー氏と同様に、ビジネスの世界には複雑なルールや規制があるわけで、同様の事件はこれまでも数え切れないほど起きてきたものとする意見も出ている。

「ゴーン氏は、自動車業界で最も勤勉な人物の1人として有名です」と語るのは、湾岸諸国で活躍するレバノン人実業家のワリード・カナーン氏だ。「同氏は、故郷を離れて暮らすレバノン人の成功例としてインパクトが大きく、レバノン人実業家が世界最大規模の企業で頂点のポジションに上り詰めたことを示す好例でした」

アブダビで働くレバノン人のピエール・ハッダード氏は、ゴーン氏の逮捕には驚かなかったと言う。日本ではゴーン氏を世界最大規模の自動車メーカーを率いるポジションから引きずり降ろそうとする動きが何年も前からあったのがその理由とのことだ。

「ほんの数年前には、ゴーン氏のルノーへの影響力を限定しようとの試みがなされましたが、それは失敗に終わりました」とハッダード氏は言う。「今のところ、メディアによる逮捕の報道は一方的なものです。逮捕された側の抗弁を聞くまでは結論を下さないのが賢明なはずです」

アラブ世界から、とりわけレバノン人から見れば、ゴーン氏は英雄的存在だった。「日本がどのように動こうと、同氏はリーダーであり続け、彼は業界を動かし続けるでしょう。また革新者であり続けるでしょうし、現代のビジョナリーであり続けるでしょう。同氏のイメージは輝きを失うことはありません」とハッダード氏は言う。「重要なのは、最終的にどのような判決が下されるかです。残念なことに、(判決が下されるのには)数年かかってしまうかもしれません」

しかし、少なくとも1人の学者は、ゴーン氏の逮捕を受けて、湾岸地域を含めた世界中の実業家が疑念を抱くようになると考えている。

シティーに位置するロンドン大学キャスビジネススクールで組織行動に関して研究するアンドレ・スパイサー教授は、「ゴーン氏は、世界で最も有名なビジネスリーダーの1人です」と語る。「ゴーン氏が今後も世界でビジネスを代表する存在であり続けられるかどうか、そして日産、三菱、ルノーを国境を越えて結ぶアライアンスの統括を続けられるかどうか、疑問が出てくるでしょう」

スパイサー氏は、ゴーン氏の失脚は経営者の傲りの典型例だと言う。「日産の回復の立役者と言われて、ゴーン氏は経営者として半ば神格化されていたのです。ビジネス書にも特集され、経営陣のトレーニングにおいてもケーススタディーとして取り上げられてきました。さらに、日産、ルノー、三菱でどんどんと権力を強めました。こうしたことが合わさって、自身には超人的な力でもあるかのような感覚が強まったのでしょう。こうした状態になったリーダーは、自身は通常の規則を超越する存在であるかのように勘違いし始めるのです」

ゴーン氏が離れることで、アライアンス3社には存在が脅かされる事態が訪れる可能性もある。同氏が築き上げた複雑な協力関係は、各社にとって極めて重要な土台として機能してきたからだ。

「ゴーン氏はこのアライアンスをつなぎとめる唯一の存在でした」とスパイサー氏は付け加える。「彼が失脚したことで、各社間で昔から存在してきた多くの相違点が表面化し、アライアンスが崩壊する可能性があります。そうなれば、これまでの通例が通用しなくなるような変化の渦中にある自動車業界にて、各社の方向性に大きな影響が出てくることになります」

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