
カリネ・マレク
アブダビ:新しい研究によると、サウジアラビアは再生可能エネルギーの使用競争において、中東・北アフリカ(MENA)地域の先進国の1つになった。
太陽光発電展望報告書2020が、世界未来エネルギーサミットのソーラーフォーラムで発表された。これは、今年のアブダビ・サステナビリティ・ウィーク(1月11日-18日)の目玉となった。
この種の中では最大の地域組織、中東太陽光発電産業機構(MESIA)がまとめたこの報告書は、サウジアラビアとオマーンが再生可能エネルギー競争先進国として、UAEやモロッコ、エジプトの仲間に加わったとしている。
「サウジアラビアは、2030年までに再生可能エネルギー発電を60ギガワット(GW)にする大型目標を導入して3年目になります」と、同報告書は述べた。
MESIAのマルティン・マムルーク事務総長は、「太陽光発電への投資は、MENA加盟各国全体で明白なものとなっています」と語った。「サウジアラビアは再生可能エネルギーを60ギガワット近くにする目標を定めており、そのうちの40ギガワットは太陽光発電が占めます」と、彼女はアラブニュースに語った。
「これは、王国の多様化という目標やビジョン2030に沿うものです。業界がグリッドパリティに近づく一方、システムや生産管理、グリッドの効率性を高めるための新たな革新的技術が展開されていくのを目にするのは素晴らしいことです」。
これからの王国での太陽光発電プロジェクトには、メディナ、ラフ、クライヤト、アル・ファイサリア、ラービグなどの他、ジェッダ、マフド・アル・ダハブ、アル・ラス、サード、ワディ・アド・ダワシルや、ライラ、PIFなどが含まれる。
市場調査会社フロスト&サリバンが提供するデータによると、サウジアラビアのエネルギー需要は着実に上昇しており、過去10年間で消費量が60%増加しているという。2019年の電力需要は62.7GWに達し、2030年までに120GWまで上昇する見込みだ。
MENA地域の太陽光発電プロジェクトの価値は、50億ドルから75億ドルと見積もられている。2024年までには、この数値は150億ドルから200億ドルに達すると予測されている。
同国のビジョン2030のプログラムの下で、王国は石油収入への依存を減らし、エネルギーミックスを多様化し、再生可能エネルギーの潜在性を引き出すことを目指している。
[caption id="attachment_8056" align="alignnone" width="800"]再生可能エネルギープロジェクト開発事務局(PEPDO)がエネルギー省の中に設置された後、王国の国家再生可能エネルギープログラム(NREP)の目標が2018年に上方修正され、5年目標は27.3 GW、12年目標が58.7 GWに設定されることとなった。
サウジ政府は、2023年までに再生可能エネルギープロジェクトに最大で500億ドルを投資する計画だ。
「MESIAでは、MENA地域での太陽光発電開発が加速し、魅力的価格に到達し、同時に地域経済のカーボンフットプリントを抑制しているのを目にできて、興奮しています」と、マムルークは述べた。
「2019年から2023年の間のMENAでの再生可能エネルギーへの合計投資額は、714億ドルに達すると見込まれており、2100億ドルと評価されている電力業界への合計投資額の34%を占めることになります」。
サウジアラビアが導入した改革には、地元デベロッパーに重点を置くことや、ソーラーパネルの地元製造企業に対する規制緩和が含まれている。
現地調達の法令遵守を監督・監査するために、現地調達・政府購買庁が設立された。
これとは別に、ユーティリティや分散型電源業界の成長を支援するために、サウジ産業開発基金によって、再生可能エネルギー融資パッケージが発表された。
太陽光発電パネルがリヤドのモスクの屋根に設置されると、アブドラ国王石油調査研究センターは同様の取り組みを他のモスクにも推奨した。
一方で、サウジの農業にソーラーパネルを利用する計画は、技術への関心を急激に高めることとなり、複数の業界施設がそう遠くない将来に独自のユニットを持つことになると見込まれている。
加えて、電力・コージェネレーション規制公社によって、送電網内でのやりとりを認める規制の枠組みが研究されている。
水素などの柔軟な貯蔵ソリューションにより、間欠的な再生可能エネルギーはエネルギーシステムの中でより大きなシェアを占められるようになると、マムルークは語った。「これにより、今日の石油・ガス輸出企業が明日の再生可能エネルギーの重要な輸出業者になることが可能になるかもしれません。太陽光発電業界はサウジアラビアのエネルギーシステムのこの抜本的転換に参加できることに興奮を覚え、誇りに思っています」。
昨年、MENA地域の太陽光電力料金はこれまでにない水準に達した。これは、グリッドパリティの目標を到達可能にした大幅なコストの低下が主な要因だ。
世界中に設置されている太陽光発電設備の発電能力が617.9GWとなっている中、MENAの各国政府は、大規模プロジェクトの力を借りて、エネルギーの多様化に引き続き注力している。
UAEでは、ドバイがモハメド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム・ソーラー・パークに2030年までに5GWの発電施設を完成させることを目標にしている。アブダビは、同国で2番目に大きい太陽光発電プロジェクトに「取り組んで」おり、2025年までにさらなるユニットの展開を検討している。
モロッコは、2030年までに同国のエネルギーミックスの再生可能エネルギーの割合を52%に到達させることを目標にしている。チュニジアとエジプトの数値は2022年までに、それぞれ30%、20%となっている。
オマーンは、合計で1.5GWを発電できる太陽光発電所を2022年までに完成させることを見込んでいる。政治的問題が山積し、行政が機能不全に陥っているイラクも、将来のエネルギーミックスの計画策定において、太陽光発電を無視していない。
「再生可能エネルギーへの投資は、全てのアラブ諸国で数十億ドル規模に達しました」と、アラブ再生可能エネルギーコミッションのモハメド・アル・ターニ事務総長が語った。
「ヨルダンは、再生可能エネルギーにさらに多くの費用を投じており、請求金額を抑えるために、自分たちで発電することにより、再生可能エネルギーを利用して脱依存をさらに進めるよう促しています」。
しかしながら、EU-GCCクリーン・エネルギー・テクノロジー・ネットワークで働く技術専門家のムスタファ・タオウミによると、農村部や僻地でプロジェクトを実施するとなると、課題は残るという。
「送電網や人へのアクセスの問題に関しては、収入や教育が十分でないコミュニティがあるため、あらゆる準備を行い、新たな技術を受け入れる準備をしなければなりません」と彼は語った。
「また、関係者や業界の違いによる実施の課題もあります。新しい技術とその使い方(に関する情報)を提供する中では、社会的受容も重要です」。
「円滑化プロセスに資金提供をする時には、我々は革新的にならなければなりません。我々は公正かつ民主的でなければならないのです」と彼は語った。
今はこの地域にとって面白い時期だが、政府は現在でも発電費用に補助金を投入しているので、努力を重ねなければならないと、タオウミは語った。
「技術は素早く進歩しています。従って、意思決定もこれに遅れず行わなければなりません」と彼は語った。「2~3年以内に農村部や僻地にもスマートメーターを導入できるようになるかもしれません」。